1-3
「出身は? なんの目的でここに立ち入った?」
私の警戒心に気づいているのか、クロウさんも雰囲気が厳しく、威圧的になっていく。
「…日本です。目が醒めたらここにいたので、目的というのは特にありません。」
「ニホン? 聞いたことのない地名だ。それに、言い訳をするならもっとまともなものがあっただろう」
その言い方はこれっぽっちも信用されていない事を示していた。
でも仕方ないじゃない、ほんとに知らないんだし。帰り道の途中で…、途中で、何をしていたんだろう。記憶が無くて、目を開けたらさっきの状況だったのだ。
「むしろここがどこだか教えてほしいくらいです。」
「……ここは黒き森の北西の古城だ。」
“黒き森”…? 何だその慣用句みたいな呼び方は。本当にそういう名前なの?
「本当に知らないのか?」
“黒き森”と聞いて隠そうともせず首をひねる私に、クロウさんも眉間にシワを寄せて訝しんでいる。
「本当に知りません。何してたんですか? わたし。」
「こっちが聞きたいんだが。」
そうじゃなくて。
森で保護したってことなんだよね? なら発見したときにどこで倒れてたとかそういうのあるでしょ。そういうのが知りたいのよ。
「見つけてくださったときの状況とか、そういうのです。」
「ふらふらと湖周辺を歩いていた。こちらが声をかけても反応はなく、拘束しようと腕を掴んだら崩れ落ちたため、うちで保護した。」
それで目が醒めたらここにいたと。なら牢屋とかで繋がれていないのは温情とかってこと?
じゃあどうして私の胸を触って…。
導いた結論に思わず顔を歪ませ、クロウさんを凝視してしまった。
「なんだその顔は」
「だって、私が女子だから、牢屋とかじゃなく“ここ”なんですよね?」
そして、そういう欲求を解消するために私を使おうとしてる、ってことでしょう?
「断じて違う」
「ならどうして」
「…先程からお前の質問ばかりだな。尋問してるのはこちらなんだが」
やっぱりこれ尋問だったのね。どんどん眉間のシワは深く、顔は険しくなっていってる。
でも、どれだけ怖かろうと私も引くわけには行かない。もしそういう目的ならなんとしてでも逃げなきゃいけないし、生き延びるなら情報は少しでも集めておかないと。
「お前を保護したのは、こちらを害するにはあまりにも前後不覚であり、武器のたぐいも所持していなかったからだ。無抵抗の女性を捕縛せねばならぬほど、うちの騎士団は弱くない。」
「騎士?」
「次はこちらの質問に答えてもらう」




