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父さんが再婚して連れてきたのは吸血鬼な妹でした  作者: しゅん
第四章 突撃! 最強の幼馴染!
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第26話 モヤモヤする

 


 ◇◇月菜side◇◇



「……モヤモヤする」


 兄さんと、あの子が目の前でキスしてた。


 なんだろう、この感じ……ショックなのかな? 自分でもわからない。


 ただ、朝に感じたあの子に対するムカムカ感とはまた違う。よくわからないけど心の奥がモヤモヤして、ザワザワして、ついあの場で兄さんを置いて逃げてしまった。


 それを兄さんは私が怒ったと勘違いしたのか、すぐに追いかけて来て謝ってくるけど。


 ちがうの……べつに、謝って欲しいわけじゃない。


 そもそも、謝りたいのは私の方。


 あの時、兄さんが倒れそうになったのはたぶん私のせい。昨日の夜に、兄さんに無断で血を吸っちゃったから。


 でも、それもこの心のモヤモヤが邪魔をして口に出せない。


「月菜……そろそろ機嫌を直してくれると、嬉しんだけど」


「…………」


「うぅ……」


 学校が終わって、家に帰ってきた。


 このモヤモヤについて考え事をしていたからか、兄さんたちがキスしたところから、ホームルーム、その後に行った校長先生のところから帰り道までの記憶はあやふや。


 狼娘は、本当に家が隣で私に無視されてしょんぼりしてる兄さんに無視されてしょんぼりしてたけど、最後には元気に手を振って帰っていった。あ、狼娘っていうのは大狼みぞれのこと、なんか狼っぽいし。


 部屋にスクールバックを置いてリビングに戻ってると、魂が抜けたようにぐったりとしてる兄さんがソファーにすでにいた。


「月菜、お昼ご飯はどうしようか?」


「……兄さんは、あの人と付き合ってるの?」


 ふと、そんな疑問が頭によぎって、兄さんの質問とは全く関係のないことが口から出てきた。


 兄さんはグイグイ来るあの狼娘のことを煙たがってるように見えるけども、決して突き放したり嫌っているようなことは無かった。それに、付き合ってないことも明言されてない。


 あの子のほうは言わずもがな、足先から頭のてっぺんまで兄さん大好きが溢れてるようだった。


 なら、この二人は実は付き合ってたりするんじゃないかな? そう思った……けど。


「おぉ、やっと声が聴けた! じゃなくて、あの人ってみぞれのことか? それなら、付き合っては無いな。よくそう間違われるけど」


「……でも、キスしてたじゃん」


「あぁー……あれは、一種の挨拶みたいなもの? 特に深い意味は無いよ、昔からお互い気まずくてどうしていいかわからなくなった時に空気を直すためのルーティーンみたいな。それ以外の他意はないんだ」


 兄さんは本当にそこに含みは無い様子で淡々と言う。


 けど……キスってそんなに軽々しい感じのことなのかな? 漫画とか、ラノベとかだとそういうことは大事な過程の一歩の様に表現されるけど、それは誇張? 実は周りの人たちは結構キスしてるのかな?


「まぁ、月菜の言いたいことはなんとなく分かるよ。たぶん、俺とみぞれの距離感って異性としては異常なんだと思う。でも、生まれてから今までずっとあいつとは一緒だったから、今更どうこうっていうのも嫌だし……俺もみぞれも、恋人ができたりしない限りこれからも変わることは無いと思うから、月菜も慣れてくれると嬉しいな。まぁ、今日みたいのは流石に度が過ぎてると思うから、後で叱っておくけど」


「……兄さんは、どう思ってるの?」


「どうって、みぞれのことを?」


「うん、それに兄さんはあの子の気持ちも分かってるんでしょ?」


「それはまぁ……あはは……う~ん、改めて考えると難しいなぁ」


 そう言って、兄さんは真面目に答えようとしてくれてるのか、適切な言葉を探すように上を向いて。


「なんというかな、家族じゃないけど家族と同じくらい近い存在? なんか、朝にみぞれが言ってた最強の幼馴染は大袈裟だと思うけど、でも特別な幼馴染ではあるんだと思う。ただ、そこに恋愛感情があるかって言うと、無いかな」


「……そっか」


 今更兄さんの言ってることが嘘だとは思えない。兄さんは本当にあの狼娘と付き合ってるわけではないと知って、どこかホッとしてる自分がいる。


 だけど、この胸の内のモヤモヤは無くならなかった。


「星夜ぁー! お昼ご飯たべよー!」


 その時、リビングのドアが勢いよく開かれて、まるで我が家にごとく狼娘がやってきた。


「ん? どったのこの空気?」


「あ、おいみぞれ! お前学校で堂々とあんなことするのはやめろよ」


「え~? ん~、分かった! まぁ、そんなことよりあたしパスタ食べたい! 和風がいい! 一緒に作ろう!」


「ほんとに分かったのか……あ~、もう引っ張るな! はぁ、パスタなんてあったけか……?」


 そう遠慮のない二人のやり取りを見てると、確かに恋人同士に見えなくて、どちらかというと家族のように見えてくる。兄と妹、姉と弟のような。


 それでもやっぱり、モヤモヤは無くならないで、むしろ増したような気がした。


 これは、嫉妬? ううん、そんな単純な感じじゃない。


 星夜のことが好きなのに、他の子に取られそうって思う焦り? ううん、これも違う気がする。


 じゃあ、これは……。


「……幼馴染」


 キッチンでわいわいしながら共同で料理を始める二人の関係……家族じゃないけど家族と同じくらい近い存在、なぜだかこれがこのモヤモヤする気持ちの原因の様な気がした。


 なら、このモヤモヤを突き止めるために、あの二人を観察しよう。


 そしたら何か分かるかもしれない。




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