私の女騎士は「くっ殺」なんて絶対に言ったりしない!
つボイノリオ、加瀬あつしに捧ぐ――
「最近気になることがあるのですが――」
ある晴れた王城の昼下がり。
オクノナニスキー王国王女、アナルーガ・セイカ・タイン姫付きの騎士、クーリ・トリアスは主に対し不意に口を開いた。
「なんです、藪から棒に?」
「なにか最近民達がやたら私を指さして「くっ殺、くっ殺!」とまくし立てるのです。それがどうも気になって……」
「なんだ、そんなことですか。貴方は優秀な騎士でありますが、その分ものを知りませんね」
「お恥ずかしい話です……」
クーリが照れ笑いをし、アナルーガもつられて笑った。
大輪の華が一瞬で咲いたような眩しい王女の笑顔だった。
外面は高貴で美しく冷徹とも受け取られるほど表情が変わらない彼女も、クーリの前では一人の気が強く狡猾で虎と評される少女だった。
とはいえ、それを見せるのは家臣にして子供の頃からの友達でもあるクーリの前でだけ。
まさにクーリの花だ。
「くっ殺、というのは「くっ、このまま生きながらえて恥をさらすぐらいなら、いっそ殺せこのケダモノ共! お前のかーちゃんデスパイネ!」の略で、女騎士が薄汚いオークに陵辱されるまえに、苦し紛れに言う決め台詞のようなものですよ。特にあなたのような表面上は潔癖そうで性に疎そうな女騎士が」
「な……」
クーリの顔が真っ赤になる。
いくら主であるアナルーガの言葉とはいえ、これはあまりにひどかった。
物心つくかないうちからアナルーガに仕え、騎士としてのみ生きてきたクーリもまだ多感な二十歳前の少女である。真面目だが少し敏感なクーリは、そんな話をされれば冷静ではいられない。
アナルーガはそうと分かっていながら、普段からよくクーリをからかった。クーリの反応が楽しくてしようがないのだ。
毎回いじられているというのに、クーリはその度に新鮮な反応をしてくれた。
結局なんだかんだ言ってもアナルーガに弱いのだ。
「ふふ、そんなに怒らないでクーリ。でも実際戦場の女騎士なんて、私もそんなものだと思いますよ」
「アナルーガ様まで……」
「別に恥じることではありません。そもそも女は力で殿方に劣るのだから、騎士として劣るのは必然、ならば女の武器を使ってそれを補うのは当たり前ではありませんか。捕まっても陵辱されるだけで殺されいなど、殿方からすればうらやましがられることではなくて?」
「そ、そうかもしれませんがアナルーガ様は開けっ広げすぎます。もう少し自重してください。締めてください」
「あら、女はある程度穴があった方が愛らしいと思わないかしら?」
「アナルーガ様の穴は特殊すぎます!それに、私ら女騎士は戦場に立つ以上、男以上に有能な騎士であろうと努めています。そのような口先だけのセリフを言ったりはしません。その前に一つでも多く敵の首を取るでしょう」
「つまり貴方は追い詰められたら「くっ殺」などとは言わないと?」
「もちろんです」
クーリは自信満々に答える。
そんなクーリをアナルーガは本当に楽しそうに見た。
自分の言葉が全く信じられていないことは明らかだ。結局このやりとりも普段のいじりの延長線にあるのだろう。
クーリはいつかそんなアナルーガを逆に弄ってやろうと思いながら、上目使いで見返す。
「ふふ、そんな顔しないでクーリ。ただ私は心配なのです、大事なクーリが臭いオーク共に陵辱されたあげくオーク館に監禁され、『拝啓アナルーガ様♡やっぱり勝てませんでした♡……でも私はオーク様達の雌豚になって新しい幸せを見つけました♡探さないでください♡ブヒヒ♡かしこまり♡』と♡だらけの手紙を送るのが」
「絶対にそんなことにはなりませんしそんな手紙は送りません!」
「でも、そうならないための訓練は必要でしょう?」
「オーク云々は関係ありませんが、日頃から騎士として戦場で後れを取らないための訓練はしています」
