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【書籍化】異世界転生スラム街からの成り上がり ~採取や猟をしてご飯食べてスローライフするんだ~(web版)  作者: 滝川 海老郎
第三部 エルダニアと領主館ホテル

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SS5/104.5 異世界お盆

 キュウリやナスをはじめとする夏野菜がラニエルダ小学校から届いていた。


「こうやって、こう、うん」


 牛のナス。馬のキュウリ。それぞれに木の枝で手足をつけ、豆で目をつける。

 これが前世、日本のお盆の定番飾り「精霊馬(しょうりょううま)」と「精霊牛(しょうりょううし)」。

 日本では手足は割りばしだったけど、ここに箸はない。


「なにこれ?」

「馬と牛だよ。牛はね、俺の地元では牛車といって馬車みたいに使うんだ」

「へぇ、エドの実家ってどこなの?」

「え、さぁ、そこまでは覚えていない」

「そっか、ちっちゃかったもんね」

「うん」


 ミーニャが目を真ん丸にして興味深げに馬と牛を見る。


 エルダニア領主館は一応なりとも領主館なのでラファリエ教の祭壇、神棚がある。

 大食堂はそのままホテルの食堂としてちょっと豪華すぎるけど使っている。

 シャンデリアなどの魔道ランプもそのまま使えるのには助かった。


 その大食堂からつながる通路の先が祭壇室で、ひっそりと神様、ご先祖様にお供えしてあるのだ。


 夕方。


「玄関いくよ」

「え、うん」


 玄関の外に出ると、脇に避ける。

 そして白いお皿の上に木の枝を置いて、ファイアの魔法で火をつける。


 俺もファイアの魔法は覚えた。

 ただし出力は低い。火種くらいには使える。


「ファイア」

「「「おぉぉお」」」


 ミーニャもラニアもシエルも、みんな俺がファイアくらいは使えるのを知っているのに、感心してくれる。

 いい子たちばかりだ。


「火もいいものですね」

「お、おう」

「みゃぅ、火は怖いみゃう」


 そうして木の枝、薪みたいな感じのものに火がついて、ぱちぱちと燃え出した。

 小さな炎が上がって、オレンジの光を放つ。


 そうかシエル。猫獣人ちゃんは火が怖いか。

 ラニアは火魔法が得意だからか、何か火に思い入れがあるらしく、真剣に揺れている炎を見つめている。


 基本的にエルダニア領主館では火は使われておらず、ランプはすべて魔道ランプ、料理は魔道コンロが担当している。

 お風呂は薪窯なんだけど、手間がかかるため閉鎖中。

 理由としては火はもちろん火事が怖いからだ。

 贅沢な暮らしをしていた元の領主はそういうところはしっかりしていたようで、一式揃っている。


 逆に火をつけるのが例外的で木の枝もアイテムボックスから失敬してくる必要があった。

 俺は野外でキャンプをする可能性があったので、火関連は一式そろえている。

 もちろん野外用携帯鍋とかもある。

 あぁ、でかいのもあるよ、そうトマトスープを煮るようなね。


 まあ異世界まで来て祖先の霊というのもなんだが、こちらの世界の祖先と、それから地球に残してきた家族、それからじいちゃん、ばあちゃんを思う日が一年に一日くらいあっても、バチは当たるまい。


「ラファリエール様に感謝して」


 みんなにこの世界風のお祈りを火を前にしてやった。


 パチパチッ。


 たまに火の粉が空へと飛んでいく。

 その小さな本当に小さな火の粒は、なんだかとても幻想的で美しい。


 野外照明がないこの世界では、夕方を過ぎたらすぐ暗くなる。

 そろそろ戻らないといけない。


「これはね、先祖様の霊を招く『迎え火』なんだよ」

「ふぅん」


 日本チックなことをやったからどうということはないが、なんとなくやってみたくなった。

 ただの真似ではあるけど、文化とはそうやって継承していくのだろう。


「すごくきれい」

「ああ」


 こういうことを言うのは決まってラニアだ。

 ミーニャとシエルは周りを飛び回りだした一匹の蛾に夢中だ。


「チョウチョと蛾って何が違うの?」

「え、まぁ色々と違うと思うよ」

「ふうん」


 蛾が右へ左へ、火に誘われて飛んでいく。

 それを追ってミーニャとシエルの視線が、右へ左へ。

 なんだか、おもちゃに誘われてしまう猫の習性みたいでかわいい。


 俺とラニアはそんな二人の無邪気な姿をほほえましく眺めている。


 木片はあらかた燃えてしまい、火も弱火になった。


「よし、いいかな。終わりにしよう」

「「「はーい」」」

「今日の夜ご飯はなにがいい?」

「カレーとパン! ナスカレーがいい!」

「おお、ナスカレーか。いいね」


 そういって日曜日の昼とは別に、今日は夏野菜ナスのカレーにしよう。

 急いで支度をしないとな。

 腹ペコ妖精ちゃんがお腹を空かせているから。

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