十六話 変わらないもの
あのデビュタント事件が起きてから、私とユージン様は以前より会わなくなった。
というよりは、私が何かと理由をつけてユージン様の誘いを断っていたのだ。
ユージン様のことは、変わらず誰よりも好きで、その想いは変わらない。
だからこそ、これ以上惨めな思いをしたくなくて、敢えて自分から離れたのだ。
ビアンカには、何度も「本当にそれでいいのですか……?」と心配されてしまったけれど……。
どうしても参加しなければならない舞踏会の時は……ユージン様のエスコートで入場して、一度だけダンスを踊った後は壁の花になっていた。
なのに、なぜか私が離れれば離れるほど、ユージン様から届く手紙の頻度は高くなっていった。
最初は数ヶ月に一度だった。
それがデビュタントから一年経った今では、一週間に一枚届くようになったのだ。
手紙の内容はいつも同じ。
『元気にしているか』
『また君のクッキーが食べたい』
____わからない、ユージン様の考えていることが……。
あなたはビアンカが好きなのでしょう?
なのに、なぜ私に構うの?
……いえ、そんなの簡単なことじゃない。
私達は幼い頃からの婚約者で、今更婚約破棄をしてビアンカに乗り換えるなんて、体裁が悪いものね。
それくらい、私もユージン様もビアンカも、大人になってしまったということなのだわ。
昔みたいに、もう無邪気にお茶会をすることはできない。
それくらい、私達は変わってしまった。
……けれど…………。
「……『君のクッキーが食べたい』、ね……」
変わらないものも、あるのかもしれない。
決して心で結ばれることはなくても、違う形で……パートナーとして結婚をすることなら、出来るのかもしれない。
そう思って、一年間ずっと断り続けていたお茶会を、十七歳になった私は初めて承諾したのだった。




