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11 ヨウカン

11


オレの名前はヨウカン。ポンジの相棒だ。


ポンジを忌々しいあの家から連れ出しこのゴミ処理場で働いて8年。長かった気がするが過ぎてしまえばあっという間で、一緒に働いたハイテンションジジイも死に新しいやつが入ってきてオレらに後輩ができた。


人のトリノとスライムのマルコだ。こいつらはジジイが死んでクソほど忙しかった時に入ってきたやつらだ。おかげでポンジの目や話し方が戻ってちょっと泣いたのはここだけの話だ。

ボサっとしたトリノはポンジと同じタイプかと思ったが違った。こいつはあのハイテンションジジイと同じ変なやつだ。まだ、毎朝歌わないだけましだがいつか歌い出すに違いない。マルコの方はまだ若いらしく見ていて危なっかしい。


「おい、マルコ。お前ら変なこと始めたって本当かよ」


「変なこと?おじいちゃんのところでお手伝いしていることかな?」


「は?おじいちゃん?なんの手伝いしてるわけ?」


「えっとねー、いろんなもの食べて魔力の量を調べているの!」


「やべえやつじゃん!!」


あいつはオレの想像を超えていた。ジジイは歌ったり踊ったりするだけで害はない。


「おいしいごはんも食べられるんだよー」


「そういう問題じゃねえんだっ!!」


オレがこいつを守らないと・・・






##########






俺とポンジさんがお昼ご飯を食べ終わりゴミ処理場に戻るとマルコとヨウカンがいなくなっていた。こころが鉄になったみたいだ。ポンジさんは慌ててギルドマスターに知らせに行った。ゴミ処理場は出ようと思えば出れる設計になっていて出るのは難しくない。どこに行ったのか全然わからない!


「トリノくん、マスターに報告したから今日は早めに閉めて2人を探しに行こう。」


急いでスライムたちを桶の中に入れ街へ駆け出した。1の刻ほど探したが愛らしい姿を見つけることはできなかった。


「アレをするしかないか・・・」


説明しよう!!

テイマーのスキルには大きく分けて2つの能力がある。1つは『統率』。通常の状態のモンスターに指示を出せる能力。もう1つが『従属』。モンスターに同意を得て名前をつける能力である。名前があるモンスターはそうでない個体に比べて進化しやすいという特徴がある。そして、魔力を通してモンスターの位置の把握することができる。しかし、位置確認は多くの魔力を消費しうえに平民は自分の魔力量を知らない。そのため、人によっては命の危険が伴うため実行するのは最終手段とされている。

そう!つまりポンジは最終手段の位置確認を行おうとしているのである!


「ポンジさん・・・でも、」


「仕方ないよ。僕たちは今日中に見つけ出し報告しなきゃいけない。処理場を早い時間に閉めさせてくれたんだ。さすがに午後全部使って見つかりませんでしたとは言えないだろ。」


「そうですけど・・・」


「大丈夫。僕は前にも位置確認をやったことはあるから。」


ポンジさんはそう言って目を閉じて勝手に始めてしまった。話を聞いただけでやり方を知らず棒立ちをしている俺と目を閉じてボソボソと喋るポンジさんの周りにちょっとした円ができてしまった。穴があったら是非とも入らせてくれ。


ポンジさんが怖い顔で目を開けた。


「トリノくん、門まで走るよ。」






############






「ねえねえ、どこに行くの〜?」


無駄だとは思うがオレとマルコはこの街の外に出ることにした。何台もこの街に出入りする馬車の中に紛れ込めば誰にも気づかれることなく出られるだろう。オレたちがいなくなるのがわかるお昼終わりまでに外に出なきゃ!


「ちょっと探し物探しに行くだけだ。大丈夫だって、ほらあの馬車に乗るぞ」


音の重い馬車にふたりで忍び込む。音が軽いとすぐに音が変わってバレちまう。馬車は門番の検問を難なく通りすぎそのまま草原の中を走っていく。検問が終わってすぐに降りその背を見送った。


「ぼくね、草原に来るの久しぶりなんだ〜。トリノと一緒になる前はよくきてたんだよ。」


「そうかそうか。それじゃああの茂みの方で探し物をするぞ。光るものあったら見せてくれ。」


「はーい!」


素直に従うマルコを視界にいれながらため息をつく。

本当は、ふたりで逃亡なんてするつもりなんてない。出来なくはないが、それでは実験を止めるという目的が果たせないからだ。スライムなんて探せばいくらでもいるしこいつじゃなくてもいいはずだ。だからと言って同胞を見捨てるわけにもいかない。オレがこうやって行動を起こせばポンジが何か考えとってくれるはず。


「見て見てー、きれいなお花みつけたよ!」


「ほら、キラキラ!!石だけどピカピカしてるんだー」


「この実はねかたいけどタネが甘くておいしいんだよ」


オレたちはそれから門からあまり遠くないあたりをフラフラとしていた。日も傾いて空の色も少しずつ変わってきている。もしかしたらポンジはオレたちを探す気がないのかもしれない・・・






ガルルルルルルル







「ヨウカンーーーーにげてにげて!グランウルフがいるよ!!!」


「は?グランウルフだと!?

