第一話 異世界召喚
宇多田紘一。将来は宇宙物理学者を夢見る高校2年生。趣味はゲーム。イケメンではないが美人な彼女を持っている。
小坂霞。学年でも美人の部類に入る高校2年生。趣味はゲーム。紘一の彼女。明るい性格。剣道部に所属している。
〜〜〜〜〜ある日の朝
ザワザワ
今日は高校2年生の修学旅行当日。新幹線乗り場のホームは混み合い、点呼をとって整列している。
「楽しみだねっ、紘一」
「そうだね。けど…兵庫に寄るんだったら放射能研究センターにも行って欲しかったなぁ」
「そんなの需要ないじゃない」
「それもそうですね」
列の中でも一際目立つのが、このカップル。起源は入学当初に遡り、約1年半の間良好な関係が続いている。
「そういえば、修学旅行来れたんだね。てっきり休むのかと思ったわよ」
「広義には霞との旅行です。ブッパするわけないでしょう。それに学校も休みみたいなものですし、サボれる時にはサボらなければ」
「貴方ってそういうところあるわよね。いつになったらその捻くれた性格が治るのかしら?」
「治りませんよ。そういうのも含めて好きって言われたのは忘れてないですからね」
「・・・もう」
このように、かのカップルはいつでもどこでもイチャコラしている。学校生活においてやる気が圧倒的に感じられない紘一と、学校でもトップクラスに人気のある霞が交際しているというのは、教員からしてみても驚くべき事であった。
これの成立は、入学当初に一目惚れだという。入学式で生徒代表挨拶を務めた小坂霞を目撃した宇多田紘一は、解散後霞との接触を図る。
接触した際に霞も紘一に一目惚れして、お互いに出会って5秒で交際が始まったのだった。
累計デート回数は25回。腕を組んで歩いたのが最高到達点。
普段通りイチャコラしている時、不意に謎の現象が2人を包み込んだ。
「おい紘一!一体どうなってんだ!」
「高橋くん?そんなに慌ててどうしたんですか?」
「あ、足元見てみろ!」
「え??!」
「きゃあ!」
見ると、紘一と霞の足元に魔法円が広がっていた。魔法円には古代ルーン文字やギリシャ文字のような記号と、五芒星などの幾何学的模様が発光していた。
「・・・これはっ!喚起の魔術体系?!どこに召喚されるんだ!」
「紘一はなんでそんなのわかるのーー
霞のツッコミの途中で突如光が爆ぜて、光が収まった後には紘一と霞は消えていた。
これが異世界召喚の一端である。
〜〜〜〜〜
「ルーン文字が確認できましたし北欧の魔術教団でしょうか?きっとスカンディナビアの何処かですよ」
「だから何で紘一はそんな事がわかるのよ…」
2人とも意識があるが、魔法円の光の影響で目が開けられずにいた。先ほどの発光現象で視界が潰れてしまったのだ。
「あ、もしかしたらナチスの可能性もありますよ。アーネンエルベはいろんなオカルトを研究していたそうですし」
「ナチ党の生き残りに召喚されるとかどんな悪夢よ。私たちドイツ語喋れないじゃない」
「ハハッ、それもそうですね」
「おしゃべりは済んだか?」
互いを目視出来なくても軽口を言い合って、和やかな空気が流れていた中、その雰囲気を壊すかのように男の声が聞こえた。
2人はゆっくりと目を開き、声の主を振り返る。
そこにいたのは、帯剣をして華奢な服装をした金髪の男だった。そして、その男の後ろには黒いローブで全身を隠した人が何人も立っていた。
周辺は白い壁で覆われた天井の高い空間だった。ルネッサンス期に建てられた大聖堂のような造りをしている。壁面上部にはミケランジェロの彫ったかのような精細な壁絵が多く見られた。
さらに、空間の奥には煌びやかな服を着た若い男がいた。
「失礼ですが、ここはどこでしょうか?歴史的建築物の中である事は理解できますが、所在地名だけでもお願いできないでしょうか?」
紘一は目の前にいる男に向かって問いかける。
