小話02 ポンジの話
小話02
ポンジの家はそこそこ大きい商会です。首都にも店を持ち従業員は1000人もいました。
ポンジはその商会の会長の次男坊として生まれました。周りの大人たちはポンジは兄を支えるようなもしくは兄と並び立つほど優秀な商人になるに違いないと思っていました。ポンジの祖父は商会をつくり、その息子である現会長は主都に大きな店を出すほど商会を成長させ、長男であるデイリーはまだ5歳だが既に商人としてのの才能を垣間見せていました。
ポンジは幼い時から商人になるための十分な教育を受けていました。そしてそれに応えられるように努力を惜しまなかったのです。
けれど、ポンジは期待に応えられません。普通の子供よりは知識もあるし物事を見る目もあります。全く問題はないのです。ただ特別にはなれませんでした。ただそれだけでした。
優秀な兄と非才の弟。
周りから比べられていたポンジが家に寄り付かなくなるのは当たり前のことでした。教育のおかげか悪いものには関わらず近所の同年代の子と街で遊んでいることが多くなりました。
そして12歳になり見習いとして商会で働くようになりました。5つ上の兄は既に見習いを終え次期会長として立派に仕事をこなしています。どうしても商会の中では哀れみと嘲笑の眼を向けられることが多かったです。けれど、不幸せではありませんでした。会長である父親は他の者にポンジに店の経営を教えたり商品を見させたりしていたからです。才はなくともポンジの頑張りや誠実さを認めていたからでした。
気弱であまり表情の変わらないという商人には向かないポンジだったが平民向けの店の売り上げを上げるなどそれなりに成果は出していました。最前線の貴族向けで成果を出す兄、確かな信頼で平民向けの店を取り仕切る弟。もう、彼を憐れむものも陰で笑うものもいなくなりました。
そんなある日、首都で大事件が起こります。
一晩で現れた巨大スライムが川を塞いでいたのです。
事態を知るために川へ向かったポンジ。そこには家よりも大きな城と同じくらいの大きさのスライムがいたのでした。兵士が地道に刺したり切ったりしているが大きすぎるが故に全く効いていません。そして痛みに耐えかね動こうものならば波止場をいくつも壊しました。
もうどうすることもできず人もスライムもどうすることもできず一週間経ちました。
船で物を運ぶことができず道路は馬車で溢れあちらこちらで喧嘩が絶えず起こっていました。しかしその後、スライムは何処かへ消えていきました。
野生のモンスターはそんなもんか、と街の人は思いました。もちろんポンジも。
ある日の夜。
ポンジが店の鍵をかけ終わり家に帰る途中の小道。怒鳴り声を上げる兄がいました。何事かと思い駆け寄るとスライムをいじめていました。
ポンジは驚きました。兄は期待に応えられるほどの才能もあり周りに認められている完璧な人間だと思っていたからです。
「この野郎!!お前のせいでどれほど俺が頭を下げたと思っているんだ!」
ちょうど社交シーズンの前だったので兄デイリーは大変苦労したのです。他の商人も同じように苦労していたわけですけどね。
声はどんどん大きくなっていき、思わずポンジは飛び出しスライムを庇いました。元の完璧な兄に戻ってくれるようポンジは願いました。
「お前もムカつくんだよ!遊んでたくせに親父に認められやがって!!俺は遊んだことは一度もなかったのに、母さんもなにも言わねえしよぉ」
とうとう祈り虚しく警備兵が来てしましました。デイリーは警備兵に連れていかれていきました。ポンジはそのままスライムを連れて警備兵と家に帰っていきました。
警備兵からことの話を聞いた家は上へ下への大騒ぎ。現行犯逮捕なので1週間後には暴力罪として5年間の強制労働させられます。商会は後継がいなくなってしまうのと同時に信頼も失いました。もう、首都で商いをすることはできません。ポンジもあの店を閉めなければいけなくなりました。
ポンジは自由になりました?もう、商会も優秀な兄もいなくなったのですから。
(これから何をしよう)
手に残ったのは強気なスライムと街の友達と顔馴染み。空っぽのポンジは遠くに行くことにしました。
「どこか遠くへ連れていって」
そうスライムに言うと任せろと言うように力強く揺れました。
「そうだ、キミに名前をあげよう。」
なんとなく一緒にいるこのスライムに名前を、契約をすることにしました。
(契約するモンスターには食べ物の名前をつけるんだっけ)
「キミはヨウカン。プルプルしてるからヨウカンね」
一瞬驚いた後仕方ないなーと笑い受け入れました。
私の息抜きです。
商会のその後も兄のその後も考えてないです。すみません。
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