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父さんが再婚して連れてきたのは吸血鬼な妹でした  作者: しゅん
第三章 兄妹デート
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第14話 あんまり見ないでっ//

 


「さ~て、今度はどんな感じなのかな~、きっと抜群に似合ってるんだろうなぁ~」


(ねぇ、見てあの人、試着室の前でニヤついてるわ)


(ほんとだ。なんか気持ち悪いし、ちょっと通報しとく?)


 遠くからコショコショと囁き合って、不躾な視線を送ってくる大学生くらいの女子がいるなぁ~。


 ——ニッコリ。


「「きゃああぁぁぁ~~!」」


 さて、服屋の試着室の前でニヤニヤしながら、女子大生に「きゃあぁ~!」って逃げられたのは誰か。


 まぁ、俺なんだけどさ……。


 そんな気持ち悪かった? ちょっと……いや、かなり凹むんだけど。


 これは早く着替えた月菜の姿を見て早急にメンタルケアをしなければ。


「月菜~、まだ~?」


「まだ! まったくこれで最後だからね!」


 仕切りのカーレンの向こう側に催促の声をかけると、ちょっと強い口調で返事が返ってきた。


 少しご機嫌斜めというか、ちょっと辟易してるらしい。


 今、俺は試着室の前で月菜が着替え終わるのを待ってるところだ。


 それでまぁ、なんで月菜がこんな感じなのかというと。


 月菜を店の中に強引に連れて行ったあと、俺ができる限り分かりやすくしながら月菜にオシャレのことを教えていった。


 ちなみに、教える俺のファッションセンスは問題ないと思う、男女の違いはあれど結構自信ある。


 なぜなら父さんの服を選んでるのって俺ですから! これぞ高い主婦力のなせる技。


 いつだったかな、ある日のこと、玄関に立った父さんが言ったんだ、「あ、俺今日デートだから」って。


 よれたポロシャツ&ちょっとシミのついたジーパンの格好で。


 ちょうど、歯磨きしてた時で歯ブラシをその場で落とすくらい衝撃的だった。


 我が父ながらありえないだろう、こんなんでデート来られたらもう二度と一緒にいたくなくなるくらいの幻滅モノだわ。


 思わず叫んだね、「ばっかち~~~んっ!」って。


 それから、あほ面かましてるバカおやじを急いで服屋に連れて行って、いい感じのTシャツとそれに似合うジャケットとパンツをチョイス、垢ぬけた感じにして、尻蹴飛ばして送り出した。


 その日からもう、父さんからの株は爆上がりよ! 


 デートは成功したらしく「星夜よ、なんでも好きなものを買ってしんぜよう」って言われたし。


 まぁ、結局その当時のデート相手の人とはうまくいかなかったみたいだけど。


 閑話休題。


 それで、なんだっけ? あ~そうそう、月菜がこう不機嫌になってる理由だけど。


 最初はただ聞いてるだけだった月菜も、途中からは興味が出て来たのか自分で服を手に取ったりして、気になったのがあったのか試着してみたいとも言うようになって。


 それならってことで、店員さんに言って試着室を借りて、着替えた姿をお披露目してくれたんだけど……それがいけなかった。


 その時に月菜が選んだ服はダボッとしたパーカーにショートパンツで、たぶんオシャレっていうより楽そうだからって理由で選んだのかもしれないけど。


 まぁ、ぶっちゃけ月菜は何でも似合うんだよね。


 その時月菜が選んだ服も、ショートパンツがパーカーの裾に隠れるから、その下に何も履いてないように見えてエロティックで、袖も眺めでいわゆる萌え袖になったそれがすごくキュートで。


 やっぱり身内贔屓なしで月菜は素材がいいから、どんな服を着ても全く見劣りしない。


 だからね、しょうがないと思うんだ、色んな月菜の格好が見たいと思うのは。


 それから、月菜が元の服に着替える前に俺が着てもらいたい思った服を片っ端から取って渡して着替えてもらって、途中から店員さんも混ざって着せ替え人形にしてたら、月菜がこんなになってしまった。


 でも、後悔はない! たくさん普段見ないような月菜を見られて大満足だ!


