3節
そうしていくつもの部屋の掃除を終えると、太陽もほぼ真上へときている時間になっていた。
腹の虫も容赦なく己の存在を主張し始める。
そしてそれは今もまさに…。
ぎゅるるるる…
「主張激しいわね…」
「すみません…。」
最初の頃はは聞こえないふりをしてくれたアレッタ先輩も、何度も聞いてしまえば流石に無視できなくなったらしい。
まあアレッタ先輩も鳴ってたけどね! 私と違ってとっても可愛らしい音だったのは美人さん特権だろうか…っ!
「お昼抜いたし、仕方ないわ。この部屋が終わったら昼食を取りに行きましょう」
「はいぃ…っ!」
部屋の掃除を終え、倒れると大変な水の始末をして、私達は食堂へ向かう。
近くまで来ると、ギルバートさんより装飾の少ない制服を着た男性や、私と同じエプロンドレスを纏う女性ともすれ違った。食堂として開放されている吹き抜けの大部屋にも同じような人が集まっている。
しかし、すれ違う人はみな私達に好奇の目を向けるばかりで、挨拶をしてもまともに返ってくることはなかった。
「キョロキョロしないで。みっともないわ」
「はい…」
先輩は私には目もくれず、言い捨てるように釘を差されてしまったが、こういう目に慣れていない私はどうも気になってしまう。
「……、誰かしら、」
「ずいぶん……」
「……の子、……」
「……かわいそう。……」
ヒソヒソと聞こえてくる陰口は、部分的にしか聞こえないけど、表情から良いものとは思えない。
「あれが気になるなら、私には近づかないほうがいいわ」
「え?」
配膳に並ぶ列で順番を待ちながら、先輩はそう言った。その声色に感情の欠片は感じない。
私達が並んでいるこの短い列も、私達の後ろには妙な間隙があり、前の人も、心なし詰めているように見える。
「私は卑しい生まれだから、本来はここにいられるような人間ではないの。それなのにここにいて、ギルバート様に目をかけて頂いているから疎まれているのよ」
「そんな」
『この国は身分制』
ギルバートさんにこの世界、この国について教えてもらったときに知った常識だ。
にわかには信じられなくて、実感が無かったけど…。
本当に、あることなんだ。
この国に根付く問題がいきなり首をもたげてきたことに驚いてしまう。
でも、だけど…。
「そんなの、もったいないですね」




