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14 祭り2日目

評価とブックマークありがとうございます。

14


あの後、食べ過ぎて午後はうつらうつらとしてしまったがなんとかやり過ごせた。そして夜はくり抜いたパンの中にトマトの塩漬けと鶏肉を煮込んだものを食べた。この日の食費銀1枚ちょっと。ま、祭りだからしょうがないよね!!



「はい、どうぞ!」


もちろん今日は食べ歩く!というわけで、さっそくサアモンポテトを食べる。大量の油と少しの塩で調理したしっとりとしたサアモンと輪切りのホクホクとしたポテートを片手に街を練り歩く。




「さあさあ、これほど綺麗な布は滅多に手に入らないよ!」


「お姉さん、見てって頂戴な。この絨毯の丁寧さといったら!少し高いけど損はさせないよ!」


「遠路遥々やってきた!こちらの奇妙な置物は首都より向こうの遠い村!砂の多いその土地で、信仰される子守の像。お母さんお父さんどうですか!!」


「何に使うか分からない?なんとこちらは楽器なのです!弾いて弾く新しいタイプの楽器です!!気難しい職人が鍵盤の一本一本丁寧に作りました。」


「お貴族様でも使う綺麗な布。もし良ければどうですか?家が華やかになりますよ。」



どこかの村の名産の不思議な像や色鮮やかな布、絨毯。何に使うものかわからないものを見ながら歩いていく。手で食べているので触れないが見ているだけでも楽しい。


「ちょっといいかな?」


後ろから声をかけられた。見たところ同い年ぐらいの学園の生徒だった。金持ち商人というよりは貴族だろう。なんか上品オーラが出ている。


「きみの持っているその料理はどこにあったんだい?同じように持っている人を多く見かけてね。食べたくなってしまったんだ。」


「はあ。下から2番目の通りの八百屋・・・野菜の売っている店の前の露店ですよ。」


「2番目の通りか・・・。その辺は分からなくてね、きみが良ければ案内してくれないかい?」


「しかしっ・・・」


声をかけてきたのであろう金髪青目のキラキラ貴族様が俺に案内しろと言ってきた。後ろの赤髪緑目の男が止めようとしてくれたが片手で制されてしまった。強くは出れないらしい。助けを求めても無駄なんだろう。貴族の申し出は平民の俺は断れない。仕方なく案内することにした。


「まあ、大丈夫です。」


「そうかい、ありがとう。」


にこやかな金髪と睨み付ける赤髪。対照的な2人とおさらばするためにさっさと案内することにした。




「僕はダリー。こっちの怖い顔はエド。僕たちは学園の生徒なんだけどね、街の方が面白いから抜け出してきたんだ。結構そういう生徒はいるんだよ?」


「はあ、そうなんですね。」


「学園祭なんて言うけどほとんど発表するだけで後はパーティーが行われるだけ。結構つまらないんだよ。祭りとは程遠いものなんだ。」


「はあ。」


ダリー様が話して俺が相槌を打つ。エド様は何も言わずついてくるだけ。エド様はおそらく部下だ。貴族を部下にする貴族。ダリー様は只者ではないのだろう。


胃がキリキリするような時間は案外すぐ終わった。ホッとして帰ろうとする俺をダリー様は呼び止める。


「もしよければこのまま一緒に回らないかい?男2人で華はないけど1人で回るよりはマシだろう。」


エド様の顔がもっと怖くなっていく。これは断った方がいいのだろう。


「あ、はい。大丈夫デス。」


すみませんエド様。すっごく高貴そうなダリー様には逆らえません。




「見ろ、あれはなんなんだ!?」


「ダリ様、少々お待ちを。私が買ってきます。」


「ああ、任せたよ」


「あの、俺も行きます」


くっ痛い出費だが1人食べないよりはマシだろう。


「いいえ付き合わせているのはむしろこちらの方。お代は私たちが払いましょう。」


「えっ・・・あ、ありがとうございます」


お、おう。奢ってくれるなんてそういう自覚はあるのか?それなら助けてほしい・・・。


エド様が買ってきたものは薄いパンのようなものに砂糖とバター(高級品)を塗ったクレープというものらしかった。


「ほぅ、具がないから素っ気ないかと思ったがこれはこれでいいな〜」


「そうですね。ですが、このことはどうかご内密に。」


「わかっている。おや、ついているよ。」


この背徳的な味に夢中になっていたせいでえっというより早く、口の端についていたバターをキラキラしているハンカチで拭われてしまった。


「おいしいかい?」


「は、はい!」


なんて自然に行うんだ!!きっと女からモテるに違いない。

ほれ見ろ、エド様の顔を。あまりのタラシっぷりにびっくりしているぞ。



「行列ができているぞ!きっと美味しいものに違いない!!」


クレープを食べ終わったダリ様は早速新しいものを見つけたようですぐに走っていった。見た目とは違い彼が同じ人間であることを認識させられる。そこで売っていたものは魔導師が作っている摩訶不思議な白い物体だった。

俺が遠目にそれを見ていると、既に買い終えたエド様が俺たちにアイスをくれた。速っ!!いつのまに・・・。


「はい、どうぞ。スライムくんはスプーンはいらないかな?」


マルコが嬉しそうに受け取る。エド様のさらっとした優しさにトリノキュンキュンしちゃうですっ!!さっきもそうだけどちゃんとマルコの分も買ってきてくれるエド様やばい・・・。


「すみません。あ、ありがとうございます。マルコの分まで・・・」


「いいえ。で・・・ダリ様にお付き合いいただいているのですから当然です。」


くっ・・・、なんていい人なんだ。ここまでされたら最後まで付き合うしかない。

このアイスクリームというのは、冷たくて滑らかでところどころシャリシャリしててとても濃厚で面白い食べ物?だ。


「まったく、がくえんのせいとがこんなところであきないをしているなんて・・・。」


あ、学園の生徒だったんだ・・・。


「こんなところで海のものが売っているぞ!」


「お待ち下さい、で・・ダリー様!!」


「あの、こんな人混みではしゃがないでください、迷子になっちゃいますよ!」


相変わらずキラキラした顔で祭りをまわるダリ様。それに続くように人の間を駆け抜けていった。思わず言ってしまったが怒られずによかった。貴族が起こったら何をされるものかわかったもんじゃないからな。

またもエド様に買ってもらい海鮮串を食べた。野菜やタコや貝など色々なものが刺さっていて食べていて楽しかった。


「海にはね、そのスライムぐらいの大きさの大きな貝があってね。その貝の身なんだよ。」


この貝はホタテイというらしくとっても美味しかった。


連れ回されるようにダリー様についていきながら祭りを楽しんだ。

薄いパンのようなものに砂糖とバター(高級品)を塗ったクレープ。魔法使いが売っていた牛乳と砂糖と卵を混ぜて作ったアイス。秋に食べるには少し寒かったがそれでも美味しかった。

1番目の通りの串焼きなんかは物珍しそうで不思議そうな顔をして食べていたのでちょっと笑ってしまったのは内緒だ。

そして、お代は全て連れ回したお詫びとしてエド様が払ってくれた。どれも俺が手を出すには高いものだったのでお金を出してもらい正直ありがたかった。しかもマルコの分まで。

ダリー様は話すが上手で講義の内容や俺が言ったことのない海や首都の話などいろいろなことを聞かせてもらった。それに付け足すように説明してくれるエド様は顔が怖いだけでとてもいい人だった。


こうして俺の初めての祭りは終わったのだった。

楽しかった祭り回は終わりました。

新キャラを投入しましたが男です。女の子がいないのが最近の悩みです。(増やす気はないけど)

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