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24…クヨミ(2)違和感と洗脳と

朝の挨拶でもしているのだろうか、小鳥のさえずりが聞こえてくる。

ティアナの知っている皇城へは聞こえてくることのないものなので、この時代はまだ自然が近くにあり、人との距離も近かったようだ。


「なあ、今回はクヨミがこっちに来るってことか?」


カーテンを開けて朝日を部屋に入れながら、ロナルドがティアナのクロードへ振り返った。


眩しそうにするティアナに陰を作りながら、クロードは「だろうな」と返事をしていると、扉のノックされる音がした。


「皇帝、ラルフ公爵が来られました」


従者がそう言うと、クロード改めユスラが舌打ちをしながら足を組み、部屋へ通すように指示をした。


……? 何かユスラの態度がおかしいわ。


疑問に思ったのはティアナだけではなく、クロードとロナルドもいぶかしげに思っているのだが、その時はやはり突然やってくる。

考える隙も与えないと言っているかのように。

知りたいことや聞きたいことが、たくさんあるのに。



場面が変わり、ユスラの前に不機嫌が手に取るようにわかるクヨミが目の前に現れた。


「明るくて優しくてキレイなんて……何もかも気に入らない。消したい」


ユスラがルボロと話をしていると、不穏な言葉を吐き捨てるように話始める。


セリーヌとビアンキはそこにはいなかった。

ふとクロードに不安が押し寄せてくるが、お構い無しに時は進んでいく。


クヨミが言う人物がすぐにセリーヌのことだと気付いたユスラが眉間にしわを寄せたが、ルボロが静かに片手で制止しながら小さく息を吐き出しながらクヨミに向かった。


「不機嫌だな?」

「当たり前でしょ。あんなの作ってるに決まってるわ」


カチャ……

ユスラが鞘に手をかけた音がした。


「何を知ってる? あれが常だ」


セリーヌのこととなると黙っていられないユスラは、今にも魔力暴走でも起こすのかという状態になっている。


「さぁ、どうかしら? あなたの知らない部分もあるはずよ」


クヨミはあおるようにユスラへ応えると、すかさずルボロが割って入った。

いつもならクヨミが引き下がるはずのタイミングだが、今日は雰囲気がおかしいとルボロは警戒をし始めている。


「クヨミ、そう喧嘩を売るな」

「事実を教えてあげてるのに? 人間なんて相手にしなくて良いのよ。どうせすぐ死ぬでしょ」


鼻で笑いながら吐き捨てるクヨミに、ついに抜刀したユスラが斬りかかった。

愉快そうにクヨミもそれに応戦する……

ルボロの制止も届かず、2人は凄まじいスピードで相手をいかに斬るかということに夢中だ。



「おい!! やめろと言っている!!」



ルボロの大声が響いた。


その覇気にユスラもクヨミも一瞬我に返り、隙ができてしまった。

その瞬間を見逃さなかったルボロは、素速く2人の間に入り2人が持っていた武器を自分の短剣で軽く弾き飛ばし、鼻をフンッと鳴らした。


ユスラもクヨミも、美しく弧を描いて宙を舞う自分を武器を眺めていると、ルボロから思っきり重めのゲンコツをくらってしまった。



先ほどとは打って変わって静かなユスラとクヨミ、その2人を目の前に並べてルボロが腕組みして立っている。

それでもクヨミは苛つきを抑えられていない様子で、顔色も悪く手も震え、落ち着きが全くない。


「あいつと会ってきたのか……いや、どっちだ?」

「どっちでも良いでしょ!」

「洗脳されてるだろ」

「知らないわよ!」


ルボロが諦めたように大きなため息をついた後、大きな手でクヨミの頭を覆うようにしっかりつかみ、何かをつぶやき始めた。

どれくらい経っただろうか……


「ルボロ、ごめん」


しょんぼり謝ってくるクヨミを見て、ルボロはもう一度しっかりとため息をつき、疲れたと言わんばかりの顔になった。


「あいつは危険だ。毎度言わせるな」


クヨミは気まずそうに伏せ目がちに、しどろもどろ話始めた。


「でも……あの子が会いに行くから。心配で。付いて行かなきゃ、て思って」

「ああ、ディンか。まだあいつに執着してるのか」


今度はクヨミがため息をついて、諦めたように素直に口を開いた。


「あの子が諦めることはないわ……想いが強すぎる。だからこそ、今回は本当に執着も嫉妬もすごくて。心配なの」


クヨミの説明を聞き、ルボロは雑に自分の髪をクシャッとかいて、視線を自分の足もとに咲いている小さな白い花へと下ろした。

表情が少しほぐれ、何かを思い出すように目を閉じた。


「悠久の命など無いに越したことはないな」






セリーヌの部屋で、ロナルドが忙しく歩き回りながら頭を抱えたり、よく分からない1人ジェスチャーゲームのようなことをしたり独り言を言ったりしているところだ。

ティアナとクロードはソファに座ってはいるけれど、顔は苦悶に満ちている。


「神の中の2人が洗脳……? 神相手にも洗脳できるのか? そういうことだよな」

「洗脳だなんて……」


ティアナたちの時代ではどの国でも禁忌とされている。

しかし、ここは建国時代で、神たちの話だ。


「あり得るのかもしれない」

「……」


3人はそれぞれで思案し始めた。

考えること全てがただの予想であって、何1く、つ確証がないのだから、誰一人おいそれと話せないでいる。


情報は入ってはくるのに、結局は分からないことだらけでまとまらないのだ。

ボルザークやルボロに聞いてみるしかないが、彼らは何かしらのことを話せないようにされているため、答えられるかどうかは懐疑的だ。


静かな時間が流れていく……


こんな時、静寂を破るのは幼い頃からだいたいロナルドだ。


「でもさ、よく考えたら神のルボロすごいよな。ボルザークが動けるデブって評価してて信じてなかったけど、すごかったな! それに洗脳を解いてたぞ?! 最強だろ」


目をキラキラさせて話すロナルドを見て、ティアナとクロードはフッと緊張が緩んだ。

2人だと行き詰まっていたであろう場面も、ロナルドのおかげで前を向ける。


ロンが意図しているのか無自覚なのか分からないけど、その存在に私たちは助けられてるわね。



「今の豚の姿でも解呪できんのかな?」



戻ったら聞きたいことが増えていくばかり……




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