表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

第七話

「あ、葵くん」


 一瞬涼花先輩かと思ったが、期待虚しく白先輩だった。


 しかしちょうどいい。涼花先輩から事情を聞こうとしてうまくいく気がしないし、ここで昨日のことを尋ねよう。


「昨日の話、聞いてほしいんだ」


 俺から提案するまでもなく、白先輩が話を振る。俺は相槌を打つ。


「最初、わたしはまず涼花に、戻ってこないか尋ねた」


 白先輩は思い出すように宙を睨む。


「まあ、当然涼花は戻らないって答えた。次にわたしは、理由を聞いた」


 軽い瞬き。


「『わたしが戻っても、大喜くんは喜ばないし、葵くんには勝てない』。涼花は、そう言い切った。虚ろに空を見ながら」


 情景が容易に浮かぶ。


 目の前の白先輩には、視線も興味も送られていなかったことだろう。


「大喜くんも涼花に辞めてほしかったわけじゃないだろうし、葵くんだって涼花に勝ってるとは思ってないと思う、ってわたしは言ったけど……」


 溜息と共に、地面を睨む。


「そんなの白の想像じゃん、って」


 そこからの言葉は、なかった。


 きっと平行線の議論が続けられたのだろう。


 その話を聞いて真っ先に、涼花先輩は自分勝手だと思った。


 後から始めた者に抜かされる絶望と、自分が一人を潰してしまった絶望。


 涼花先輩はその両方を知っている。それは辛いことだとは思う。


 だが、俺の気持ちもわかっているはずなんだから、救ってくれよ。


「葵くん」


「——はい」


「涼花を、救って」


 やっぱり俺のせいなんだと、はっきりと理解する。


 だから、涼花先輩にとって正しいことかはわからないけれど——


 俺が、連れ戻すしかない。


「わかりました」


 どちらにせよ、話し合いが足りない。


 俺たちは、わからない。涼花先輩がどんな心情で部を去ったのか。歩み寄る案はなかったのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