「ここは、サンスクリット王国の王都グプタにある王城だ」
「ブッフォ!!」
「えっ、どうしたの!」
「アーリア語、インド北部、グプタ朝、チャンドラグプタ」ボソッ
「・・・あー」
男の回答に紘一は吹き出した。突然の行動に驚いた霞だったが、紘一のヒントに納得した。
サンスクリットとは、古代インド・アーリア語に属する言語である。そして、サンスクリットを公用語としていたグプタという王朝が過去に存在していたのである。
「何だ貴様?」
「すいません。くしゃみです」
「・・・まあいい。それより、国王陛下から御達しだ。まずはどちらが本物の勇者か確かめる必要が有る」
男はそう言うと、値踏みするかの様な目で2人を見比べた。
「2人ともステータスと唱えろ」
「いかにもテンプレだなぁ。サンスクリット以外、独特のものがないですよ」
「そういう事は言わないの。異世界転移されただけ御の字じゃないの。ほら、怒られないうちに唱えるわよ。せーのーー」
「「ステータス」」
ステータスと唱えるわと、いかにもゲーム風の、異世界テンプレのホログラムのような映像板が現れた。
<宇多田紘一>
LV1
HP15/15 MP0/0
職業:学者
スキル:学問LV8 語学LV5 ストレージLV0 反物質LV0
<小坂霞>
へLV15
HP375/375 MP300/300
職業:勇者
スキル:学問LV5 語学LV3 アイテムボックスLV10 剣術LV5
「見てくださいよこれ!職業学者ですって!やったぞ!僕は異世界で学者になれたんだ!」
「よかったわね!あ、見て、私勇者だって!でも最近の異世界物語って勇者が不遇職扱いされてないかしら?ちょっと不安だわ」
「それはちょっと心配ですね。でも、そこまでステータスがチートじみてたら大丈夫でしょう。ていうかレベル15ってなんですか?何人殺したんですか?!」
「人殺しなんてしてないわよ!でもまあちょっと不思議ではあるわね。でも、それよりMP0って大変ね」
「そうなんですよ。0とか絶対魔法使えないでしょうね。異世界で知識チートで魔法を使ってみたかったんですけど…。なんか反物質っていうものが目につきますね」
「ああ、それは不思議ね。レベル0だし、なんか意味ありげだもの」
「これでもし、反物質が自由に扱えるのなら新世界の神にもなれるんですけどね」
「それもそうね。貴方に魔王討伐を任せようかしら」
ステータスを見ながら2人はそれぞれの意見を言い合っていた。
「どちらが職業が勇者になっている?」
「はい。私です」
金髪男の問いに霞が手を挙げて答えた。
「お前の方はどうだ?」
「僕は学者ですね」
一応の確認といった形で紘一にも問いかける金髪男。そして納得したかの様にうなづいた。
「ステータスのレベルとスキルを教えろ」
「僕はレベル1で、スキルは学問8と語学5ですね」
「私はレベル15で、学問5語学3アイテムボックス10剣術5よ」
「素晴らしい!やはり勇者様は優秀であったか!」
紘一はレベル0のスキルは伏せて言った。
突如として態度を変えた金髪男。
「勇者様は召喚された時点で剣術がレベル5であるとは、向こうでは、さぞ鍛錬を積んでいたのでしょう」
「レベル5ってそんなにすごいの?」
「スキルのレベルはそれぞれ10までで、レベル5までいくと達人級の技術を持つことの証左なのです。学問もレベル5と、高い教養を持っているのでしょうね」
「僕は学問レベル8ですよ」
「貴様には聞いていない!」
「えっ…」
明らかに霞と紘一で態度が天地の差がある金髪男。紘一のステータスにはめもくれず、勇者である霞を褒め称えている。
「やはり勇者様は、国王陛下の婚約者に相応しい!」
ここで金髪男が爆弾発言を投下する。
「ま、待ってください!私は紘一と付き合っているんです!そんなの嫌ですよ!」
「そうですよ!いくらなんでも横暴ではないですか!」
