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あ、やば。つい叫んじゃった。
「ぷっ、ははははっ! いやきみ、そんな大声も出せるのか」
一瞬私の声に気圧されたクロウさんは一拍置いて快活に笑い出した。目尻には涙がきらめいている。
「そっ…そんなに笑わなくてもいいじゃないですかっ。」
「申し訳ない、っふふ、…ああ、いいな」
「うん?」
笑い声が収束したかと思えば、険しかった顔が花開くように一気に柔らかな表情へと変わる。
「正直、あまりにも突拍子がなさすぎて信用してなかったんだ。だが、きみの人柄を以って信用しよう。」
信用されてなかった! まあ仕方ないか、私もクロウさんの話あんまり実感わかないし。
「改めて。私はギルバート・モンティ。第3騎士団団長と遊撃隊総括の職を預かる者だ。」
「えっ偽名だったんですか!?」
「偽名、というよりコードネームだな。この服装に“クロウ”と聞けば、同郷はもとより近隣諸国の者は俺を思い浮かべる。それがなくきょとんとしている様子だったし、おかしいとは思っていたんだが。」
「な、なるほど」
挙動不審、と言われる理由もこういうのが積もっていたのかな。
「…私は本名ですからね」
「悪かったって。さて、今日はもう夜も遅い。明日侍女を君に寄越すから、これから生活の準備を整えてくれ。」
「は、はい。」
警戒するのはもう辞めたんだろうか。すごく機嫌が良さそうだ。
尋問の時のチクチクと刺すような視線は嫌だけど、あからさまに迎合の態度もなんか怖いな…。
「あ、そうだ私、どこで寝たらいいですか?」
ここで生活するってことは、大部屋なり何なりどこかスペースを貰えるってことだよね?
…もらえるよね?
「うん? ここがあるだろう?」
「え、?」
そう言ってギルバートさんはさも当然のように制服を脱いで寝間着に着替え始める。
慌てて後ろを向いた。
ここ? …ここ!?
「や、いやいやいや、異性の人と一緒はちょっと…!!!」
叫ばなかった私を誰か褒めて!!
「ああ。…確かに君を信用するとは言ったが、盲目的に信頼するわけじゃない。君が嘘をついたり、隠し事をしていると分かれば厳しい対処をしなければならないし、そういうきっかけを作らせるわけには行かない。しばらくはここで過ごして身の潔白を証明してくれ。」
なんと…。
わたし、これでもお年頃の娘なんですが…。
なんとか回避しようと頭を巡らせるものの、はくはくと口が動くばかりでうまく言い訳が出てこない。
そうこうしているうちに部屋の明かりが落とされ、再びギルバートさんに後ろから抱き込まれてしまう。
どこかにスイッチがあるわけじゃない。明かりも魔法で駆動してるのか、なんて思って…。
じゃないじゃない!!




