23/31
1節
熱い、あつい。
外から聞こえるのは、怒号。悲哀。絶叫。
男の喚き
女の怨嗟
子供の悲鳴
暗がりの中、感じるのは、音と、熱さのみ。
「げほっ、ごほっ」
息が、くるしい。
そうか、わたし、もう。
ここで、死ぬのか。
『だれか! いるのか!』
その声は、真上から聞こえた。
まるで、私がここにいるのを、知っているかのように。
その声に導かれるように、必死に音をたてる。
床を殴り、どうか、耳に届きますようにと。
『もう大丈夫だからな! 必ず助ける!』
月も照らさぬ暗闇のはずの夜は、家屋の焼かれる火によって煌煌と明らんでいる。
精神の侵された男の、異常な喚き。
子を奪われた、女の怨嗟。
ニ度と戻らぬ傷を負った、子供の悲鳴。
ここは、かつて私が生きた、村。
その終わり。
これは、私の、夢。
私だけの、物語。




