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父さんが再婚して連れてきたのは吸血鬼な妹でした  作者: しゅん
第九章 狼双子がやってきた!
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第65話 今なにしてるん?

 


「お~い、三人とも~、ご飯できたからゲーム止めて食べな~」


「ちょっと待って星夜!」


「星夜にーちゃん、今いいところなの!」


「もう少しだから、先食べてていいよ星夜にぃ!」


 う~ん‥‥‥いやはや、こんなオカンみたいなことを言う日が来るとは、人生分からんものだな。


 そして、世の男子中学生くらいの子を持つであろうオカンたちの気持ちが少しだけだけど分かった気がする。


 せっかく腕によりをかけて作ったのにこっちを見もせずゲームを優先されるのは、ちょっと悲しいのだ。


 全国のゲームに没頭してオカンの言うことを空返事で一蹴するゲーム男子、もしくは女子の皆さん、これからはもうちょっとオカンと真摯に向き合いましょう。


 俺はしぐれにぞんざいに扱われた通り、一人で席に座ってスプーンを手に取る。


 今日のお昼ご飯は簡単に作れるチャーハンと春雨スープ。ただのチャーハンじゃ味気ないから、バター風味にしてみた‥‥‥うん、美味しい(ぐすんっ)。


 まぁ、でも、ソファーに並んで前のめりになってる三人を見て、最初こそバチバチしてたものの月菜とあられとしぐれの三人が仲良くなれたようでよかったと思う。


 月菜の私の特権宣言の後、もちろんみぞれの妹たちである二人が諦めるわけもなく、再戦が始まった。


 何度かやって、全部月菜の勝利。んで、そのたびに俺は月菜をギュって抱きしめたり、髪を梳かしてあげたり、唇にキス‥‥‥は、流石にダメだと言って代わりに頬にキスしたりと、月菜のお願いを聞いていたわけだけど。


 何戦もしていくうちに、月菜のキャラの動きに慣れてきたのもあると思うけど、それ以上にあられとしぐれの実力がぐんぐん伸びていって、次第に月菜でも一筋縄では勝利を収められなくなったようで‥‥‥。


 それからは全員、ゲームに集中してもう俺の方には目もくれなくなった。


 話しかけても「しっ!」って言われたし。途中、もう一台コントローラーを用意して俺も参戦したけど、三人との実力の差がありすぎてゲームが始まって直ぐに紙くず同然にぼこぼこにされるし。


 あれ‥‥‥今日の俺、なかなか不憫? 今度から、俺ももう少し戦えるよう修行しようかなぁ‥‥‥。


 そんなこんなで、たぶん月菜は実力が拮抗する相手が現れたことでゲーマーとしての血が騒いだのか起きて来た時の不機嫌はどこへやら、今ではもうずいぶんとテンション高くなって二人に絶妙な回避の仕方とか、紙一重な技の相殺の仕方とか教えてる。


 あられとしぐれの方も、月菜の左右に座って体を寄せ合わせてる辺り、もう警戒心もなくなったみたい。


 二人は心を開いた人にはスキンシップを多くとる癖があって、あの感じだと月菜に懐いてる様子だ。


 まぁ、それでも、俺をのけ者にはしてほしくなかったなぁ‥‥‥。


 そんな風に一人食事を進めながら、微笑ましくも切なく三人を見てると、ゲームは一段落ついたのかこっちにやってきた。


「うぅ‥‥‥もうちょっとで月菜ねぇ師匠から一本取れそうだったのに」


「ふふん! しぐれはまだまだ‥‥‥っと、今日はチャーハン?」


「わぁ! 星夜にーちゃんのご飯久しぶり! バターのいい匂い~!」


「冷めないうちに食べなよ」


「「「はーい! いただきます!」」」


 あはは、本当に近くで見たら卒倒するくらい、あんなに睨み合ってたとは思えないほど息ぴったりだな。お互いに妹同志だから波長が合うんだろうか? 


 一応、月菜の方が三つも年上のはずだけど。


「そういえば、今日はみぞれはどうしたの?」


 そう思ってると、いつもいるのにって不思議そうに首を傾けながら月菜がそう言った。


 あ、そっか。月菜まだ寝起きだったな、あられとしぐれがいる理由を知らないんだった。


「いや、なんか予定があるとかで今日はいないよ。それで、この二人が来たわけだし」


「そうなんだ。あのみぞれが休日なのに星夜のところ来ないで予定ねぇ‥‥‥」


 まぁ、確かにみぞれは、学校始まってからの土日の休日には暇があっちゃこっちに入り浸ってからな。月菜がどんな予定か訝しむのも仕方ないだろう。


「二人は、みぞれが今日何してるか知ってるの?」


「ん~ん、あたしは知らない~」


「シグも知らないけど、でも今朝見た時いつもより強めにオシャレしてたよ」


「へぇ~、みぞれがねぇ、ほんとに何してるんだろ?」


 うん? どうしてそんな不思議そうにするんだ? 一応みぞれも女性なんだし、女の子がオシャレに気合を入れるってことはそりゃあ——。


「——デートとかじゃないの?」


 ぽつりとそう呟けば、俺以外の全員が一斉に手が止まった。


 静寂、そして。


「「「いやいやいやいや、ないないないない!!」」」


 全員からの大否定。


 いや、あいつもなかなか不憫だな‥‥‥そんなに男の影がないと思われてたのか。


 ちょっと幼馴染としてフォローしといてやろう。


「いやいや、あいつ結構モテるんだよ? ついこの前だって告白されてたし」


 その場に月菜もいたんだから知ってるだろ? って同意を求めて表情を伺えば。


「なんか、みぞれに同情をせざるえない‥‥‥私、実はまだ全然チャンスある?」


 なんか、うつむいてぶつぶつ言ってる。


 なら、実の妹の二人ならみぞれからそういう話を聞かされていたり?


「おねーちゃん、本当に星夜にーちゃんに流されてるんだね」


「お母さんの言う通りだった、みぞれねぇもなかなか大変」


 しかし、二人もこっちを見ながらこそこそしてる。


 いやいや、なんだよ。俺そんなにおかしなこと言ったか? まぁ、確かに今までみぞれに彼氏がいたなんて聞いたことないし、何故か毎回振ってるみたいだけどさ。


 この前の‥‥‥たしか、辰巳君だっけ? あんな風に堂々と告白してくる人がいるんだから、いつ彼氏ができても‥‥‥それこそ、今日できたって全然おかしくなんか——。


 ——ズキリ。


 そう、どこか胸が痛いような気がした。


 最近感じて悩んでるあれだ、今日は朝からずっとそんなこと忘れてたのに。


「星夜?」


「‥‥‥うん? どうした? おかわり?」


「ううん、そうじゃなくて。なんか、焦ってるみたいだけど大丈夫?」


「そ、そう? 焦ってなんかないけど」


 月菜に心配されるほど、そんなにも挙動不審だったかな。


 でも、確かに今の自分がいつもとちょっと変なのは感じてる。


 なんか、今みぞれがどこで何をしてるのか、普段はそんなこと気にも留めないのに、気になる。


 とりあえず、メールでも送っておくか。


『みぞれ、今なにしてるん?』


 ——送信。





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