二十五話 手紙の真相
私が書いた手紙は二通。
一通目は、もちろんベルナデッタへのもの。
そして二通目は、妹のビアンカ嬢に向けたものだ。
まずは、ベルナデッタへの手紙の内容を考えた。
____ベルナデッタに、聞きたいことが沢山ある。知りたいことが沢山ある。君のことが好きだから。
だが、私の語彙の中では、それを上手く表現する言葉が見つからなかった。
だからまずは、ビアンカ嬢に向けた手紙を書くことにした。
彼女に聞くことは、最初から決まっている。
私はペンを持って、彼女に聞きたかったことをサラサラと記載していく。
『ビアンカ嬢
先日はどうもありがとう。
今回君に手紙を送ったのは、君に聞きたいことがあったからだ。
単刀直入に言うと、私は君の姉のベルナデッタと結婚したいと思っている。
だが、彼女は自分に自信がないのか、自分の話をあまりしたがらない。
一方で、君のことは随分楽しそうに楽していた。きっと姉妹仲が良いんだろう?
だから、教えてくれないだろうか。
ベルナデッタの誕生日やベルナデッタの好きなもの、他にもベルナデッタとの会話を、私に報せて欲しいんだ。
そして、君には謝らないといけないことがある。
君の姉が私と結婚するということは、即ち私が君のそばからベルナデッタを奪うということだ。
だから、大好きな君の姉を将来嫁に貰うことを、どうか許してほしい。
幼い君に言うことではないかもしれないと迷ったが、どうしても伝えたかったんだ。
では、返事を待っている。まずは、ベルナデッタの誕生日から教えてほしい。
彼女にプレゼントを送りたいんだ。
そしてその際には、君にもプレゼントを送るよ。それが、君の大好きな姉を奪ってしまうことに対するせめてもの償いだ。
では、返事を待っている。
ユージン・キャントレル』
____こんなものか。
案外、長くなってしまったな。内容は全て、ベルナデッタに関することばかりだと言うのに……。
……では、肝心のベルナデッタには何と送るべきだろうか。
彼女に直接好きなものなんて聞いたら、怖がられてしまうかもしれないから……。
同年代の女性は一体、どんな手紙を貰ったら喜ぶのだろうか。
____ダメだ、何度考えてもわからない。
……そして結局私は、一時間筆を動かせないままだった。
そのうえで、なんとか絞り出した文章は、『また君のお菓子が食べたい』、それだけだった。
……本当に、私はベルナデッタのことを何も知らないのだな。
そんな自分が情けない。
でも、踏み込むのも怖い。私が知っている同世代の女性は、姉上しかいないから。
姉上は、私が踏み込んだ質問をすると極端に怒り出す。
優しいベルナデッタは怒ることはないだろうが、不快な気持ちにさせてしまうことはあるかもしれない。
こんなにも好きなのに、好きだからこそ何も言えないのが歯痒くて仕方がない。
____姉上との関係がもっと良ければ、こんな時に相談でもできたのだろうか。
……いや、無駄なことを考えるのはやめよう。
とりあえず、今はベルナデッタのことだけを考えるんだ。
そう考えた私は、書き終わった二通の手紙を使用人に託してから、父の書斎へ向かった。
コンコンコン、とノックを三回。
父が入室の許可を出してくれたので、ゆっくりと部屋に足を踏み入れる。
「失礼いたします」
「……おぉ、ユージンか。丁度良かった。お前に聞きたいことがあったんだ」
「わかっています。婚約者候補の話でしょう?」
私がそう言うと、父が目を見開いて「よくわかったな」と呟いた。
「私も、その話をしに来たところだったので」
「……そうか、じゃあ、決めたんだな」
「はい。……私は、メイウェザー子爵令嬢、ベルナデッタと婚約したいと考えています」
____こうして、私はベルナデッタを強引に『婚約者』という鎖で縛り付けたのだった。