「それだけでは足りません。私が特別に訓練してあげようというのだから、貴方は素直にそれを受け入れなさい」
「嫌な予感しかしません……」
「それでは入ってきなさい!」
アナルーガの扉に向かって声高らかに叫ぶ。
それに反応するかのように、部屋の外でまっていた一人の……というべきか一匹のオークが、腰を曲げながら部屋に入ってきた。
2人がいるのはアナルーガの自室で、オークが入るには幾分天井が低かった。
「ゴミクズ!?」
腰蓑だけをまいたオークが部屋に入ってくるなりクーリが叫ぶ。
「我が親友にして忠臣ながらいきなりひどい言いようね……」
「あの、自分の名前がゴミクズなんです……」
「え、あ、そうなのですが」
3メートル以上の巨躯の割に甲高い声で話したオーク――ゴミクズの言葉に、アナルーガは驚いた。
それと同時に、こんな名前をつけるなんてひどい親もいたものねと心底同情した。
「とりあえず、こんな事もあろうかとそのあたりに歩いてたのを捕まえ、外でまたせていたのですが知り合いなのですか?」
「ええまあ……」
クーリは答えづらそうに言った。
その頰を少し染めながら。
ゴミクズの方も何か決まり悪そうな顔をしている。
「……まさかすでにくっ殺経験済みなのですか!? 我が国はオークと友好関係を結び、こうしてその辺を歩いていても不思議ではありませんが、実際のくっ殺は初耳ですね……」
「そうではありません! その、ゴミクズとは長年の付き合いというか……その……いつも一緒に居るような関係というか……」
「あ、幼なじみなんです」
「・・・・・・」
特に何の気負いも無く答えたゴミクズを、クーリが横目で睨む。
ゴミクズはそれに全く気付いていなかった。
その一瞬でアナルーガは二人の関係を完璧に見抜く。
しかし黙っていた方が面白そうだったので、それをあえて隠しながら話を進めた。
「事情は分かりました。しかし長年一緒に居ますが、まさかオークと幼なじみだったとは」
「アナルーガ様の前に連れてきたことも話したこともありませんから。どうもアナルーガ様はオークに対して偏見……というか、あまりお好きではないようだったので」
「そうかしら? 自分では隙でも嫌いでも無いつもりですけれど。でもそうね……そうなると逆に……」
「あの、結局ゴミクズまで呼んで、いったいこれから私に何をさせるつもりで……」
「まず彼にレイプ寸前まで追い詰められてもらいます。ギンギンになってもらいます。そこからクーリには見事逆転してもらい、「くっ殺」状況を打破する力を身につけてもらいます」
「え、ええー……」
クーリが一瞬驚いたあと、まんざらでもない顔をする。
逆にゴミクズは完全に取り乱し、アナルーガに抗議した。
「いくら幼なじみでもそんなことできませんよ! 一国の姫ともあろうか他が何を考えているんですか!?」
「ゴミクズ、高貴な人間には下々の者には分からない思惑があるのです。あなたたちはそれに唯々諾々と従えばいいのです」
「で、ですが……」
「ではあなたは一オークの分際でこのアナルーガを詮索し、自らの指でほじくり回すような真似をすると? その太く汚らしい指で。貴方はこのアナルーガがそれを容易く許す甘い人間だと? 王女とはいえ、こんな小娘のアナルーガの中身など、どうせゆるゆるなのだと?」
「い、いえ、そこまでは……」
少し肥満気味だが筋肉もしっかりついてるというのに気は小さいのか、ゴミクズはすぐにトーンを下げた。
自分が優位に立っていると分かればアナルーガはかさにかかって攻める。
アナルーガは攻められても攻めても甘くはない。
少しでもアナルーガを舐めるような態度をみせれば、かさにかかって反応した。
「そもそもあなたのようなオークが、この王城にいるのがおかしいのです。しかも名家でもあるトリアス家の令嬢と幼なじみなど。どうせ力尽くで何もかも自分の思い通りにしたのでしょう?」
「それは……」
「あの……」
