12 研究
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「・・・ていうことがあったんですよー」
「ふむふむ、そうだったのか」
研究室でまったりとヨウカンのような薄緑色のお茶を飲みながらこの前あったことを話していた。マグワースさんはそこから考え込み何も話さなくなった。
この緑のお茶、渋いけどちょうどよくいい渋みでなかなかに好きだ。マルコのかわいいお口には合わないようで砂糖を入れている。そのときのマグワースさんの表情は悲しげだった。
マグワースさんはいきなりカッと目を開き早口で言った。
「普通、家畜どもを進化させるには生えている薬草を使う。マルコくんにも食べさせただろう?しかし家畜と同じ量を食べさせても進化はしなかった。
先ほどのお話のスライムヨウカンくんだったかな?その子はグランウルフを食べて進化した。
つまり、進化するための条件が違うということじゃ。これはこれは新発見じゃのう。そして魔力には2種類、もしくはそれ以上の種類があるようじゃ。
食物性の魔力とモンスター性の魔力とでも言おうか。最低でもこの2つはあるということじゃ。そして、モンスターによっては己の糧にできる魔力が決まっていると考えられる。
それならそれで薬などの調合にも説明がつく。
これはこれは大発見じゃのう。」
ハッハッハッハと笑ったあとにため息をついた。忙しい人だ。
「まったく、これは仮定だが違う可能性の方が少ないじゃろう。上から研究結果を挙げろと言われているのじゃ。やるしかあるまいなぁ」
勝手に1人で納得した。俺にも少しは教えて欲しい。まったく俺はここの生徒のように頭は良くないんだ。ぶつぶつと独り言を話しているマグワースさんを軽く睨み付ける。
「よし、それではまず1つの仮説を検証するとしよう。研究室の前の庭に移動しといてくれ。わしは少々準備をするからの。」
「あ、はい。」
そう言ってお茶を一気飲みし足早に去っていった。今日のマグワースさんは珍しく元気なようだ。いつものんびりとしいる感じが微塵もなかった。俺たちはぬるくなったお茶を飲みのんびりと中庭へ向かった。
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中庭は実験に使っている場所だ。きちんと管理された芝生ときれいな花、薬草がちらほらと咲いている。土と日の日は他の人たちも休みなようで人はあまりいない。遠くに聞こえる物騒な魔法の音ももうすでに慣れてしまっている。
賑やかな音がこちらに近づいてきた。マグワースさんとフランくんだ。
フランくんはコールダックス男爵の家の長男様で真面目な15歳だ。俺をマグワースさんに紹介した張本人である。頼み事は断れないのか休みの日でもあるのにたまに研究を手伝ってくれる。ちなみに、最初は様付けだったのだが
「そういうの慣れてないから普通に呼んでよ。貴族と言っても末端だし・・・」
という本人の希望でフランくんと呼んでいる。さすがに呼び捨てはできなかった。外ではちゃんと様付けしますけどね!
ラビビットの入った檻を持ってきた。大きな赤い一つ目がかわいい。あ、もちろんマルコが1番だ!これは断じて浮気とかそういうものではないから!え?わかってるって。さすが俺の天使!
「今日も同じように食べてもらうわけだが、ちょっと違うぞ。ラビビットつまりはモンスターを食べてもらおうと言うわけじゃ。モンスターを食べることによって魔力が上がるかどうかの実験じゃな。
今までの薬品、草花や薬草であまり変わりはなかったがヨウカンくんのようにモンスターを食べてもらえば大きく動くのではないか。それを確かめようというわけなのじゃ。」
「つまり、薬草で進化するタイプの子とモンスターで進化するタイプに分かれてるかもしれないから試してみよう!ってことだよ。」
フランくんありがとう。きみはとっても頭が良いのになんで毎回試験に落ちているのかわからないよ。
「マルコくん、檻の中へ来てもらえるかい?」
マルコは俺の頭の上から綺麗に降りて檻の中へ行った。ラビビットは草を食べる臆病な性格なので安心して送り出せた。近くの森にそこそこ居てすぐに逃げてしまうので捕まえるのは大変難しかった。ラビビットには悪いがマルコの糧となってもらう。
マルコはあの小難しい話を理解していたのか檻に入ると逃げようとするラビビットをしっかりと包みこみ食べていく。マルコと変わらないくらいの大きさだったので1時間ほどで食べ終わった。何事もなくてよかった。マルコは進化しなかった。
「ふむ、さすがにそううまくはいかないのう。グランウルフとラビビットは核の大きさもだいぶ違うから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないな。急がずやっていくとするか。」
その日マルコは3匹のラビビットを食べたが進化することはなかった。
主人公が魔法使わないのに魔力を詳しくしすぎました。完全予想外。
フランくんもね!!
ラビビット 白くて赤い一つ目が特徴のウサギ