2人が爆弾発言に対して反抗するが、金髪男は一切気にしていなかった。
「勇者様にはこれから1人で魔王討伐に向かってもらう。だから少しでも心残りを減らせる様に、国王は結婚という機会を与えてくださったのだぞ」
どうやら勇者である霞は1人で魔王討伐をしなければならないそうだ。
そして、女性の夢でもある結婚をさせてあげようという好意の様に見せかけて、国王の宣伝材料にしたいという意図が見え隠れしていた。
「国王の好意を無下にするという事は、つまり、そういう事だぞ」
金髪男が脅しをかけてきた。国王の好意を無下にすると最悪首が飛ぶことを遠回しに言っていた。
「ここは従うのが賢明です。例え霞が勇者といえども、替がきかない可能性があるとは限りません」
「でも、紘一とじゃないなんて嫌だよ!」
「いい加減邪魔だな。お前ら、この男を城から追い出せ!」
「「「はっ!」」」
金髪男の命令で、黒いローブの男たちが紘一を囲い、拘束した。
「いやあ!紘一を離してよ!」
「霞!僕は絶対に諦めないから!絶対に迎えに行くから待っていてください!」
「・・・わかった。待ってるからね!紘一!」
紘一は拘束された状態で、王城の外へと連れ出された。こうして、2人は引き裂かれたのだった。
〜〜〜〜〜城外
「ここまでくれば大丈夫だろう。もう2度と来るなよ。そうしたらお前の首が飛ぶからな」
「・・・わかりました」
黒いローブの男たちに拘束されて城外へと出た紘一は門の外で拘束を外されると、ローブの男から忠告を受けた。
「ほら、宿代だ。俺たちにはどうする事もできないが、せめてもの償いだ。10泊分はある。冒険者になって成り上がれば、いづれは彼女さんを取り戻せるかもしれない」
「あ、ありがとうございます」
なんと、黒いローブの男たちは紘一に同情し、僅かながらの路銀を与えてくれたのだった。
「それと、ここだけの話、国王陛下は城の侍女長に恋慕なさっている。寝取られる心配はそうそう無いから安心しろ」
「は、はい。ありがとうございます」
「じゃあ、達者でな」
そう言うとローブの男たちは城に戻っていった。
「よし。霞の事は一安心。落ち着いて行動しよう。まずは宿屋をとって、冒険者になりに行こう」
ローブ男たちに背中を押されて、紘一は彼女を取り戻す決心をした。
紘一は、ひとまず城から離れた宿を探すために、道端の人に聞くことにした。
「すいません。この辺りに宿屋はありませんか?」
「宿屋を探してるんですか?なら案内しますよ」
「あ、ありがとうございます!」
声をかけたのは、金髪の同い年のような美しい女性だった。親切なことに宿屋まで案内してくれるそうだ。
「冒険者になる方法って知ってますか?」
案内してもらっている道中、紘一はついでとばかりに黒いローブの男から聞いた冒険者になる方法を尋ねた。
「貴方もなんですか?実は私も冒険者なんですけど…。もし良かったら冒険者登録した後、お試しでいいから私とパーティ組みませんか?」
「願ってもない申し出です。こちらこそよろしくお願いします!」
彼女の言い方には多少の含みがあったが、紘一は気にせずパーティの件を快諾した。
「僕の名前は宇多田紘一です。貴女のお名前は?」
「私の名前はアリナです。よろしくお願いします」
〜〜〜〜〜
「ここが宿屋ですよ。外で待ってますので、早く受付を済ませてきてください」
「分かりました。行ってきます」
「すいません。これで何泊できますか?」
そう言ってローブ男たちからもらった麻袋の中に入っていた銀色の貨幣のうち、大きい方を選び、受付に差し出した。
「大銀貨でしたら、2食事付きで3泊ですね」
「じゃあそれでお願いします」
チェックインを済ませた紘一はさっさと宿屋を出た。
この国の貨幣制度は硬貨によって成立しており、先ほど出したのは大銀貨である。銅貨を10円として、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨の順に一桁づつ増えていく形だ。よって、先ほどの大銀貨は1万円である。
