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二十七話 羨ましかった

 月日が流れて少し大人に近付いた私とベルナデッタは、街に二人で出掛けることになった。


 これまではずっとどちらかの家で会うことしか出来なかったから、二人きりで出かけるのは初めてのことだ。


 所謂、初デートというやつである。


 私はというと……やはり、これ以上ないくらいに浮かれてしまっていた。



 ____両親からのプレッシャーも、姉からの嫌味も軽く受け流せるくらいには。


 というのも、最近姉の婚約者がようやく決まったのだが……両親や姉の様子を見る限り、中々上手くいっていないようなのだ。


 元々姉は努力することが嫌いらしく、教養もあまり有るとは言えないような女性である。


 それでいて、弟の私ですら驚くくらいわがままで自己中心的な性格をしていた。


 両親に言わせれば、「あの娘の良いところなんて容姿くらいだわ」とのことらしい。


 私からしてみれば、そんな姉の性格を矯正してこなかった両親にも問題があると思うのだが。


 まぁそんな姉なので、今まで何度も婚約者候補から逃げられており……。

 十七歳になった今、ようやく婚約者が決まったというわけだ。


 だが、それも姉の激しいわがままにより、早くも破談になりかけているらしい。


 侍女達の噂を盗み聞きした限りでは、デートで行った宝石店でものすごい高額なアクセサリーを強請ったうえ、断られてその場で大声で怒鳴ったとか、なんとか……。


 そういうわけで、最近の姉はとにかく機嫌が悪い。

 そして両親も、「お前だけが頼りだ」とやたらプレッシャーをかけてくるのである。



 だが、ベルナデッタとのデートが直前に迫った今、そんなことはどうでも良い。


 こうして馬車でメイウェザー子爵邸に向かっている途中も、楽しくて幸せで仕方がない。


 ビアンカからの手紙によると、最近のベルナデッタは益々美しさと優しさに磨きがかかっているという。


 この間も、夕食のデザートをベルナデッタがビアンカに譲ってくれたそうだ。

 私の家では考えられない光景である。


 本当に、何もかも私の家とは対照的だ。


 子供思いの穏やかで仲の良い両親に、優秀で可愛らしい妹、そしてそんな妹を僻まず可愛がっている、優しくて美しい姉。


 対して私の家は……勉強の出来る私には一見優しいが、夫婦仲は冷えきっている両親、わがままで手がつけられない姉。

 更には、そんな家庭環境で育ったが故に愛というものがよくわからない私。


 ……いや、環境のせいにしすぎるのはよくないな。

 きっとベルナデッタなら、私の家でも愛されるような娘に育っただろうから。


 本当に、ベルナデッタのような素晴らしい女性を姉に持てたビアンカが羨ましい。


 だが、ベルナデッタが本当に私の姉だったら結婚は出来なくなる訳だから……。

 そう考えると、今の立ち位置に感謝しなければならないな。




 ……そんなことを考えていると、あっという間に子爵邸の前まで到着した。


 この馬車を降りたら、いよいよ念願のデートが始まるのだ。


 ____そして当然この時の私は、この日ベルナデッタを深く傷つけてしまうことになるなんて、微塵も思っていなかったのだった。

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