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2…はじめまして、から

7歳になったばかりの少年が目を大きくして体をこわばらせている。

自分の顔のとんでもなく至近距離に、謁見の時にしか会ったことのない自分より少し年上の王女の顔があるのだ。


「クロードは何でこんなにキレイな顔なの?」


クロードと呼ばれた少年はどう答えたら良いのか全く見当がつかず、口を一文字にしたまま目だけをキョロキョロさせている。

どうにか両親に助けてほしいところだが、2人は旧友の皇帝と皇妃と仲良く談笑中で全く気付いていない。

そんなのお構い無しのティアナは、先ほどから真剣にクロードの顔を観察中だ。

すると、2人の顔の間にクロードよりも少し大きな手が入ってきて壁を作った。


「姉さん。クロが可哀想だからやめてあげて」


ティアナを姉、クロードをクロと呼んだ少年は、ティアナをそっと引き離し2、3歩ほど後退させた。

ホッとした顔になったクロードを確認して、ティアナに向かい合うように立った。


「いつも言うけど、姉さんは距離感バグりすぎ」


そんなことないと不服そうにしょんぼりとしているティアナをあきれたようにしながら説教しているのは、ロナルド・ユスラ・トゥーラン、ティアナの弟でこの国の皇太子だ。


よく12歳の姉を10歳の弟がたしなめていて一体どちらが年上なのか分からない姉弟だが、皇城の従者たちからは微笑ましい光景として見守られている。


やっと皇帝と皇妃が現状に気付き、またかとため息をつきながら2人を呼んだ。


「だって! クロードの顔が見たことないくらい整ってるの」

「だから、クロがおびえてるって」

「おびえてなんて、な……」


ティアナが確かめようと振り返ると、硬直したクロードと目が合った。


「……おびえてるわ」

「さっきから俺そう言ってる」


しょんぼりしたティアナをほぼ同じくらいの身長のロナルドがよしよしと頭をなでるのを、キョトンとしながらクロードが目で追っている。


これがティアナとクロード、ロナルドの3人が初めて介した時の様子。




心地よい陽気の日。ティアナの部屋の窓から優しい風がそよそよと入ってきている。

さすが皇女と言わんばかりの広い部屋で、その一部分にスキップフロアのような場所があり、今はそこから子どもたちの声が聞こえてくる。

3人で穏やかにボードゲームをして遊んでいると、ティアナの膝の上にいたルイを急にロナルドが降ろしてしまった。


「何すんだよっ」

「姉さんを独り占めしすぎだから、もう降りろ」

「あああ?!」


時々こうして2人はバチバチやるのだ。

それに慣れっこのティアナは、笑いながら彼らのやり取りを眺めている。


「ロンはやっぱり私を大好きよね」

「そうだよ。いつも言ってるだろ、姉さんは世界一だからね」

「僕もだよ! 僕の方が1番だからね」


静かにしていたクロードが、ロナルドを押さえて前へ出ようとしている。


「可愛い! ロンもクロも可愛い!!」


ティアナはクロードとロナルドを両手にギュッと抱きしめた。

すると焦るようにルイが3人の頭に飛び乗ってくる。


そんなティアナ姫の方が可愛いです……という心の声が聞こえてきそうな侍女たちの様子をよそに、子どもたちはそのままソファに移動して本を読みながら遊んでいる。

もちろんティアナの両脇にクロードとロナルドが座っていて、膝にはルイがいる。


読んでいるのは超お硬い歴史の本だけれど、3人で談義しながら楽しく読むことが勉強にもなり考察もできるという、図らずも有意義な時間を過ごしているのだ。

これ程までに歴史に詳しくなった皇族と公爵家の人間は、未だかつていなかったのではないかと言われるくらい歴史に詳しくなった。


何だったら3人揃って歴史オタクという言葉が似合うかもしれない。

先日は3人でクイズを出して、答えられない問題は覚えるまで出題者が解説して良いという、彼ら以外にとっては地獄の特典付きという遊びを……皇帝を巻き込んでやってしまい、クロードの父であるビアンキ公爵が後で青ざめていたとかいなかったとか。



午後になり、3人は両親たちとティータイムを過ごすため、中庭へ向かっている。

ティアナがクロードとロナルドの間に立ち、3人で歩いて行った。


「あの子たち、ティアナとクロードは立場上一緒になることができないのが残念ねぇ。せっかく仲良くなれそうなのに」


皇妃が残念そうに楽しそうな3人の後ろ姿を見ている。

勢力のバランスが崩れてしまうため、トゥーラン皇国では皇家と公爵家との結婚は禁止されているのだ。


「ははっ、気が早いなぁ。まだ子どもだぞ」


そう笑い飛ばしながら答える皇帝の言葉を受けても、まだまだ不服そうな皇妃。

ビアンキ公爵夫妻は皇妃の思いも寄らない言葉に驚いて、子どもたちをただ見つめている。

ティアナはいつもと違う様子を感じたのか、向こうの方から不思議そうに母親へ視線を向けて、ニッコリと笑った。


「みんな幸せになって」


そんな母親である皇妃の言葉を知ってか知らずか……

いつか皇国を背負って立つ子どもたちは、庭園にある3人で乗るには十分の大きさのブランコに楽しそうに乗ろうとしていた。


そして、そこには膝の上に乗ろうと待っているルイがいる。





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