なんともばつの悪そうな顔で、おずおずとクーリが手をあげる。
「どしたのです?」
「むしろ力尽くでものにしたのは私の家の方というか……」
「は?」
「大変言いにくいのですがその、ゴミクズの姉が叔父の妾でして、そこに至るまでの道もとても褒められたものではないというか…」
「・・・・・・」
アナルーガは平均的なオークの女性の姿を思い描く。
ゴミクズより背は小さいもののそれでも2メートル以上あり、体型は中年太りしたオバさんと同じで、豚と人間の中間のような顔をし牙も生え肌は緑。唯一魅力的な点を上げれば、胸が大きいことぐらいか。少なくとも普通の神経をしている人間なら、力尽くでものにしようとは思わないだろう。
普通の神経しているなら。
「……このケダモノ!」
「返す言葉もありません」
クーリはうなだれ、ゴミクズはただ引きつった顔で苦笑するだけだった。
「……はあ。正直あなたの叔父には失望を通り越して絶望しましたが、今はあなたの問題の方が重要です。ゴミクズ」
「は、はい!?」
「先ほども言いましたが、クーリを今すぐ押し倒しなさい。そしてクーリは必死に抵抗し、前フリではなく本当にその逆境を跳ね返す力をつけるのです」
「あの……お言葉ですが姫――」
「さあやるぞゴミクズ!」
クーリはゴミクズが最後まで言うのを許さず、自分から床に倒れる。
常時全身を覆う金属製の鎧を纏っているため、倒れた瞬間すさまじい音が鳴った。
アナルーガは思わず眉をひそめる。
「……クーリ、その格好のままでは床が傷つきます。とりあえずその鎧を全て脱いでからにしなさい。「くっ殺」展開の時、女騎士はえてして無防備であるものですからね」
「あ、はい、分かりました」
クーリは立ち上がり、素直に鎧を脱ぎ始めた。
肩当て、胸当て、籠手など順に鎧を脱いでいく。
「・・・・・・」
その度に埃が舞い上がり、アナルーガが引くほど鈍い音が聞こえた。
アナルーガは試しに落ちていた籠手を拾ってみる。
「……重!」
今は亡き赤ん坊時代の弟(死因不明、毒殺とも言われている)以上重い物を持ったことがないアナルーガには、腰のあたりまで持ち上げることしかができなかった。
おそらく10キロはくだらないだろう。
アナルーガが顔をどんなに引き締めても、それ以上高く持ち上げられない。アナルーガには本当にきつかった。
こんなものを毎日着ながら平然と生活していたとは。
本人の言う通り、騎士としてのクーリを過小評価していたことを思い知らされる。
「よくこんなもの着ながら普通に歩けますね……」
「私にとっては皮膚の一部のようなものですから。……というより皮でしょうか?」
「クーリの皮は普通の人間と比べて厚すぎます」
アナルーガは心底呆れた。
やがてクーリは全ての鎧を脱ぎ終える。
インナーのように使っている鎖帷子までは脱がなかったが、最近見る機会がなかったクーリの肢体をアナルーガは久しぶりに見た。
背は180センチほどで、胸はそれなりに大きく女性的なくびれもある。ただそれ以上に筋骨隆々で、鎖帷子に覆われていない上腕二頭筋は膨れあがり、血管も浮いていた。
「あの、随分鍛えているのですね……」
「はい。姫を守る以上非力なままではいられませんから、男の騎士以上に日々鍛えています。他の女騎士も私と似たようなものですからご安心ください」
「そうですか……」
アナルーガは今まで自分が抱いていた女騎士のイメージがことごとく崩れ去る音を聞いた。
「むしろ「殺せ」と強がるより「殺す」と脅す方が似合ってますね……」
「何か?」
「いいえ、なんでもありません」
この時点でアナルーガは自分の立てた訓練が無駄だったと、ほぼ完全に察していた。
とはいえここまできて止めるのも興ざめだ。
クーリがどんな暴挙にでるか興味もあり、黙ってそのまま続けさせることにした。
「さて、それじゃあやるぞ、来いゴミクズ!」
「え、ああ……」
