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もう会話のペースは握らせないとばかりに、ぴしゃりと押さえられてしまった。
「で、目的もなく森をふらふらしていたと言うことでいいんだな?」
「そもそもなぜここにいるのか、ここがどこだかも分かりません」
「…記憶喪失とでも言いたいのか?」
今度はクロウさんが私に冷たい視線を向ける番だった。
しかし、確かにここでの記憶は無いんだけど、それ以前の記憶はある。だから記憶喪失というよりは、突然知らないところに放り出されたような…。
「記憶喪失というより、…瞬間移動?」
「瞬間移動? 転移魔法か?」
「魔法があるんですか?」
疑問符ばかりの埒のあかない話にどちらも疲弊の色が浮かんでいる。
なんというか、あまりにもお互いの常識が合わなさすぎて会話がふわふわしているのだ。平時に友達と話す分にはこんな雰囲気でも楽しいんだけど、間違っても今はそんな状況ではない。
「あの、もしよければ、お互いの常識を擦り合わせませんか?」
状況にいたたまれなくなった私は、ついにそう提案したのだった。




