第二章 平穏な朝
「ほ〜な〜」
呼ばれた方向を見ると短髪で良く日に焼けた見るからに体育会系の少女が走ってきた。
穂菜の親友の蒼井 双葉だ。
追い付いてきた双葉がいった
「今日から私達も高等部だね」
「まあ 皆持ち上がるんだけどね。
そういえば【造って】もらいたい物があるんだけど・・・いい?」
穂菜がたずねると
「いいけど何を?」
「・・・目覚まし時計」
「なにアンタまたやっちゃったの?
本当に寝起き悪いねぇ」と少々 呆れたように双葉がいう。
穂菜はむっとしたが事実なので反論できない。
「あたしの能力は時計屋じゃないんだよ。」
説教されて穂菜の機嫌はますます悪くなる。ちなみに穂菜の能力は
「変態」
といって自分の姿を好きに変えることができる。
今朝は手を鉄に変えて時計を壊した。
双葉の能力は『創造』
自分のイメージした物を無から造りだすことができる。
「まあ 放課後までには造っとくよ」
そう聞いた途端穂菜の機嫌は一気によくなった。
「ありがとう双葉様 この恩は一生忘れません」
「そんなに感謝されたら逆に困るよ」
過剰な反応をする穂菜に双葉は照れたように笑った。
こうしていつも通りの朝が通り過ぎていく。
もう二度とくることのない平穏が過ぎていく。
二度と忘れることのない時が迫ってきていた。
黒いコートを着て
黒い靴を履き
黒い髪の
全身 黒ずくめの男が柊学園に向かって歩いて行った。
時計を見る8時30分
自嘲の笑みをもらした。
「ここまで早く来てしまうなんて・・・
少なからず過去をひきずってるってことか」