明らかに気乗りしない表情で、ゴミクズは床に仰向けに倒れているクーリの上に覆い被さった。
その瞬間、ゴミクズの方が顔をしかめる。
「どうしたのですか?」
「いえ、その、なんというか、独特な臭いというか……」
「ああ、臭いのですね」
「ぐふっ!」
アナルーガのストレートな言い回しが、クーリの胸に突き刺さる。
「まああんな鎧を四六時中着て生活していれば、体臭がオークレベルになるのも当然でしょう」
「お言葉ですが姫、オークはそこまで臭くありませんよ。基本的に肉は食べませんし、下手をすれば人間より綺麗好きですから。こうして年中薄着でいるので、汚れもたまりにくいですし。せっかくなので嗅いでみられては?」
「どれどれ」
アナルーガはクーリの勧めに従い、ゴミクズの背中を嗅いでみた。
「……確かにゴミクズからは不快な臭いはしませんし、ほのかに柑橘系の香りがしますね。下に居る汚物のせいで、合わせると微妙な臭いですが、オークが臭いというのは私の思い違いだったようです」
「お、恐れ入ります」
「あの、私そんなに臭いですか?」
「それはゴミクズの顔を見て判断しなさい」
クーリが上のゴミクズに視線を向けると、引きつった笑顔を浮かべ青い顔をしている幼なじみが。
クーリの胸にできた傷痕が更に広がった。
「本当にどうしようもなく臭いですね、クーリ・トリアスは。まさかたまに感じる汚臭の出所が貴方だったとは。この私の高貴な香りでも中和しきれないなど、汚物の限界に挑戦しているといえますよ?」
「そ、そんなことよりさっそく訓練を始めましょう!」
これ以上心が傷つかないよう、クーリは強引に話を変える。
こういった対応ができるあたり、クーリも昔に比べれば一皮むけたのかもしれない。
「……わかりました。正直もうこんなことをする必要もない気がしますが、貴方の気がすむまでやりなさい」
「分かりました。それじゃあいくぞゴミクズ」
「あ、ああ……」
「おらぁ!」
クーリが女とは言えない野太い声を上げた。
その瞬間、ゴミクズの巨体が文字通りゴミクズのように宙を舞う。
「し、しまった! ムードを出すために多少抵抗してみたら力を入れすぎた!」
「多少というレベルでもない気がしますが……」
着地と同時に後頭部をしたたかに打ち、床を転げ回っているゴミクズを見ながらアナルーガはため息混じりに言った。
「も、もう一回! ワンモア!」
「もう充分です。最悪ゴミクズが姉と同じ末路をたどりそうで、上に立つ者として許可できません」
「そんなあ……」
これを期に既成事実でも作ろうとしたのか、クーリはガックリと肩を落とした。
「あの……」
やがて復活したゴミクズが、後頭部をさすりながら遠慮がちに言った。
「なんですか?」
「そもそもなんでこんなことをしているのでしょうか? はっきり言ってクーリは強いです。男のオークと比較しても上位にランキングされるほどの豪腕の持ち主で、私は子供の頃からクーリに勝ったことがありません。今更彼女を心配する必要など……」
「確かに貴方の言うことも尤もです。私も途中でこれ絶対無駄なことしているなと思いました。しかしいくら彼女の力でも、オークの集団に襲われればひとたまりもないでしょう?」
横でクーリがすごい勢いで首を縦に振る。
しかしゴミクズは首を横に振った。
「杞憂です。そもそもオークはよっぽどのことがない限り人は襲いません」
「オークは人間の若い雌を見たら、性欲全開で襲いかかるものではないのですか?」
「偏見です。そもそも人間はオークにとって細すぎます。その上下手に手を出そうものなら、あとで大軍で仕返しされ、いいことが一つもありません。性的魅力に関して言えば豚以下です」
「豚以下……」
クーリの心がこの瞬間、完全に砕け散った。
それと同時に今は幽閉されている叔父と同じ暗い炎が灯ったが、それはまた別の話である。
