理解者みっちゃん
ドアを開けると可愛らしいが知的な雰囲気の長身女性が立っていた。
「あ、もう家にいたんだ!!!こんな早いなんて思わなかったお。」
戯けた喋り方をする女性はニコリと笑い、勝手に部屋に上がろうとする。
『ちょ!!!みっちゃん!?勝手に入るなって…!!!』
みっちゃんと呼ばれた女性は靴をぶっきらぼうに脱ぎ捨て部屋に入って来た。
「けんちゃん、今日パチンコ行ってたんでしょう⁇」
『ん⁇なんだってんだよ。』
「今日、ウチの弟がけんちゃんのこと商店街の入り口のパチンコ屋で並んでるとこ見たって行ってたもん」
『あー。行ったけどやられて今帰って来た。』
怠そうに棒読みぽくいった。
そこで気付いた。
だからみっちゃんは、早く帰って来たんだね!と言って来たんだ。
なるほど。と思いながら、けんちゃんと呼ばれた青年は、部屋の煎餅布団にダイブするみっちゃんを横目に冷蔵庫に向かい、中から飲み物を取り出した。
『みっちゃん、これ。飲む⁇』
煎餅布団でゴロゴロ転がっているみっちゃんに声をかけると、凄い勢いで起き上がった。
「あーーーー!!!けんちゃんこれーーー!!」
缶のイチゴ牛乳を渡した。
『みっちゃんこれ、好きだろ⁇飲めよ!!』
「いいのーーー???」
少女のような笑顔でそれを手にして喜んでいる。
けんちゃんと呼ばれたこの青年は、朝からギャンブルで負け、金も底を尽きかけているのに、なぜかみっちゃんの笑顔を見て幸せになった。
人生のドン底にいるのに、その顔を見て自分も笑顔になった。