 と、そんなこと思ってると。


「兄さん、着替え終わった」


 いよいよ最後のお披露目らしい。


 待ってました~! って、期待に胸を膨らませてるとゆっくりカーテンが引かれる。


「——っ!」


 そして試着室の中の月菜を見て俺は思わず息を飲んだ。


 最後に月菜に渡したのは、このお店に入るきっかけになったマネキンが着ていたやつで、透け感のある黒のミニのワンピース。


 大人っぽい上品さを感じさせる星柄が繊細に散りばめられていて、まるで月菜が星空を着ているようにも感じる。


 それにつるんとした肩が覗くオフショルダーや、透けない生地が逆に輪郭を強調する胸元や、内側のミニスカートから透ける生地越しに見える太ももがどうしようもなく女性らしい。


 これは完全に当たりだった。


 これまで着てもらった服の中で、圧倒的に月菜に似合ってる。


 当の本人は、普段こういう露出が多い服を着ることはあんまりないからか、うつむきがちにもじもじと恥ずかしそうだけど。


「うぅ……あんまり見ないでっ//」


 ——バッキュ~ンッ!


 やば……なんか打ち抜かれた気が……。


「に、兄さんやっぱりこういうの似合ってない?」


 まるで魂が抜かれたみたいに、何も言えずボーっとしてる俺を月菜が不安そうな目で見てるのに気づいた。


 それでやっと俺のトランス状態が解除される。


「いや、すっごい似合ってるよ。ていうか、似合いすぎて言葉が出ないくらい……本当に」


「あ、ありがと……」


 たぶん、俺の表情から今の言葉が本心だってことが伝わったんだろう。


 月菜は照れてるのか真っ赤な顔で口をつぐんで背を向けた。


 ……なんか、普段見れないこんな月菜を目にしたからか、俺の方も気恥ずかしくなってくるな。


 ただまぁ、俺が言ったことは確かに本心なんだけど、一つだけどうしても気になるっていうか、見過ごせないことがある。


 俺は、なるべく月菜の方を見ないようにしながら試着室のカーテンを勢いよく閉めた。


「兄さん?」


「月菜、ちょっと注意不足だから気を付けて」


「注意不足?」


「……肩」


「え? ——っ!?」


 月菜も、自分がどんな格好してたのか気づいたんだろう、中から息を飲む気配が分かった。


 月菜の着ているワンピースはオフショルダーで肩は露出することになる。


 そうすると当然それ用の下着にしないと普通に見える、ブラが。


 たぶん、月菜は試着室の鏡に映らないから気が付かなかったんだろう。


 俺も、もうちょっと気を使った方がよかったな。


 そうやって反省していると、着替え終えたんだろう後ろでカーテンが引かれる音がした。


「……兄さんのえっち」


 振り返ると、未だにちょっと頬に赤みがさした月菜がジト目を向けてきてた。


 ゴキパニックの時に散々見ただろって感じだけど、あの時は月菜もパニックと恐怖で感覚がマヒしてたらしい。


 次の日に起きた時なんて、顔真っ赤にして棺桶モチーフのギターケースに入って閉じこもって出て来てくれなかったもん。


「あ、あはは……あ~、せっかくだし試着したやつのどれか買おう! 俺がプレゼントするから気に入ったやつを選んで!」


 弁解のしようもないので、話を変えるためにそう言うと、しばらくジ~ッと見られてたけど許してくれたのか、視線を今持ってるさっきまで着てたワンピースに落とした。


「これにする。これが一番兄さんが息を飲んでた。それに、一番最初に似合うって言ってくれたのもこれだし」


 うっ……見惚れてたのバレてたのか。


「ごほんっ! それじゃあ、レジに行こうか!」


 なんだか気恥ずかしくて、咳払いしてから俺はレジに向かった。


 それから、宣言通り服を買ってプレゼントしてあげると、月菜は本当に嬉しいって思ってくれてることが分かるような満面の笑みで「ありがとっ!」を言ってくれた。


 それだけで、いい買い物したなぁ~って思う俺である。




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