こんな人の多いところにいるわけねえだろ。


ウカ“ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“


はいはいはいはい、すみませんでしたーーー疑ってすみませんでしたーーー!!さっさと門のところまで逃げるぞ!!」


ちくしょうっ!外壁の外に出ただけなのにこんな目に合うんだよ。足のあるやつの方が早いのは百も承知。追いつかれる前になんとかしなくては。グランウルフを倒せるわけねえしどうすれば・・・


「おい、門が見えて来たぞ!あと少しだ頑張れ!!」


やっと草原を抜けて人が行き来する場所に出た。勢いよく飛び出した俺たちに驚いた人間を尻目に門の方へ走っていく。他の奴らなんか知ったことか!


「おい、マルコ生きてるか!」


「だいじょーぶー」


「よかった、それなら   ポンジッ!!!」


なんでこんなタイミングで来るんだよ!そんでなんでこっちに向かってくるんだ、グランウルフが追って来ているのに!!



「こっちに来るんじゃねえ、馬鹿!!」


声は届かずこっちに走って来ている。当たりまえだ、同じ種族でしか話せないのだから。


「ヨウカン、無事でよかった・・・。何があったか知らないが街へ戻ろう。ギルドマスターも心配しているよ。」


そうだけどそうじゃねえんだ。早くここから退かねえと!




グア“ア“ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア





ちくしょう。オレのせいで


こんなことになるんだったら、




「ヨウカン・・・・・・・・・」




オレはグランウルフに覆い被さった。スライムにはこうして“食べる”ことしかできない。



痛い。



抵抗するグランウルフがオレの身体をちぎっていく。


オレも負けじと消化液をたくさん出した。毛が溶けて皮が溶け始めた。

肉は、溶かしにくい。でも、溶かすしかない。あいつらを守らなければいけないんだから。






騒がしい音が聞こえる。やっと門の兵士が仲間を呼んできたようだ。ポンジが叫んでいる声が聞こえてきた。あいつ、そんなに声出るのかよ。初めて聞いたよお前のそんな声。


ジリジリと気が遠くなるほど長い時間をかけて消化していった。やっとのことでグランウルフは死んだ。マルコには悪いがもったいなかったので最後まで溶かすことにした。






##########






「ポンジさん、危ないから離れてください!!」


「なんで、なんで誰もあいつを助けないんだ!何のための剣なんだよ!!」





俺とポンジさんはあの後ふたりのいる場所へ向かうために門を出た。幸いなことにすぐにスライムたちが見つかった。ポンジさんは怒る気満々という顔で走っていく。俺は俺で怒るつもりだけど見つかった安心感があるからか怒りは多くはない。

だけど、様子がおかしい。動きが見たこともないくらい速い。いつものまるいぽよぽよちゃんが、シュッとしてシュッと動いている。先を走るシュッとしたマルコが俺にそのまま飛び込んできた。


「グフッ」


マルコは慌てた様子で倒れている俺を引っ張ってくる。


「お、おいどうしたんだよ!?」




ガアアアアアアアアア




モンスターの声に驚きあたりを見回すとポンジさんたちの前にはやばそうなモンスターがいた。ヨウカンがすぐさま飛び出しモンスターを包んだ。そしてモンスターと羊羹の取っ組み合いが始まったのだ。



「マルコたちはこれから逃げてきたのか?」


すごい速さでマルコは上下する。

モンスターの声を聞いて門の兵士たちが慌ただしく動いている。気づくとさっきまでいた馬車の姿は無く代わりに多くの兵士が立っていた。





ヨウカンがグランウルフを相手にしている間にポンジさんは兵士に引っ張られるようにして門の側に連れてこられた。マルコに助けに行くようにお願いしたがプルプルと横に揺れるだけだった。なにかスライム同士の決まりごとがあるのか?

今は俺と兵士でポンジさんを押さえているがポンジさんのいうことは的を得ていた。


「あの、なんで助けに入らないんですか?ほら、こんなに兵士さんがいるならすぐに終わるんじゃ・・・」



「できることならしてあげたいけどスライムとグランウルフは魔法で倒すのが普通だろ?スライムに物理攻撃は効かないしグランウルフは硬くて目に見える傷一つつけるのでも一苦労。スライムは殺さないほうがいいんだろ?だから俺たちができることはないんだよ。」


まあ、グランウルフなんて最近は討伐がないけど。めんどくさそうにそう呟いたため息を吐かれた。








ポンジさんを宥めながらヨウカンの激戦が終わるのを待っていた。日は完全に暮れ辺りは真っ暗になった。兵士が持っている松明がキラキラと近くを照らしている。

ヨウカンの近くにいた兵士が叫んだ。


「グランウルフ魔力反応無くなりました!スライムが勝ちました!!」


大きな歓声が夜の空へ吸い込まれヨウカンは大きく光った。

え!?なんで???


「ヨウカンッ!!」


1番に動いたのはポンジさんだった。あんなに暴れていたのによくそんな元気あるなと思いつつ走っていくポンジさんを追う。


ポンジさんとヨウカンの感動的な再会・・・・・・かと思いきやヨウカンが光った。

信じてくれ、嘘は言ってない。本当にヨウカンが光ったんだ。光ったヨウカンは薄緑色になっている。え、これって進化ですか?



いつも、説明ばっかりしていますね。

ヨウカンは兄貴みたいなかんじです。

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