ちなみに、もらった麻袋の中には合計で10万円近くの貨幣が入っていた。
「お待たせしました」
「早かったですね。それじゃあ、冒険者ギルドに案内します。冒険者ギルドに冒険者として登録すれば、冒険者になれるのんですよ」
「案外簡単なんですね」
「死亡率が高いから、回転率を上げるために簡略化されていったそうです」
「物騒な職業なんですね…」
会話をしている間に冒険者ギルドに到着した。冒険者ギルドは石造りの重厚な建物で、出入りする人も、武器を携行した人間ばかりだった。
「大きい建物ですね。中にいる人も物騒だしおっかないな」
「ビクビクしてると舐められますよ!堂々としてるのがいいんです」
「わ、わかりました」
〜〜〜〜〜冒険者ギルド
「失礼します…」
「何だ?挨拶だなんて坊っちゃんかよ」
「(いきなり絡まれたー!!)」
紘一が挨拶をして入ると、入り口近くに居座っていた、大斧を持った大男が紘一に絡んできた。
「お?魔無し姫もいるじゃねえか!てことは彼氏さんか!きっと彼氏も魔力0なんだろうな!」
「そうですね。たしかに魔力は0ですね」
「え?!そうだったんですか?!」
大男はアリナの事もからかうと、対象を紘一に移した。
紘一の魔力ゼロというカミングアウトにアリナが驚く。
「ダッハハハ!2人揃って魔無しとかどんなジョークだよ!坊っちゃんはこれから登録か?頑張れよ、ダッハハハ!」
一通りからかうと満足したかのように去っていった。
「登録はこの受付でできます。一緒に行きましょう」
向かった先は数ある受付カウンターの中でも左端の小さなカウンターだった。そこには若い女性職員が佇んでいた。
「すいません。登録をお願いしたいんですけど」
「はい。冒険者登録ですね。それでは私にステータスを見せてください」
「分かりました。ステータス」
<宇多田紘一>
LV1
HP15/15 MP0/0
職業:学者
スキル:学問LV8 語学LV5 ストレージLV0 反物質LV0
「が、学問レベル8にストレージ?!学者さんなんですか?!」
「え?!どういうことですか!」
受付嬢の驚きの声がギルド施設全体に響き渡る。謎のスキル反物質にはノータッチだった。
「な、何で冒険者ギルドなんかに入るんですか!貴方は学者として大成した方がいいですよ!」
「いえ、冒険者になりたいんです」
「でも、レベル1でHPも15なんて、近くの森ですら即死しますよ!」
受付嬢は必死で紘一が冒険者になるのを止めている。しかし、紘一も意思が硬い様子。
「早くしてください。周りの人が群がってますから!」
「わ、分かりました!この金属プレートに血を垂らしてくれたら終了ですぅ!!」
紘一は備え付けられていた針を手に取り、まじまじと見た後、人差し指の腹に突き刺し、血を垂らした。
「はい。受理しました!6等級からのスタートですけど、決して身の丈に合わない依頼は受けないでくださいね!」
「あ、あと、依頼はあそこの掲示板に貼り紙として貼ってありますので、それを受付の所に持って行ってくださいね!」
「分かりました。ありがとうございました」
登録が終わると、すぐさま出口へ向かって早足で逃げ出そうとした。紘一の勘が、面倒なことになると告げているのだった。
そして、それにアリナは付いて行った。
「イテテ。あの針って消毒されてるんですかね…」
「浄化の魔法がかかってると思いますよ」
「おい。待てよ坊っちゃん」
紘一の逃亡は虚しく無意味となった。先ほどの大男に再び絡まれたのだ。紘一は観念して、大男に応じることにした。
「どうしたんですか?」
「どうしたものこうしたも、お前、ストレージのスキルを持ってるらしいな。もしよかったら俺らのパーティに入れてやってもいいぞ」
