ピンク・ローズ・ナイト
報われない片想いは悲劇であり、どこまでも美しく儚い
報われた片想いは、その瞬間 平凡で つまらない色恋に変わる。
『はぁ…なんて悲しい物語だ…』
なんど読んでも、この”黒薔薇騎士団物語”は切なく、悲恋で、たまらない名作だ…。
今の自分と、重なる登場人物がいるからかもしれない
自分を男性と偽る、女騎士…
私は別に男と偽ってはいないが
偽る事で想い人に、想いを伝えられず…戦いの中で絆だけは深まっていく…
『はぁ~~~…』
少し酔ってしまったような溜め息を漏らす
物語に酔ったのか、自分に酔っているのか…
すぐに、自己嫌悪が襲ってくる。
『シガ!』
ひゃい!!!? 恥ずかしい声をあげて 私は座っていた木の枝から落っこちた
木の枝、といっても かなり太めだ
あいつ、このタイミングで声をかけて来やがってからに…
ぐぬぬと、私はそいつを睨む
『警護に変更があった、ちょっと来てくれ』
黒髪を靡かせた爽やか優男騎士がそこに立っている
私の幼馴染であり、戦友であり、上司であり、片想いの相手である…。
(きゃ~~~~、シャーガリアンティーリウス様よぉ! はぁ~~~スラっと長い脚、長身、ピンクローズのような美しい御髪…)
(綺麗~、羽のような白銀の鎧がピッタリ…)
(鋭い眼、苺のような唇、あの可憐さで王妃直属の上級近衛騎士だなんて…)
『ふふっ、相変わらず凄い人気だね 特に女性方の熱量が特に凄い』
側を通ったご婦人方から、黄色い声援を賜った。
涼やかに笑いおって…長身だのなんだの 人の気にしている事を…
聴こえるか聴こえないのかの声を、やや聞こえるように言いやがって
騎士としては長身が有利に働く要素もあるが
コイツとの身長差は広がる一方…
ヒール型の仕込みブーツを履いてるのもプラスして、もう目立って仕方がない
「毎日毎日、会議会議 パーティーパーティー その警備警護 うんざりだな…」
「姫様はきっと、もっとそうだよ… シガも話し相手になってあげてくれ」
「お前がいるだろ、許嫁殿…」
皮肉まじりに言う
僕には話しづらい事もあるかもしれない…
心配そうにこいつは答える、今の皮肉に混じった私の嫉妬には気付いてない
姫様が見えた、木々に囲まれた庭園の中に
まるで妖精のように、脆く儚げな その白き姫は私達を見て微笑み 手を振った
幼き時より知っている、白百合のように美しいプリンセス…
姫とあいつが、楽しそうに会話をしている
私は一歩も二歩も退いたところで話を聞いている。
2人はお似合いだ、団長とはいえ 生まれや騎士の身分をとやかく言う奴もいるが
武勲も実力も申し分ない
お姫様とそれを守るナイト
まるで御伽噺のようだ
何より、二人は愛しあっている…
さっさと、結婚してくれた方が 私の気持ちも踏ん切りがつくのに
「この近くで怪物の目撃報告が出た、行こう」
「ティリも気を付けて…」
私は姫に会釈し、その場をあとにした。




