02 旅の途中(迷子)
02
もう駄目だ。
森を歩き続けて抜けるのに5日、森を抜けてから3日。一向に街は見えず、見渡す限りの荒地。木や川すらなく果てしなく続く青と茶色。
水筒の水は半分を下回っていて木の実が3つナップサックに入っている。
確か街には貴族がいたはず・・・。それなら塀があるから遠くから見えるはずだけど見えない。今日中に街につかなかったら俺はきっと・・・。
「死にたくない」その一心で足を動かし続ける。
どれだけ時間がたったのかわからない。家にある時計の一つでも持って来ればよかった。
とうとう日が傾き出してきた。もう少し歩けば塀が見えるかもしれない。塀の近くで死んでいたなんて嫌だ。そんな情けない死に方したくない。
日が完全に落ちてからも歩き続けたが景色は変わらない。
眠くなってきたので木の実1個を食べて寝た。
太陽の眩しさに目が覚めた。
これだけ歩いても誰にも会わないというのはおかしいんじゃないか?森ではちょくちょく見たスライムもいないしここは相当やばいところなんじゃないんだろうか・・・。
もう、どこを見ても景色は変わらない。歩くしかないのだ。
木の実を1個食べて歩きだす。足は棒のようになっていて動かしにくいし地面で寝ているから体はボキボキ音を鳴らしている。
目が映し出す光景は何一つ変わらず本当に歩いているのかすらわからない。ひたすら歩き続けてまた夜がやって来た。
足はとうの昔に悲鳴を上げている。しかし、ここで寝てしまえば二度と起きることはないのかもしれない。そう思うと休むに休めず必死に歩き続ける。
最初は嘘かと思った。モンスターの罠かもしれない。だけど、それはそこにあった。実のつけたアポウの木だ!
やった!食料だ!嬉しさのあまり木に抱きついてしまったがそれは仕方ない。俺はそれほど嬉しかった。生まれて初めて神を信じた!!
「神様、ありがとーーーー」
ひとしきり叫んだ後、ナップサックに入れていた木の実を食べて気の根を枕にして寝た。その日は久々にいい夢を見たような気がした。
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朝、目を覚ますと目の前にスライムがいた。
「おはよう」
つい、挨拶をしてしまった・・・。スライム相手に何してんだ、俺。
挨拶をしたからか(?)スライムは攻撃をしてこない。
見つめ(?)あっているといきなりスライムがミョーンと伸びた。そしてアポウを3つ食べて3つ取り込んだ。そして取り込んだ3つのアポウを呆然としている俺の膝の上に置いた。
「俺にくれるのか?」
スライムはちょっと揺れた。
許可してるってことでいいんだよな?
アポウを一口食べる。スライムは攻撃してこない。そのまま食べ続ける。人の手で育てたものより味は薄かったが食べられるだけありがたかった。
久しぶりにお腹いっぱい食べた。あの後結局足りなくてスライムがもう一度くれた3個のうち2個も食べた。
残った1個ともう一度取ってもらった3個のアポをはナップサックの中に入れた。
「アポウを取って来れてありがとうな、スライム。」
スライムはちょっと揺れた。「どういたしまして」と言っているのだろうか。
なんだかこのスライムがとても可愛く見えてきた。
スライムを見て癒されているとスライムがミョーンと伸びながら移動を始めた。
おかしい。
普通スライムはポムポムと跳ねるように移動するのだ。このスライムが特別なのか?いや、でもアポウ取るときは普通に歩いていたよな・・・
俺がその場で立ち止まっているとスライムが俺のところまで戻ってきた。かわいい。
そして俺のズボンのベルトを取り込みながらちょっとだけ飛び跳ねる。
もしかして街まで連れっててくれるのか?なんていいやつなんだ!
もちろん、俺はお前に着いて行くぞ!
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わたしはスライムが好きです。