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十四話 私の宝物

 どうしてユージン様が、こんな夜更けに……?


 私は困惑しながらも、ユージン様のもとへ駆け寄った。


 すると、ユージン様は少し口篭ってから、小さく唇を動かした。


「……ベルナデッタ。どうしても、君に渡したいものがあって……無理を言って、子爵邸まで送ってもらったんだ」

「私に渡したいもの……ですか?」

「あぁ」


 さっぱり思い当たるものがなくて戸惑っていると、ユージン様は後ろ手に隠していた小箱を差し出してきた。


 ……この小箱は……


「今日贈っていただいたネックレスのケース……ですよね? でも、申し訳ございません! 私、あのネックレスを……」

「落としてしまったんだろう? 君の護衛が連絡をくれたから、知っている」

「でしたら、なぜ……」

「……いいから、開けてみてくれ」


 私は罪悪感で押し潰されそうになりながらも、何も入っていないはずの小箱を開けた。


 すると、そこにはお昼に見た時と全く同じ、美しい紫が輝くネックレスの姿があった。


「え……!? ど、どうして……!」

「君の護衛から連絡をもらってすぐ、このネックレスを探しに街へ戻ったんだ。少し時間がかかってしまったが……」


 私はハッとして、淡々とそう告げるユージン様の手を見た。

 その手は汚れていて、ところどころ小さい擦り傷もできている。


 手だけじゃない。服だって、膝の部分が土で汚れている。


 ____きっと、地面にしゃがんで探してくれたんだわ。


 ユージン様は私よりも高貴な、伯爵令息だというのに。


「……どうして、探してくださったのですか」


 ぽつり、と呟くように尋ねた。

 すると、ユージン様は真っ直ぐ私の目を見てこう言ったのだ。


「このネックレスは君によく似合っていたし……何より、私が君に、このネックレスを持っていて欲しかったんだ」

「…………ユージン様は、ずるいです」

「……す、すまない」

「謝らないでくださいませ!」


 気付けば、ぽろぽろと涙が溢れていた。


 ユージン様が珍しく焦っている。

 けれど、今はそんなのどうでも良くなるくらい嬉しくて嬉しくて、おかしくなりそうだった。


「じゃあ、私はそろそろ家に戻るとする。ベルナデッタ、良い夢を」

「はい、本当にありがとうございました、ユージン様」

「……あ、それとこのネックレスはビアンカに渡しておいてくれ」

「……はい、わかりました」


 そう言って、ユージン様は伯爵邸へ帰って行った。


 ____こんな時まで、やっぱりユージン様はビアンカのことを忘れないのね。


 でも、そんなこと今はいいわ。


 だって、ユージン様がこのネックレスを取り戻してきてくれた。

 私の恋心を、拾って私に来てくれたんだもの。


「……嫌いになんて、なれるわけないじゃない……! やっぱり好き、たとえユージン様が私を好きじゃなくても、私はユージン様のことが大好き……!!」


 私はその場で泣き崩れながら、ネックレスを大事に大事に抱いた。


 ____こうして、私の初デートは忘れられないものとなったのだった。



 そしてこの日から、ユージン様にもらったアメジストのネックレスは、私の一番の宝物になったのである。

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