「これはこの国の人間なら誰もが知っていることです。おそらくこの国でそれを知らないのは、貴方方のようにこの城だけで生活している方々ぐらいでしょうね」
「そうだったのですね……。それは大変失礼しました。ですがそうなると、下々の者がくっ殺とまくし立てたのはいったい何が原因でしょう? 皆オークが女騎士を襲わないと分かっているのに。となると対象は臭い山賊か臭いゴブリンでしょうか?」
「……その言葉に関しては一つ思い当たることがあります」
「ほう……」
アナルーガの美しく聡明な瞳が細くなる。
今まで散々馬鹿なことを言って、馬鹿なことをしていた人間とは思えない、鋭さだった。
そもそも、アナルーガは賢く、そしてなにより美しいのだ。
そこに美しさがあるならアナルーガは傷つき血を流すことも厭わない。
「この地方の民間伝承に『クッコーロ』という女神の話があります。おそらくそれになぞらえていたのではないかと。少なくともクーリを知る人間なら、山賊やゴブリンが束になったところで、彼女が後れを取るなどと思いません」
「『クッコーロ』……、寡聞にして知りません。できればこの場でその伝承とやら、話してくれませんか?」
「仰せのままに。『クッコーロ』……またの名を雌ゴリラの女神は、文字通りゴリラのように強靱な腕力と肉体を持つ流浪の神でした。そしてこの地方は『クッコーロ』が訪れるまで、邪悪なオーク達によって支配していました。当時虐げられていた人々はたまたまこの地に訪れた『クッコーロ』に、オーク達を懲らしめてくれるよう頼みました。人々の頼みを受け入れた『クッコーロ』はその豪腕だけでオーク達をねじ伏せ、ぬぐいきれぬ恐怖をたたき込み、以後謙虚になったオーク達は人間と共存するようになった……という話です。、今のクーリにはその『クッコーロ』に負けないほどの力があると思われたのでしょう」
「ほう……つまり私が何もせずとも、クーリはくっ殺には負けていなかったのですね」
「はい」
「私的には別に負けても良かったのですが……」
体臭を指摘されたせいか、再び鎧を纏いつつ無表情……不感症になったかのようにクーリは力なく言った。
その一方で、ゴミクズの態度もまた妙だった。
アナルーガの目には明らかに何かを隠しているように見えた。
「・・・・・・」
「おや、まだ何か言いたそうですね」
「あ、いえ、これは関係ないというか、彼女の名誉のためにも……その……」
「面白そうですね。言いなさい、命令です」
「は、はあ……。実は『クッコーロ』の伝承には続きがありまして、オーク討伐後、彼女は子孫を残すため人間、オーク両方から自分の夫になる者を募りました。そもそも『クッコーロ』流浪していたのは、自分の夫を探すことが目的だったのです。ですが、両者ともに彼女の鬼神のような活躍を間近で見てきたため、彼女を恐れ、誰も手をあげませんでした。次第に『クッコーロ』のフラストレーションがたまり、今度は人間にもその牙が向けられそうになりました。その時、ある少女が『クッコーロ』に言いました。「この際妥協して対象をゴリラまで落とせば、ワンチャンあるんじゃないでしょうか?」と。『クッコーロ』自身、危機感が危険水域に達していたため、その案を受け入れ雌ゴリラに姿を変え、ゴリラのつがいを求めてどこかへ行ったと……」
「……つまりクッコーロはモテない野蛮な女の象徴でもあるのですね。犯されるどころか気を抜けば逆に犯しにくるケダモノと」
「有り体に言えば……」
「それに例えられるクーリもまた、モテないくせに性欲旺盛の雌ゴリラというわけですか……」
「ち、違います! 私は麗しき女騎士です! 追い詰められたら「くっ殺」ぐらい言います! そして儚く乙女を散らされたりします!」
必死に自己弁護するクーリ。
だがそんな彼女をアナルーガは冷たい目で見下し、言った。
「女騎士はあえて「くっ殺」に勝つ必要はないのですね。今日は良い勉強になりました」
了
あらすじの○○○に入る言葉はゴリラです