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10話 半妖の猫山さん

 次の日は講義が無かったので、僕はコタツでダラダラと勉強をしたりゲームをしたりしていた。


 火木子ちゃんはというと、いつものようにコタツから半身を出して、目を閉じて何かのアニメを見ているようだった。

 と思ったら、丸っこい青い瞳がパチッと開いた。


「あー面白かった」


「何見てたの?」


「カウボーイビバップ見てました」


「あのオープニングがかっこいいやつ?」


「そうです。ちょっと古いけど面白いですよ……あ、メールだ」


「メール?」


「オバケは頭の中でメールが出来るんです」


「すごいけど……こわい……」


「頭の中で絵を描いたりもできますよ。私はそれでお金稼いでるんです」


「オバケにお金があるの!?」


「はい。電子通貨みたいな感じのが頭の中にあるんです。何もしなくても勝手に増えて行って、一杯溜まっていると勝手に減って行くんです」


「こわいけど……何もしなくても勝手にお金が増えるのはいいね」


「でしょお?」


「それで、メールは何だったの?」


「そうそう。それなんですよ。この前買っておいた奴を親戚の猫江ちゃんが持って来てくれるみたいで……」


「猫江ちゃんって……もしかして……オバケ?!」


「はい」


「こわいよ!」


「私だってオバケでしょ?」


「そりゃ火木子ちゃんはずっと一緒だからもうそんなにこわくないけど……火木子ちゃん以外のオバケは余りにもこわすぎるよ……」


「大丈夫ですよ。猫耳なだけでそれ以外は普通の女の子ですし」


「ううううぅ」


「それに半妖だから、半分は人間ですよ」


「半妖!?」


「はい。お父さんが人間らしいです」


 そっかあ……やっぱりオバケと人間がエッチな事をする事もあるのかあ。


「今エッチな事考えましたよね?」


「か、考えてないよ」


 その時、チャイムが鳴った。


「噂をすれば何とやらですね。出てください」


「ごめん……こわいから火木子ちゃんが出て……」


「仕方ないですねぇ」


 火木子ちゃんは電源コードを抜き取ると、玄関までコタツを引っ張って行った。

 そして、鍵を開けるとコタツに速攻で戻った。


「どうぞー」


「はーい。おじゃまいどありーッス!!」


「お久しぶりでーす!」


 元気に上がり込んで来たのは、赤いエプロンの小柄な女の子だった。

 猫耳と細い目がオバケっぽくて怖い……

 それにしても……なんか見覚えがあるような。


 僕もちょっとだけ会釈して、火木子ちゃんと一緒にコタツを元に戻す。


「あれ……もしかして同じゼミの龍造寺さんスか!?」


「あっ……! 猫山さん!?」


「猫山猫江ッス!」


「あらためて……よろしくね……」


 猫耳はコスプレだと思っていたけど……まさか本物だったとは……


「ウチの事こわいスか?」


「う……うん……」


「アハハハハハ!」


「ごめん……」


「その割にウチのおっぱいガン見してくるんスねぇ」


「み……見てないよ!」


 本当に見てないのに!


「ちょっとチカくん……!」


「見てないって!」


「アハハハ! 冗談ッスよお」


 悔しいけど、言われたらつい気になって猫江さんのおっぱいを見てしまった。

 小柄な割に……結構大きいなあ。


「はい。頼まれてた品ッスよ」


 何だろう。何かが入っている封筒みたいだ。


「ありがとう。折角だしゆっくりしていってくださいよ」


「はーい。じゃあ遠慮なく……」


 猫江さんはコタツに入り込んでしまった。

 茶色い猫耳は可愛いけど……オバケっぽくてやっぱりこわい……

 よく見たら白くてフサフサの尻尾もある。


「ああ、尻尾気になります? やっぱりチカさんは見えるんスねえ」


「普通は見えないの?」


「普通見えませんって。ウチ、普段は人間として生活してるけど殆どバレないッス。……家近さんは見えやすい体質なのかもッスねぇ」


「ひっ……!!」


「もう! チカくんは怖がりなんだから止めてあげてよ!」


「サーセンしたー!」


 火木子ちゃんが背中をそっと撫で続けてくれたので、僕の震えは何とか収まった。


「もうやめてよぉ……こわいこというの……」


「悪かったッス。お詫びにおっぱい揉んでいいッスよ」


「おっぱい……!?」


「ちょっと猫江ちゃん!」


「いいでしょ別に。減るもんじゃないし」


 たしかに……減るもんじゃないよなあ。

 揉んでいいなら……揉みたいなあ……


「猫江ちゃん……まだアレやってるんですか?」


「フリーおっぱいならほぼ毎日してるッスよ。モテなさそうな男がいたらついやっちゃうんスよねえ……」


「止めなさい……はしたないですよ」


「だって……モテ無さそうな男が……すごく嬉しそうにウチのおっぱいに顔うずめて……モミモミして……幸せそうにしてるのが可愛くてたまらないんスよぉ……一生他の女の子とエッチな事できなくて……ウチのおっぱいの事忘れられなくなるんだなって……一生オカズにし続けるんだなって思ったら……ゾクゾク来ちゃって……」


 ううううぅ……僕は猫江さんの事を誤解していたかもしれない……なんて心の優しい女の子なんだ……


「はしたないです! そういうエッチな事は好きな人としかやったらダメなんですよ!」


「おっぱい以外触ってきたらツメで攻撃するから大丈夫ッス」


「そういう問題じゃないの!」


「あーはいはい。以後気を付けるッス。それで、家近さんはウチのおっぱい揉むんスか?」


「えっ……えっと……」


 どうしよう……


「僕は……えっと……やめとくよ……」


 何か火木子ちゃんの目線を感じてこわいし……


「どうしてッスかあ? ――あっ……つまり……お二人はそういう……あ……そっかあ! お邪魔しましたッス!」


 猫江さんはドタバタと帰って行ってしまった。


 後にはいつも通り、僕と火木子ちゃんだけがコタツに残された。

 火木子ちゃんの顔はちょっと赤くなっているし、多分僕の顔も赤くなってしまっている。

 ……何だか気まずいし話を逸らそう。


「えっと……火木子ちゃんは何を買ったの?」


「ああ、お札を買ったんです」


「なにそれ……怖いやつ?」


「怖くないですよ。これを背中に貼ってたら、しばらくコタツを離れても人間にならなくて済むんです」


 なんだそのお札……ちょっとこわいなあ……。


「何でそんなの買ったの?」


「久しぶりに散歩したくなっちゃって」


「なるほど」


「あの……もし良かったら……」


「なに?」


「私と一緒に……河川敷とかいきませんか?」


「う……うん……」


 これって……デートのお誘いという事だろうか。

 そういうアレかは分からないけど……楽しみだなあ。


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