10 協力者
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「おお、君か。フランが言っていたモンスターに興味のある若者というのは。」
いつもと同じように図書館で本を読んでいると暑そうな長いロープを着た爺さんが話しかけてきた。図書館で人に話しかけられるのは初めてだったのでびっくりしている俺にはお構いなしに隣に座ってきやがった。
「スライムを連れているということはギルドで働いているのかね。」
「はい、そうですがあなたは?」
「わしはマグワース・グレンタール。ここで教師をしている老いぼれよ。」
「は、はぁ・・・。学園の教師がなんで俺なんかに?」
教師つまりは頭が良い奴らにものを教えるもっと頭のいい奴。しかも、王城勤めの次に稼いでる人間。やはり、こういうところに通うのはあまり良くないのか。俺以外の街の人見なかったのもそういう理由だったのか・・・。
「そうだな・・・ここで話していては図書館の奴らに追い払われるのも時間の問題だろう。わしの研究室に来るといい。茶を出すことしかできないがどうかな?」
学園の中!?
この爺さん大丈夫か?変な薬飲まされるとか、魔法の実験台にされるとか剣の試し斬りに使われちゃったりなたったりしちゃうんじゃないんですかーーーーーー!! こっわ。
「えーと・・・スライムいますけど大丈夫ですか?」
あーー、何聞いてるんだよ俺ッ!スライムなんてスパッと殺せるわ。居てもいなくても関係ねえよ!
「大丈夫だよ。むしろスライムと一緒に来てもらいたいぐらいだね。」
わかった!マルコ目当てだ!!確かにマルコのフォルムはスライムの中ではいっとう美しく完成されていて、心は神の如く優しく美しくできている。凄く頭のいい人間なんだ。見ただけでその素晴らしさがわかるのだろう。
「いいですとも。スライムについて熱く語りましょう!」
「館内ではお静かにお願いします。」
「はい・・・」
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学園の中はとてもすごかった。綺麗に揃えられた草木に見たことない花が大輪を咲かせ我が物顔でそこに居座っている。俺は花にすら負けている。なんか街に戻りたくなった。夏の陽が反射して白く輝いているような綺麗な建物の中に入って教師様についていく。青のような灰色のような緑のような不思議な色の廊下を進んでいき奥の部屋へ着いた。
「少し埃っぽいが我慢してくれよ。なんせうちは一番小さい研究室なんでね。」
教師殿は懐から鍵を取り出し扉を開けた。中は薄暗く乱雑に積まれた本と机と来客用の低いテーブルと長椅子がある。パッと見た感じ棚の分を抜いても俺の家以上の広さはある。悔しい。
「ああ、てきとうに座ってくれてかまわないよ。ちょっと待っててね、お茶入れるから。」
「あ、お構いなく」
マルコが間違って本を食べないように膝の上でおとなしくしてもらっている。もちろん、そんなことをしないとは思うけど念のためだ。やばい、見るものすべてが高いものに見えてきた。
「さて、お茶も入れたところだし話をしよう。」
「はい・・・。あ、俺はトリノです。こいつはスライムのマルコです。すいません名乗るの遅くなちゃって」
「いや、かまわないよ。マグワースさんと呼んでくれ。わたしはね、学園でモンスターについて研究してるんだよ。知っての通りこの研究は調べつくされていてね。もう、研究しているは私ぐらいだ。」
「あの、マグワース、さん。進化ってどうやったらなるんですか?図書館の本で調べても載ってなくて・・・」
「あそこにはそこまで専門的な本は置いておらんよ。では、わたしが説明しよう。
まずはモンスターの説明からはじめるとしよう。
モンスターとは核という命の結晶があるものをそう呼ぶ。人ときのこ以外の生きているものは大きさは違えど核が出る。
そして進化は、核の質が上がることで生き物として成長することをいう。
わかったかな?」
「なんとなくは・・・」
えーと、命の結晶の質が上がると進化するってことかな?
「ふむ、よろしい。
核の質を上げるには核を持つものを捕食、つまりは食べなければならない。」
いっぱい食べると進化するということか。それならゴミ処理場は最高の環境じゃなか!!ゴミは食べ放題で危険も少ない。なんてスライムにとっていい国なんだ!イエーイ!国王バンザーイ!!
「トリノくん、君にはわたしの研究室に協力してもらいたいと思っている。
この研究室には問題があってね。モンスターを進化させたとてそれを下ろせる者がいなかったのだよ。君とマルコくんならば契約はしているし、進化も望んでいる。どうだろう、悪くはないと思うのだが。」
悪くはない、だけど
「あの、時間と何をするかを話していただかないと判断に困ります。仕事がありますので・・・」
「研究内容はそうさな、スライムの再研究としよう。時間は終業後の18の刻から19の刻までと日曜の1日でどうかな?日曜は昼飯付きじゃ」
終業は17の刻、時間には問題がないけど夕飯の支度の時間がなくなってしまう。2人一緒だからいいかもしれないけど19の刻で肉や魚を買えるような店がやっているわけもない。店に入るとマルコと一緒にごはんが食べられない。ゆっくりとした俺とマルコの幸せなひと時が・・・。でもこの美味い話を断るわけにはいかない。
「えっと、仕事のある平日は2日に一度でもいいですか?」
「かまわんよ」
よし!食料調達と甘ーいひと時の確保は出来た。しかし、今まで意見の聞いてなかったマルコはどうか。膝の上で大人しくはしているもののこの話の主役なのだから。いい話だけどマルコの嫌がるようなことはしたくない。
「俺はこの話受けようと思う。マルコはどう?」
マルコは応えるように撫でていた手に薄く伸ばして手みたいなのを乗せた。
「わかった。マグワースさんこれからよろしくお願いします。」
「うんうん、それはよかった。」
こうして俺は目標へ一歩近づいたのだった。
マグワース先生が登場!!イメージは未来のトリノ。
核の詳しい話は研究が始まってからお話しします。つぎはスライムたちのお話しです。




