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父さんが再婚して連れてきたのは吸血鬼な妹でした  作者: しゅん
第四章 突撃! 最強の幼馴染!
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第27話 これが幼馴染

 


 ◇◇星夜side◇◇



 学校から帰ってきて、月菜にみぞれのことを考えさせられた。


 なんだか、改めてああいう風に考えると、ちょっとこっ恥ずかしいな。


 一緒にキッチンに立つみぞれの横顔をちらりと盗み見る。


 手際よくパスタをゆで、フライパンにサラダ油をひきながら楽しそうに鼻歌なんて歌ってる姿に学校でキスされた時の心臓の鼓動の強さを少しだけ思い出した。


 でも、今はそんなことは感じない、気まずいなんてこともない。


 そのことに何故か言いようのない安心感を覚える。


 ここにいるのは、十年以上一緒にいて、もう自分の身体の半身のようないつも通りのみぞれ……決して、女の子のようなみぞれじゃない。


「ふんふ~ん♪ んにゃ? どったの星夜?」


「……なんでもないよ。それより、切り終わったから入れるぞ」


「ほいほ~い」


 俺はみぞれがパスタと材料を炒める準備をしてる間に切っていたベーコン、しめじ、玉ねぎをフライパンに入れていく。


 ジュ~と小耳にいい音を立てながら炒める始めたのを尻目に、俺は再び包丁を持って次はほうれん草を切る。


 それが終わったら今度は、ゆであがったパスタを水切りして……ふと、じ~っとどこからか視線を感じた。


 その元をたどってみると、ソファーの陰からこっちを見つめる月菜がいる。


 んー、そういえばみぞれが乱入してきたせいで有耶無耶になっちゃったけど、さっきまで月菜に追及? されてたんだよな。


 結局、月菜が不機嫌だったのは何だったのだろう? やっぱり、お兄ちゃんが取られそうとかそういう感じ? やばい、それだったら悶えものだ!


 だけど、そんな感じじゃなかった気がするなぁ……。


「星夜~」


「あいよ」


 そんなこと思ってると、みぞれに名前を呼ばれたからさっき切ったほうれん草をみぞれが炒めてるフライパンに投入。


 全部入れ終わった後、調味料ケースから塩と胡椒を取り出して、みぞれの方にノールックで放る。


 みぞれももちろん、ノールックでそれらをキャッチして、流れるように味付けを始めた。


「えっ!」


 と、驚きの声を上げたのはこっちをじっと見てた月菜だ。


 その声を聴いて、思わずちょっとドヤ顔しそうになる。というか、みぞれは胡椒を振りまきながらすっげぇドヤ顔してる。


「まさか以心伝心……これが幼馴染……」


「ふふんっ!」


「いや、今のをそんな判然としないもので表さないで欲しい。これは、たゆまぬ努力の結晶だから……ははっ」


 俺は少し過去のことを思い出して、乾いた笑いが漏れた。


 あれは少し前のことだ。その日は休日だけど父さんは仕事でおらず、お昼になって昼ご飯を作ろうとキッチンに立った時、いつものようにみぞれが突撃してきて早々、ある言葉を言い放った。


「星夜! かっこよく料理しよう!」と。


 丁度その時期、みぞれはなぜかばかっこいい動画にはまってて、あんな感じに料理をしたくなったらしい。


 みぞれが突拍子もないことをいうのはいつものことだから、まぁいいかって思って承諾したんだけど、それが地獄の始まりだった。


 いくら十年以上一緒にいる幼馴染と言えど、視線を交わさず完璧に合わせて一発成功なんてできるはずもなく。


 親子丼を作ろうとしたのだけど……飛び交う塩と砂糖、吹き散る醤油とみりん、乱れ舞う胡椒にくしゃみが止まらなくなり、しまいには生卵爆弾。


 でも、成功した時の爽快感が凄まじくてやめるにやめられず、もうその日の家のキッチンはそれはそれは掃除のし甲斐があるキッチンになった。


 そうして何時間もかけて作り上げた親子丼のおかげで、俺たちはさっきみたいな秘技:ノールック・クッキングを手に入れて、みぞれと二人でなら流れるように料理ができるようになった。


「あれは大変だったよねぇ~」


「本当だよ、何度普通に作りたくなったか……」


「へ、へぇー。それじゃあ、名前呼んだだけで何の調味料を取って欲しいのとかが分かるのも?」


「それは、直感? まぁ、なんとなく分かるってやつかな」


「あ、それはあたしも星夜と同じ! 星夜だから今渡してくるのはこの調味料だって分かる!」


「……ふーん、そうなんだ」


 そう言う月菜はどこか冷めたような声だった気がする。


 どうかしたのか気になったけど、今は調理中だからよそ見ができず、聞けなかった。


 その後は、フライパンに最後にパスタを入れて、和風風味の味付けの為の醤油をノールックパスで……おいおいおい、またそんなかっこつけてMOCO’Sキッチンみたいに高いとこから入れたら周りに醤油が飛び跳ねて……ないな。


 うわっ、みぞれすっげえドヤ顔……なんか腹立つ。


 そんなこと思いながら、俺は深皿を取り出して、最後にみぞれが盛り合わせ、その上にパラパラと海苔を振りかければ、和風パスタが完成した。


「月菜ー! できたよー」


「うん、分かった」


 それから、三人で椅子に座って食べ始める。


 さて、和風パスタのお味は……うん、強すぎない濃さの醤油が優しい味わいで、シメジとベーコンがうまい! とういうか、あんな醤油の入れ方でよくこんな絶妙な味付けにできたな。


「ん~! 美味しいね! 星夜とお料理するのも久しぶりだから、いつもより何倍も美味しく感じる!」


 隣に座った、みぞれがフォークでくるくると巻いたパスタを口に運ぶと、頬を抑えながら笑顔を見せる。


「まぁ、そうだな。月菜はどう?」


「うん、美味しい」


「ふふんっ! そんなの当たり前よ! あたしと、あたしが料理を教えた星夜が作ったんだもん!」


「え、兄さんに……教えた?」


「そうだよ! この子はあたしが育てました! もうっ! こんなに立派に育っちゃって~」


「あぁ! おいっ! 今食べてるんだから撫でるな!」


「何だよ~、星夜くんは反抗期か~」


 そうやってグイグイとじゃれてくるみぞれに、やっぱり少しだけ安心する俺がいる。


 みぞれの身体は柔らかい、でもそこに女の子は感じない……俺たちの関係はそんなものじゃ変わらない。


 きっとこれからも俺とみぞれは幼馴染で、それ以上にもそれ以下にもならない。


 ただ、そんな俺たちのやり取りを見て、俯いてる月菜に少しだけ違和感を覚えた。



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