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劇的な夜

作者: 藤井八重

「そんなもんでしょ」彼は言う。そして、「そんなもんかなあ・・・」と、おそらく聞こえないほどの声量で俺は返す。

どうやら彼には自分の本意が伝わっていないようで、少しもどかしい。

時は深夜、ここは近所のコンビニ横の喫煙所である。ただの小学校時代の同級生であった彼と、お互い22歳にもなって中身のないつまらないどうでもいい会話を、こんなところでするなんて特殊な状況だなと思う。

丁度箱に残った最後の1本に火をつけ、彼の背中は言葉を置いていった。「またな」


俺は日常がなによりもつまらない、と思う。

だから深夜のコンビニでたむろしたりするのは、自分にとっては非日常で、会話がなくなってお互い黙り込んでも、これはこれで結構楽しいのだ。

もちろん、小説やアニメみたいな創作物語のようには俺の人生は劇的じゃない。おまけに芸能人やトップアーティストのように、ひかる才能もどうやら持ち合わせていない。

だからこそ、つまらない日常の中に、僅かでも非日常を見出し続けるのだ、と、この年まで生きてきて何となく悟った。


煙をふかしながら友人が小さくなるまで見送り、俺もゆっくりと歩き出す。痩せ細ったその姿はさながら老人のようだと自分でも思う。

いつだって帰り道は嫌いだった。それは面白いものから自分から遠ざかるような感覚で、寂しい。だんだんと心の装甲が剥がれ、思い出さなくていい記憶を勝手に思い出し、さらに悲しく、さらに弱くなっていく。


これがまさに俺の人生。己の心の内側に四苦八苦するようではダメだと、わかっているのにどうにもならない。

劇的に人生を変えようと行動に移す度胸もなく、目新しいことだけ必死に探している。


暗い夜道の中に、街灯に照らされたアパートの門が見え、癖になっている独り言を放つ。

「また行くか」


頭に思い浮かんだものを文章という形にするのは、とても大変なことなんですね。初めて人の目につく物を書いたという事実は、私の中では非日常なことです。

あなたにとってはどうでしょう?日常に退屈してませんか?

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