01 トリノ
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俺はトリノ。タダヒロ村の四男だ。これといった特徴も無くありふれた黒髪黒目の15の若者だ。12の時から職探しをしているが何をやっても駄目で成人するこの年まで無職だ。村長の息子でよかった。
そんな俺に朗報があったのが一昨日の成人式。神父曰く、なんと俺はテイマーのスキルがあったのだ!スキルというのは成人するまでに現れる神様からの贈り物だ。10人に1人の割合で現れる。テイマーのスキルなんてよくあるスキルで、生き物と仲良くなりやすい効果があって1人につき1匹モンスターと契約することができるスキルだ。
うちの村では牛やら豚やら鶏を育てているから仕事先はある。明日からアルマンさんとこの牧場で働く予定だ。
スキルがあると知ってから母さんは「やっとトリノが仕事をするようになるわ。」と嬉しそうだ。父さんに至っては成人式が終わってすぐにアルマンさんのところに行って俺を働かせてくれるようにお願いしに行った。村長の後を継ぐ長男のイチノリ兄さんは「よかったなぁ、よかったなぁ」と会うたびに頭を撫でてくる。大工をしている次男のフタノリ兄さんと役人している三男のミノリ兄さんはスープの肉(小)をくれた。
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「アルマンさん、今日からよろしくお願いします!」
「ああ、よろしくね」
鶏小屋連れて行ってもらった。鶏が上下2段にいる。入ると一気に獣臭い匂いと鶏の殺気を帯びた大合唱が聞こえた。
「あれ、おかしいなー。いつもは知らない奴が入ってもこんなに興奮しないのに・・・。まあ、とりあえず藁を変えてもらうよ。」
「は、はい。」
一通りの説明を聞き作業に取り掛かる。鶏を掴もうとするが、全然掴めない。手を近づけるとすごい勢いで突いてくる。
「ゴゲエエエエエエエォォゴゲエエエエエエエ!」
「うわっ痛っ!ちょ、タタタタタタッ・・・え!上からもかよ!!!」
下にいる鶏を掴もうとしたら上にいる奴らが俺に向かって落ちてきやがった。なんなんだよーもー。アルマンさんすげえわ尊敬するわー。うわっ手から血が出てるし・・・。
「外まで聞こえているけど大丈夫かー・・・っておい!!大丈夫かトリノ?ほらっお前らあっち行け!」
「っぐす・・すびまぜん・・・」
アルマンさんがすぐに助けにきてくれたおかげで肉を抉られずに済んだ・・・。それほどあいつらの目はやばかった。
「ほれ、泣くな。傷を水で洗いに行くぞ。」
「あ“い”」
その後、牛舎と豚舎にも行ったが結果はいうまでもない。どちらも全速力で俺に向かってきやがった。なんとかアルマンさんの家に避難するも時すでに遅く中の仕切りや餌入れなどが壊れていた。もちろん俺はクビだ。この村で俺のできる仕事はなかった。家族の悲しむ顔が目に浮かぶ。お昼よりも前の10の刻と11の刻の間。家に誰もいないこの時間ならば気づかれずに村から出ることができる。穀潰しがいなくなってみんな清々するだろう。
家に戻ると早かった。パン3つと干し肉を3枚、後は水筒に水をたっぷり入れ服と下着を1着ずつナップサックに入れる。腰には念の為ナイフを挿しておいた。「今までお世話になりました。街で仕事を探します。 トリノ」書き置きをテーブルの上に置いておく。そして門ではなく村の周りの柵にある非常口から出る。街はは森の外にあるのでとりあえず森に出るまで歩き続ける。大丈夫、森の中には木の実が生えているし川もある。馬車で3日ぐらいらしいからきっとすぐに着くだろう。
「バイバイ、みんな」
みんなにこれ以上迷惑かけないと思うとホッとするがそれ以上に鼻がつーんとした。
スタートダッシュ予約投稿。
トリノは普通の少年という設定。