小話 家族
小話01
「トリノがどこにもいないのーーーーーーー」
家に帰るとお袋が泣いている声が聞こえた。急いで向かうとうずくまりながら泣いているお袋がいた。
「母さん!一体何があったんだ!」
お袋が震えた手で一枚の紙を渡してきた。そこには、アルマンさんのところで働いているはずの末の弟トリノの名前と村を出るということが書かれていた。今まで職探しに苦労していたトリノにテイマーのスキルがあることが分かり喜んだのは昨日のことだ。末っ子らしくフラフラとしたトリノがやっと地に足をつけると思ったのに。
「大丈夫だ、母さん。トリノもそう遠くまで行っていないはずだ。少し捜せば見つかるだろう。」
同じ時に役場から帰ってきたミノリにトリノが村を出たから捜すように指示をし、泣いているお袋は親父に預けた。とりあえず俺はアルマンさんのところへ話を聞きに行くことにした。
「ええ!トリノいなくなっちゃったのか!?
最後に見たのは10の刻過ぎだな。鶏小屋で傷だらけになっちまってなー、牛も豚もなぜか興奮しちまって仕事になんねえからとりあえず家に帰ってもらったんだ。昼になったら相談しようと思ってたところでな。」
「トリノはテイマーのはずだ。そんなことがあるのか?テイマーって言えばモンスターに好かれるスキルのはずだが・・・」
「だからだよ。本当にトリノはテイマーのスキルがあったのか?神父が嘘ついてんじゃねえのか。」
「いや、他にもスキル持ちがこの村にいるがみんなちゃんとスキルを持っている。神父がトリノにだけ嘘をつくなんて考えにくい。」
しかし、もしトリノを哀れんで嘘をついたとも・・・。
長男の俺とトリノは12も年が離れている。3番目であるミノリとですら6つ離れている。そんなトリノが可愛くないはずがなかった。俺は生まれた時にはすでに親父の手伝いをしていたので少し距離ができてしまったがそんなのは関係ない。とにかくトリノを見つけて話をじっくり聞こう。そう思いトリノを探すため門の方へ向かった。
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あれから手を空けられるもの全員で捜したが見つからなかった。夕食の席は外よりも暗くかんじた。この辺は脅威となるモンスターがいないので死んでいることはないだろう。しかし、この辺はモンスターですら済まない土地。村から出てしまえば川も草もない大地があるだけだ。今日がよくても明日は?明日がよくても明後日は?方向を間違って町に着かなければ?馬で行って1週間かかるような距離だ。歩いていけば1月かかるだろう。そんな食料を持っているとも思えないし、確実に死んでしまう。
「おい、イチノリ。馬を飛ばして町まで行ってこい。ギルドに捜索願を出す。なぁに、途中で見つければ戻ってきても良い。どっちにせよ無駄にはならん。」
「分かった。それなら今すぐ支度をしていきます。」
「日が登ってからにしろ。トリノだって夜には寝るだろうよ。馬で行けば十分追いつくはずだ。」
フタノリがお袋に代わって作ったしょっぱいポトフを無理やり流し込みながらトリノが無事であることをただただ祈った。
見つかるはずないよ。だってトリノは反対方向に行ってるんだから。
イチノリはトリノと遊んだことが無いので方向音痴を知らない。
トリノはマイクラで迷子になって自殺するタイプ。