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父さんが再婚して連れてきたのは吸血鬼な妹でした  作者: しゅん
第五章 モヤモヤの正体
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第32話 みぞれちゃんに任せなさい!



 ◇◇星夜side◇◇



「こんな気持ちになるなら、あなたの妹になんてなりたくなかったっ!!」


 叫んで、顔を俯けた月菜の瞳から、ぽろぽろと涙のしずくがあふれてこぼれる。


 でも、俺は言われた言葉を理解して、月菜の姿を見て、だから何と言ったらいいのかわからない。


 さっきまでの状況も未だによくわかってないのに。


「月菜‥‥‥」


「‥‥‥‥‥‥ごめんなさい」


「待っ——」


 ぽつりとそう呟いた月菜は、霧に姿を変えると溶けるようにその場から消えて、俺の伸ばした腕はどこにも届くことなく空を切った。


 月菜が消えたその場を茫然と眺めながら、ふとさっきまでの月菜を思い出す。


 目が覚めたら、初めて会った時の様に月菜に覆いかぶされてて、柔らかな唇を押し当てられてた。


 それだけじゃなくて、ディープキスをして胸まで揉んでしまった。


 今もその時の感触が残ってる。


 なんとか隙をついて身体を入れ替えることで抵抗したけど、組み伏せた月菜はちょっとだけ震えつつも、俺からのキスを求めるように目を瞑ってきて。


 正直、その時の月菜の姿が網膜に焼き付いて離れない。


 はだけて胸元が開いた格好で、眦にしずくが煌めく瞳を無防備にも閉じて、ぬるりと妖しく光る唇から荒い吐息を漏らしてる月菜。


 そんなの、男として犯したくなるに決まってるだろう。


 けれど、わずかに残った理性をありったけ集めて、自分に俺たちは兄妹だと言い聞かせてなんとか一線を超えずに済んだ。


 月菜の気持ちは、あんな風に言われたら流石に分かる。でも、なんであんな行動に出たんだろう。


 それに、最後の言葉。


 俺は、何か間違えたのかな‥‥‥月菜が来てから、なるべく頼れるような兄になろうとしたんだけど。


 あなたの妹になんてなりたくなかった、か‥‥‥流石にショックだな。


「なーに泣きそうな顔してるのさ」


 その時、月菜がいなくなって真っ暗だった部屋に電気のスイッチが入った。


「みぞれ、起きてたのか」


「そりゃ、隣であんなことしてたらねぇ?」


 ジトっと見てくるみぞれから、俺は目をそらす。


「はぁ‥‥‥それで、星夜はどうしたいの?」


「どうって、それはもちろん仲直りして、また今までみたいに‥‥‥」


「でも、星夜もなんとなく分かってるんでしょ? あの子の気持ち」


「それは、まぁ……」


「なら、もう今まで通りなんて無理じゃん」


「‥‥‥」


 みぞれの言っていることは俺も分かる。


 今のままじゃ、気まずいなんて生易しいものじゃないからどうしても距離ができちゃうし、それは時間が解決してくれるようなことでもない。


 なら、月菜の気持ちを受け入れるかと言われたら、それはやっぱり駄目だろう。俺たちは兄妹なんだから、付き合ったとしても父さんたちになんて言えばいいかわからないし。


 俺が何も言えないでいると、みぞれはまた大きくため息をついて。


「星夜はさ、あの子のことどう思ってるの?」


「どうって、そりゃあ可愛い妹だと思ってるけ——痛っ!?」


 答えようとしたら、みぞれに思いっきり頭を叩かれた。


「ばかっ! そうじゃなくて、女としてどう思ってるのか聞いてるの! まぁ、星夜のソレを見たら意識しちゃうってことは分かるけど」


「お前な、見るなや!」


「な~に今更見られたくらいで恥ずかしがってるのさ? この前あたしのおっぱい揉んだくせに」


 くっ‥‥‥それを言われたら何も言い返せん。


 それにしても、月菜を異性としてどう思ってるか‥‥‥か。


 俺は月菜と出会ってから今まで、そういうことはなるべく考えないようにしてた。考えても、妹だって自分に言い聞かせてきた。


 だから、正直なところよくわからない。


 確かに、俺の下半身はさっきので反応してるけど、あれは男なら誰でも反応しただろうし。


 隠しても今更なので、そういうことをみぞれに言うと、みぞれは少しだけう~んと考えるしぐさをした。


「あ~、だからあの子は‥‥‥んー、まぁこれが一番かなぁ?」


「何かあるのか?」


「うん、明日二人でデートしてきたらいいと思うよ」


「‥‥‥それで、どうにかなるのか?」


「なると思うよ? ただし、星夜がちゃんとあの子を見てあげること」


 みぞれが言ったことは、明日一日、俺は月菜とデートをする。ただし、俺は月菜を妹としてじゃなくて一人の女性として見る。


 それでどう思ったのか、どう感じたのか、お互いの気持ちをしっかりと確かめ合ってこいってことだった。


 それで、どうにかなるかはわからないけど。でも、このまま何もしないよりはいいのかなって思った。


 なら、月菜がどうしてあんなことをしたのかしっかりと聞いて、俺もちゃんと向き合おう。


 ただ——。


「月菜はどうやって誘おう? たぶん、今のままじゃ逃げられるだろうし‥‥‥というかどんな顔して会えばいいのかわからん」


「しょうがないなぁ~。そこはこのみぞれちゃんに任せなさい!」


「けど‥‥‥いや、なら任せていいか?」


 月菜が吸血鬼であることがバレるかもしれないって思ったけど、みぞれならもし正体を知っても月菜を怖がったり、誰かに言いふらしたりなんてしないだろう。


 それにさっき起きてたなら、もう気が付いてるかもしれないし。


 みぞれにはこのことが終わったら月菜に相談して吸血鬼であることを伝えてもいいかもしれないな。


「もちろん! ばっちぐ~だよ! 必ずあの子は何とか連れ出してあげる。だから星夜も明日はちゃんとあの子を女の子として見てあげて、しっかりとエスコートして、最高デートをしてくること! 分かった?」


 俺の顔を覗き込むように言ってくるみぞれは、今はお姉ちゃんモードなんだろう。


 いつもそう。こいつは俺が困ったことがあったらいつもこんな感じで助けてくれる。


「分かってる、いつもありがとな」


「ほんとだよ! まったく、女心のわからない手のかかる幼馴染なんだから」


 みぞれはそんなことを言って、やれやれって感じに俺の頭を撫でてくる。


 俺はちょっと照れ臭くなりながら、その手をパシッとはらって。


「そういうみぞれは最強の幼馴染だよ」


「ふふんっ♪ そんなの当たり前よ!」


 そう得意げに言ったみぞれは、俺に待ち合わせは何時にするのか聞いて、月菜の部屋に向かっていった。


 俺も、明日に備えて色々と準備しよう。


 月菜、君の気持ちをちゃんと受け止める。だから、明日逃げずに来てほしい。



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