部屋ごと貰おう
「イテロ!クイト!おはよう!!!」
耳がキーンとなるぐらい大きな声だ。
「あぁ...肉がぁあ。」
イテロは落ち込んでるようだ。
「おはよう。もうちょっと静かにしようよ。」
僕はうるさいルーに注意する。
「悪かったってぇ。ま、今日も楽しく頑張りましょーう!」
今日も、か。
僕達が最後に見た景色はこんな緑で溢れている場所では無かったはずだ。
それにこの墓。
もちろん墓なんぞで寝る趣味など無い。
ルーはもしかしたらあるかもしれないけど。
まぁ、そんなことは置いといて、まずやるべき事は状況整理だ。
「ルー、イテロ。まずは状況整理をしようじゃないか?」
「美味しかった肉がぁあ...」
「たしかに!.........で何をするの?」
僕は額に手を当てて上を見た。
「クイトぉお。後で肉買ってくれるか?頼むよ!うぐっ。ひっぐ。」
顔面びっしょりになるぐらい泣いているイテロ。
「イテロはさ、自分で創れるじゃん。それ食べれば良くね?」
「昔も言ったが、自分で創った肉は何の味もしない。自分には効果が無いんだ。」
「創造って言っても不便ね。」
「全くだ。」
本当に自由だなこの2人は。
人が考えてるのに...。
「2人とも!まずはここを出て街に行こうよ。街に行ったら美味しい肉とかあるかもしれないよ。」
「肉!!!」
昔から思っていたけどこいつ単純だな。
「分かったわ。じゃあまずはここを出ましょう。」
僕達は重い石を退かした。
石には字が刻んであった。
なんだか懐かしい気がする。
「ねえねえ、この石?さ、懐かしい気がするんだけど、どう?」
「そう言われてみればそうだな。安心感がある気がする。」
「じゃあ持って行きましょう!この場所ごと!」
「そうだね、そうしようか。頼んだよイテロ。」
「そう言うことなら任せておけ!」
イテロは袖を捲り、壁に触れた。
「《収納》」
部屋の空気、気温、湿度など細かいものが消えていく。
次の瞬間、部屋が歪み始め空間が切り取られた。
残ったのはただの石の壁と石の床。
「それじゃあ行こうか。」
僕達は扉を押し、眩しい光が差し込んでくるのを見た。