09 図書館
09
働き始めてから初めての休日。
旅で鍛えられたせいか休みの日でも問題なく動ける。本当に丈夫になったよ。村のときは1ヶ月ぐらいは動けなかったしな。ということで、図書館で調べ物をすることにした。
ここ、学園都市ダルメシアンは貴族と金持ちと凄く頭の良い子供が通う国立学園というものがある。そこでは大人が子どもにいろいろなことを教えているらしい。貴族の子どもが通うのだからそれなりの店が来てそれなりの店が来れば仕事があって・・・というようにしてこの街は出来ている。そのせいか、文字を扱える者が不足している。ある程度学のあるものは商人と学園に取られ、ギルドや役所ではそのお残りをかき集めている状況だ。それに危機感を覚えた領主様は学園都市ということを利用して、学園にある図書館の一部を街の人にも開放した。領主様はそうすれば人は文字を覚えると思ったらしい。
しかし、現実は・・・
すっからかーーん
本を読もうと思う人は文字が読める人だけ。そのことを領主様は知らなかったらしい。図書館を利用するときには身分を証明できるものの提示を求められるのも人が来ない理由だと思う。そういうのを持っている人はギルドか役所で働いている人ぐらいだ。ほとんどの店ではそういうのを作らないことも知らなかったみたい。本は高級品だからしょうがないんだろうけど、なんとも情けない結果だ。
一般的に人以外をモンスターという。モンスターは種類によるけど何段階かの進化をする。
例えば、鶏が1段階進化すれば強くなって扱いにくい代わりに濃厚な卵と弾力のある上質な肉になる。育てるのが難しくなるその分高値で売れる。そこそこ金のある貴族や商人がよく使うらしい。そして、どのモンスターがどのような進化をするかはあらかた調べ尽くされている。
ということはだよ、もちろんスライムにだって調べられていてその条件が載っているに違いない!スライムなんてそこら中にいるんだ。1番最初に研究されているだろう。
図書館の受付に言われた通りにマルコを肩からかける雑な網袋の中に入れ、図書館に入っていく。
「よし、マルコ!探していくぞ!!」
「館内ではお静かにお願いします。」
「あ、はい」
壁一面に本がしきつめられているのを見ると何だか何かを試されているみたいだ。タダヒロ村にも本はあったけどほんの数冊だ。こんなに大量にはない。
図書館には、学園の子どもであろう高そうな同じ服を着ている子たちがちらほらいる。背の高さからして10歳ぐらいか?それぐらいの子供が多くいてたまに俺と同い年か少し低いぐらいの子が本を何冊も持って机に向かっている。俺なんてあれぐらいの時は文字を書けるように父さんに嫌々教えてもらっていたころだ。今となってはありがたい。その頃だってあんなにスラスラとは書けなかったし難しい本はもちろん今でも読めない。
彼らを横目に目的の本を探していく。本の棚についている金属プレートを見て『モンスター』と書いてあるところを探す。同じ景色ばかりと足音とペンが紙を擦る音、本をめくる音。眠れとばかりの環境に負けそうになり眠くなってきた頃、やっとモンスターの棚が見つかった。そこから俺でも読めそうな簡単な本を探す。パラパラと本をめくり絵の多かった本2冊を手に取って机へ向かう。俺のような街側の人を見かけたことが無い。どうやらここには俺しかいないようす。椅子に座り、マルコを見る。最初は興奮してあちこちを見ていた?がここ独特の雰囲気に呑まれ今ではゆっくりと上下している。文字の読めないマルコを起こすのはかわいそうだったので、俺の膝の上に乗せておくことにした。
マルコが俺の上で眠っている。朝起きるのはマルコの方がいつも先で俺は何気に寝ているところを見るのははじめてではないだろうか!?スライムって寝てる時は上下に揺れるんだ!カワイイね!!えースライムって息してるの?なんで上下に揺れてるの?もしかして俺を誘惑するため?← トリノはあまりの可愛さにマルコに魅了されてしまった!トリノは本のことを忘れてしまった!
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魅了状態を少し残し、本を読むことにした。
人が育ててるモンスターについて書いてある本だ。上半分がモンスターの絵で下半分が絵のモンスターの説明をしている文で構成されている。進化の条件やそのモンスターの味、飼育方法、大きさなどが書かれていた。しかし、そこにスライムについては書かれていなかった。
ちょうどお昼だったから一旦図書館を出て大通りの屋台でソーセージのサンドイッチを食べた。ちょっと高いけどソーセージはいいなぁ。帰りにソーセージでも買っていこうか。
図書館に戻って次に読んだのは、森や草原にいるモンスターの本だ。これになら書いてあるかも!さっきと同じように詳しく書かれていてすっごく面白かったけどスライムについては書いてなかった。お昼を食べたマルコは早速寝ていたし、俺もちょっとだけ寝ていた。
モンスターの本棚に戻って色々な本を読み続けた。流石に1日では全部読めなかった。あの2冊で1日は終わってしまった。それから、休みの日は図書館で過ごすようになった。
棚1つ分。されど1つ。学園の生徒からしたら1日で読めてしまう内容なんだろうけどとっても難しい。1日1冊読めるか読めないか。難しい内容の本も頭を痛くしながら頑張って読んでいた。
そして、春は雨季を経て夏になった。この街に来て5ヶ月。棚の1番下の大きな本を読むようになった頃、俺は初めて図書館で声をかけられた。
説明回です。
次は新キャラ登場!
評価ありがとうございました!