「ちょっと待ってください!彼は私とパーティを組む約束をしているんです!」
「魔無し姫には聞いてないんだよ!なあ坊っちゃん。高ランクパーティに入りたいよな」
先ほどの大男は、有名なのであろうストレージのスキルを持っている事を知って、紘一をパーティにスカウトしに来たのだった。
「ありがたい申し出ですがーー」
「バァーーカ!職業が学者で、HPが15しかない男を誰が誘うもんか!いくら伝説のスキルを持ってたって魅力になんて全然ならねえよ!!」
「い、いくらなんでも言い過ぎじゃないですか!」
紘一が柔らかく断ろうとしたところで、大男は盛大に紘一を馬鹿にした。アリナは我慢の限界のようで、大人しい口調からは想像しにくい強い語気で言い返した。
「ところで、ずっと気になっていたんですけど、職業ってなんですか?」
「ああ?・・・ダッハハハ!お前そんなことも知らねえのか?!こりゃ傑作だぜ!いいか、赤ちゃんより常識のないお前が分かるように言うとな。職業っていうのは生まれながらの適正職ってやつだ!」
この世界の人々は生まれた瞬間に、将来適正のある職業が示される。
この仕組みは各種産業の人口割合の調整や、職業への最適な学習課程を得る上で、良い作用をもたらしているのだ。
「(僕はこのままでも構わないが、これ以上言われると、アリナさんの風評被害が、冒険者稼業を続ける上での障壁になってしまう。恩人に仇を返すわけにはいかない。ここは1発お見舞いして、あのだははは大男をギャフンと言わせなければ。初めての試みだが、大丈夫かな…?)」
「あの、すいません。いい加減やめてもらえませんかね。ここまで馬鹿にされると、黙ってるわけにはいかないんですよ」
「ああ?俺はただ事実を述べてるだけなんだよ!馬鹿にされてると思うのは、お前らがコンプレックスを勝手に感じてるからじゃないか」
「(反物質というスキルを使う。想定通りなら反物質を生成できるはずだ。しかし、反物質は1g生成しただけで広島型原爆の3倍近い威力が出る)」
「(慎重に、大男の目の前に生成するんだ。ちょうど1漠(ピコ 10^-21)gでいい。180Jだ。よし、生成!)」
紘一はすかさずアリナの前に立ち、大男とアリナの視線を切ると、大男の目の前が突然光とともに爆発した。
そして、大男はそのまま倒れて尻餅をついた。
「今回はとっても威力を抑えた爆発でしたが、次はどうなるか分かりません。今後、一切において関わらないことを誓いますか?」
「あ、ああ…」
大男は完全に怯えた様子で、紘一を見上げていた。
この世界において、先ほどの現象は魔法と捉えられる。その内、爆裂魔法というのは超高度な技術であり、紘一は、先ほどの爆発はそれを準備無しで行った極めて優れた魔法使いと認識されたのである。
「よろしい。ではアリナさん。依頼を見に行きましょうか」
「は、はい」
依頼が張り出された掲示板までの道のりには、人の壁ができていたが、紘一が近づくと、紘一から距離を取るように人が避けていった。
「どの依頼がいいでしょうかね?」
「その、私は、この薬草採集くらいしかやったことがなくて…。パーティの話も無かったことに…」
アリナは紘一を高貴な魔法使いの者だと見受け、パーティに誘ったことを後ろめたく感じている。
「そんなことはしませんよ。冒険者の最初の依頼は薬草採集。これテンプレです。さあ、行きましょうか」
「は、はい!」
強引に話を運び、アリナを連れて受付まで移動する紘一。またも、人は紘一を避けて道ができていた。
「すいません。この依頼をお願いしたいのですが」
「は、はい。分かりました。はい。受理しましたのでもう大丈夫です。気をつけていってらっしゃませ」
語学というスキルが、異世界での意思疎通、読み書きなどの補助をしています。これは地球で外国語を学んだときの技量が直接LVに反映されています。