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父さんが再婚して連れてきたのは吸血鬼な妹でした  作者: しゅん
第一章 妹は夜のお姫様
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第2話 俺、嫌われてないよね?

 



 その後、復帰した俺はとりあえず現状をもっとより深く理解するために義妹——月菜ちゃんから話を聞くため、一度部屋に戻ってパジャマから着替えてからリビングに戻ってきた。


 今はお互いソファーに座って情報のすり合わせ中である。まぁ、俺はなんも詳しい教えられてないんだけど。


 いや、本当は昨日言ってたのかな? ただ、父さんの妄想だと思って聞き流してたから全く覚えてない。


「あ~、じゃあ月菜ちゃんは割と前からウチの父さんと美月さんが再婚して一緒に住むことは知ってたってこと?」


「うん。あと、『ちゃん』はいらない、月菜でいいよ星夜……お兄ちゃん」


「うぐっ!」


 ……一つ、分かったことがある。


 それは、俺自身思ってたより妹という存在に結構憧れてたかもしれない。


 あの父にこの息子ありっていうか、昨日父さんに付き合って可愛い妹を妄想してたせいか、『お兄ちゃん』と呼ばれると、なんというかヤバい。


 でも……ちょっと無理してる気もするんだよね。


「わかった、それじゃあ月菜って呼ぶことにする。それと、俺のことも無理にお兄ちゃんってつけなくて星夜でいいよ、同い年だし」


 事前に再婚することを聞かされてたとしてもいきなり兄妹が増えるっていうのは想像以上に気を使うというか、慣れるものじゃない。


「うん、それじゃあそうする。……星夜」


「……うっ!」


 ただまぁ、名前で呼ばれるのは、それはそれでクルものが……。


 というのもだ、最初に見た時から思ってたけど月菜は……すげぇかわいい。


 夜空のように美しくもどこか艶やかな黒髪に澄んだ黒瞳。どちらかといえば綺麗よりも可愛いに属する顔立ちだけど成長したらきっととてつもない美人になるに違いない容姿をしてる。


 もう一度言おう……むっちゃかわええんや!


 そんな子に「……お兄ちゃん」だとか「……星夜」だとか儚い感じに言われたらグッときちゃうだろう。


 でもそれは、俺の男の子的なアレな感じじゃなくてあくまで兄としての感じなやつね。


 だってこの子は今日から俺の妹なのだ。


 ていうか、そう思わないと今にも気が動転しそうで。


 それにこれから父さんたちが帰ってくる一か月後まで二人で暮らすことになるんだから性的に興奮するとかはナンセンスだろう、そこらへんはしっかりしないと。


 そう、父さんと月美さんは式場の下見とやらで今さっき空港に着いたと連絡があった。

 

 だからこれから二人で協力せんといかんのだ。


「ごほんっ! とりあえず、だいたい自分たちの状況は分かったよ」


 ここまで色々脱線したけど、今は現状理解をするために話してたんだ。


 で、月菜から聞いた話と昨日の父さんの言ってたことを断片的に思い出して今の状況は。


『父親が再婚して、その相手の連れ子と兄妹になって、両親たちは海外に式場の下見に行ったから帰って来るまで二人で協力して過ごす』

 

 まぁ、もう覆しようのないことをうじうじしても仕方ないし、これからのこと踏まえて今決めることは。


 ・家事の分担

 ・色々なルール決め(お風呂の時間決めるとか)

 ・月菜が使う部屋決め


 こんなところかな?


「さっそくだけど、月菜ってなにか家事出来る? 一応俺は全部できるつもりだけど」


 こういうのは分担したほうがいいだろう。


 俺だけでできないことはないけど、それだと相手に気を使わせちゃう気がするし。


 そう思ったんだけど……。


「私、なにもできない」


「……あ~、分かった。それじゃあ俺がやるよ」


「うん、ありがと」


「えっと、それじゃあ、なにか守って欲しいルールとかある?」


「特にない」


「そうか……。まぁ、なにかあったら遠慮なく言ってくれていいから」


「そうする」


「……ちなみに、月菜が使う部屋って?」


「星夜の隣の部屋、昨日の夜に荷物も運んだ」


「そっか、おっけーおっけー」


 ……なんか、素っ気ない返事しか返ってこない。


 警戒されてるんだろうか? それとも人見知り? 機嫌が悪いようには見えないし、表情もあんまり動かないからちょっと何考えてるのか分からないな。


 そんな気まずそうな態度をとられると俺の方も気まずくなってくる。


 空気が、居心地が悪い。


 まぁ、昨日まで赤の他人だったんだから、どうしたらいいのか分からないのはしょうがないよね。


 俺も正直どうしたらいいかわからないし。


 少なくとも嫌われてなければいいんだけど。


 そんなこと考えてると、話はもう終わったと思ったのか月菜が口を開いた。


「あの……」


「ん?」


「えっと……」


 なにか言おうとしてるのは分かる。


 けど、その言葉はなかなか出てこないようだった。


 月菜はこっちにちらりと視線を向けたり俯いたりして口をパクパクさせてたけど。


「その……私は部屋に戻る。まだ荷解き終わってないから」


 結局そう言って、リビングを出ていった。


 その後ろ姿をぼーっと見ながら。


「あ、うん……………………俺、ほんとに嫌われてないよね?」


 なんかもう最初から泣きそうな俺でした。



 ◇◇月菜side◇◇



「はぁ……」


 部屋に戻った私は小さくため息をつく。


 お母さんが再婚して今日からこの家に住むことになった。


 別にそのことに不満があるわけじゃない、お母さんと二人で生活するのは難しいことも分かってるし、相手はあの健星先生で昔から知ってる人だから安心してる。


 それに、私のお兄ちゃんになる星夜も嫌いなわけじゃない。


 むしろ健星先生に似てて優しそうで、実際さっきまでの会話も私に気を使ってくれてて悪い人じゃないことは分かってるし、会うのを楽しみにしてたのも事実。


 だけれど、二人になった途端に漠然とした不安を感じた。


 なぜなら私には簡単に人には言えない秘密があるから。


 それはお母さんにも当てはまることで、お母さんがあの人間と離婚した理由で、健星先生と再婚した一つの理由でもある。


 もちろん再婚の一番の理由は二人が愛し合ってるからだと思うけど。


 ほんとならこの秘密は朝のうちに家族になった証として星夜にも伝えるはずだった。


 けど、星夜は寝坊してきまして伝えられなかった。


 健星先生とお母さんは自分たちが帰ってきてから改めて星夜には話そうって言ってたけど、これから家族になるのにそれはよくないって私は思った。


 それに、その秘密は普通の人とは全然違うからお母さんたちが帰ってくるまで隠し通せると思えないし。


「……さっき言えたらよかったんだけど」


 でも怖かった。


 星夜が秘密を知った時の反応が怖くて言えなくて、それだけじゃなくて素っ気ない態度もとっちゃったと思う。


 まぁ、私はもともとあんまり感情を表に出すとか、人とのコミュニケーションをとるのは苦手なんだけど……。


「はぁ……嫌われちゃったよね」


 これからどうしたらいいのか分からなくなりそう。


 私はまたため息を一つこぼした。




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