ひとりぼっちの私
いつも一人でいるあなたに届けます
昔から私は一人でいることが多く、人と群れることが苦手だった。
今の職場でも仲の良い人は一人もいなくて、いつも一人だ。
一人でいるのが気楽で、誰にも気を使わないでいられるのが快適だった。
だからあの人が気さくに話しかけてくれた時は正直戸惑った。
私より10コも下の後輩で、いつも笑顔で周りには常に人が賑わってるような、私とは正反対の男の子。
その日は会社の飲み会で、私はいつものように一人でいた。
すると突然あの人が私の隣に座ってきた。
予想外の出来事にどんな会話をしたのか全く覚えていなくて、覚えてるのは帰り道が心配だからとタクシーで家まで送ってくれたこと。
帰り際に「今日は楽しかったです」と笑顔で言ってくれたこと。
それだけのことなのに、あの日からずっとあの人が頭から離れないでいる。
会社でも目で追ってしまい、目が合うと恥ずかしくて反らしてしまう。
あの人は相変わらず周りに人が賑わっていて、いつも楽しそうに笑っている。
胸がギュっと締め付けられるように痛くなった。
そんなある日、残業をして少し会社を出るのが遅くなり、外へ出るともう真っ暗になっていた。
ふと前を見ると、目の前にあの人が立っていた。
いつものように人懐っこい笑顔で私に手を振って近付いてきて、その笑顔を見た途端、私も自然と笑顔になった。
あの人は私をご飯に誘ってくれた。
予想外の展開に、私は動揺を隠せずにいた。
でもあの人の前だと自然と素でいられて、可愛い自分になれた。
仕事やプライベートの話、学生の時の話、色んな話をして、気付けばもう夜も遅くなっていた。
「そろそろ帰ろっか」と私が切り出した時、あの人の表情は突然曇った。
「先輩、実は僕…」とあの人は話し始めた。
あれから何時間経っただろう。
私は公園のベンチに座り、途方にくれていた。
大粒の涙で顔がぐちゃぐちゃになって、その場から動けずにいた。
「実は僕、結婚するんです」
その台詞が頭の中をぐるぐる駆け巡っていた。
私を食事に誘ったのは、私にいつも笑っていてほしいから。
いつも一人でいるから、気になってた。
もっと周りのみんなと仲良くしたら楽しいのに。
そんな内容だったと思う。
10コも下の後輩に心配されちゃった。
一人で勝手に舞い上がってバカみたい…
そう思ったと同時に、あの人のことを好きになってる自分に気付いた。
いや、本当はずっと前から気付いてたけど、恥ずかしくて気付かないふりをしていた。
1ヶ月後、あの人は結婚した。
相手は同じ職場の同期の可愛い女の子。
みんなに祝福されて、2人の幸せそうな笑顔が私の胸を苦しくさせた。
それから私はあの人に言われたように、なるべく笑顔でいることを心掛けた。
最初は不自然だったけど、だんだんと自然に笑顔でいられるようになった。
そして、私の周りにも少しずつ人が集まってくるようになって、私はひとりぼっちじゃなくなっていた。
あの人が私を変えてくれた。
ありがとう、そしてさようなら
あの時の私。
いかがでしたか?