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2.オープニング

サービス開始時間になりログインする。一瞬視界が暗転し、眼を開くと自室ではないどこかへ景色が変わっていた。


 最近のVR技術の発展は目覚しいもので、VRの世界と現実世界の差はほとんど無いと言われている。実際、自分が今は目にしている景色は現実だと言われてもすんなり納得してしまう。

 木造の建物の中なのか、大きな食堂の中に沢山の人が溢れかえっている。ひとりひとりが奇抜な髪の色で、美男美女が多いのを確認して、自分がゲームの中にいることを再認識した。

 …っと、体制が崩れる。なんだか頭がグラグラしている…訳ではなく、

「船の中か…。」

 どこか木造の部屋の中だと思っていたが、どうやら今船の中にいるようだ。そういえば船で大陸に向かうって設定してだったな。

 しかし、船の揺れもここまでリアルだと船酔いになる人もいるんじゃないだろうか。

 「隣座るね。」

 突然横から声がした。と思ったら自分の顔が勝手に声の主の方へ向いた。一瞬驚いたが、どうやら今はまだオープニングらしい。確かにオープニングなどのイベント時に好き勝手動けたらストーリー設定も何もあったもんじゃないか…。

 顔を向けた先には例に漏れず顔立ちの整った美女がいた。黒髪で肩上くらいのボブ、色白で瞳は青い。うん、もろタイプだ。

 というか、そういえばこの女性は俺が選んだキャラクターだ。昨日のキャラメイク後に答えたアンケートの中に、自分の好きな女性キャラを選ぶものがあった。沢山の女性キャラの画像の中から選んだのがこの女性だった気がする。

 つまり目の前の女性キャラはNPCか…。更に言えば、いままでプレイヤーだと思っていた周りの人間達は相変わらず好き勝手に動いているから、おそらく全員NPCだ。 人間のクオリティの高さに改めて驚かされた。

「あのぉ…」


 おっとクオリティに気を取られて隣のNPCさんのことを一瞬忘れていた。

 「はじめまして、私はチェルシー。」

 目の前の女性は笑顔で俺に語りかけてきた。NPCだと分かっていてもドキドキするな。

 そんなことを考えていると目の前にウインドウが出現した。

[あなたの名前を入力してください。]

そうウインドウには書かれている。

 VRギアを装着しているため、文字の入力やメニュー操作も思考だけで行える。俺は頭の中で「ニック」と入力した。昔からゲームで使用している名前だ。

「そう、ニックっていうのね。よろしく。」

 入力がうまくいったようで、チェルシーが笑いかけてきた。

「この船に乗ってるってことは、もちろん開拓者のひとりよね。そういえば個々に来る前の職業は何なの?」


[ジョブを選択してください。]

 なるほど。こうやって会話しながら自分のプロフィールを完成させていく流れになっているのか。

 WWOではジョブとスキルが存在する。ジョブは初期の段階では1つしか選択できない。スキルは取得できる数に制限は無いが、ジョブをオープニング時に選択できるのに対して、スキルは取得できないらしい。ゲームをプレイしていく中で獲得していくしか無いようだ。βテスターは確か所持スキルの中からいくつか引き継げるはず。かなりのアドバンテージといえる。


 ひとまず進行に従ってジョブを選択する。一覧を見るとジョブだけでもかなりの数が存在するが、その中で【射手】を選択する。弓や銃などの武器を扱う職業だ。


「へぇ!【射手】なんだ!すごいね、私は遠距離武器の扱いはどうも苦手で…。ちなみに私は【騎士】をやってるよ。後は魔法も好きかな。」

 ほう、かわいい顔して騎士とは、俺より勇敢な女の子なのかもしれない。


「はぁ、楽しみだなぁインクナブラ大陸。1年前に発見されて、今回ほどの大規模な開拓計画は初めてみたいだね。ずっと行ってみたいと思ってたから…」

 それからしばらくチェルシーはこの世界について、大陸について語っていた。舞台設定をちゃんと把握していない人に向けてのゲーム側の配慮だろう。


 しばらくチェルシーの話が続いた後、遠くから鐘の音が響いた。どうやら大陸に到着したようだ。

 「それじゃあ、またね!」

 眼をキラキラと輝かせながらチェルシーは走り去っていった。

 そしてふたたび景色が暗転する。


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