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曰く、この世界には神代からの魔法が息づいており、人々はその恩恵に与って生きているらしい。
「さて、何から話したらいいものか…。常識というのだから世界を形作る歴史や文化からか?」
「そうですね。お願いします。」
神話によると、善きも悪しきも八百万の神がおり、神代にはどちらが覇権を握るか大戦争を繰り返した。
舞台は地上、駒は人間を使い、それは長いこと続いた。しかし、天は荒れ、土地は痩せて世界は収束に向かっていった。このままではならぬと1柱の神が立ち上がり、その身を以て戦争を集結させた。他の神々はその代償として、以降生を受けたすべての人間に加護を与えることになった。それ故力の大小はあれど、すべての人間が魔法を使える。
この魔法の力によってこの世界は回っており、それはこの国も例外ではない。
この国は資源が潤沢で、農耕と交易によって支えられた豪奢な文化が根付いている。王都では最先端の流行や豊富な食物が溢れ、人々は幸せな生活を送っているという。
しかしその好条件から周囲の国々とは争いが度々起こった歴史があり、王の勅令によって国境には遊撃騎士が常駐している。この“黒き森”もそれに当てはまり、定期巡回が行われている。
クロウさんはその巡回で私を見つけ、保護してくれたという経緯だったらしい。
「――まあ、こんなところか」
話に圧倒され、口をぽかんと開けたまま呆けてしまった。
神話が息づく世界、か…。
神話なんておとぎ話くらいの現代日本から来た私としては、にわかには信じがたい話だけど、真剣に話すクロウさんの様子からして本当のことなのだろう。
神話自体は八百万の神ってところが日本神話っぽいかも?
「なるほど。…王都というからには身分制なんですね?」
「それ以外にあるのか?」
「私の国は民主主義国家です。」
「みんしゅ…?」
次は私の番、と言う事で、海に囲まれてるとか、電気や科学の話とか、国制の話をわかる分だけ話した。
クロウさんは交通インフラや政治に興味を持ったらしく、そのあたりは熱心に聞いていた。
「魔法のない国とは…、にわかには信じがたいな。しかしそれでも我が国ほど、いやそれ以上に栄えているのが何より驚きだ。君はすごい国から来たのだな。」
顎に手を当てて驚きに満ちた瞳と共に、クロウさんはなにか考えを巡らせているようだった。




