【6話】
「最初から話したいけど…メ−ルだと長くなるの。だから今から電話していい??」
彼女は即答で返信をよこした。
『無理。今家庭教師来てるから』
悔しかった。
だから親指をフルに動かして急いで返信を送ろうとしていた・・・・・
そのとき、電話の呼び鈴が鳴った。
「もしもし」
『もしもし、A子ですけど・・・・トキいますか??』
突然かかってきたA子からの電話。あんなに不機嫌そうに『無理』って言ってたのに。
「あの・・・私だけど」
震えてしまう声をなんとか抑えながら言葉を放つ。
『お母さんから聞いた。さっきトキ電話くれたんでしょ?
返さなきゃ悪いなと思って・・・・・』
そう、私はA子とのメ−ルが一瞬途切れたときに、一度A子の自宅に電話をしていた。
そのときはA子のお母さんが出て、”今家庭教師やってるのよね”と言ったから、
私は折り返し電話をくれるように伝言を頼んだ。
おばさんは、ちゃんと伝えてくれたのだった。
「そ、か。ありがとう。でも、どこから話せばいいのか・・・・・・」
そこまで話すと私は泣き出してしまった。
喉の奥から嗚咽が漏れてきて、うまく声が出せない。
話そうとするとしゃくりあげてしまい、言葉にならない。
今しか伝えるチャンスは無いのに・・・・
早く泣き止め。早く 早く 早く
自分を叱りつけながら必死で平常心に戻そうとする。
さすがのA子もこれには驚いて
『トキ?どうしたの??ねぇ!泣いてちゃわかんないでしょ?トキ、ねぇどうしたの?』
さっきの態度が嘘だったかのように、A子は必死で私に呼びかけてくれた。
A子も・・・・少しべそをかきながらの言葉だった。
しばらくして少し落ち着いてきた。
そして、私は話し始めた。
「さっきメ−ルで手紙の頃の嫌がらせは知ってるって言ってたでしょ?
あの頃私もさ、必死になってK君とかY君とかハルカと犯人捜したんだよ。
でも結局犯人は見つからなくて、そのうちハルカ達も別れちゃって・・・・・
私すごく悲しかった。
それでも、嫌がらせから開放されて、少しでもハルカが楽になったんだったら
それはそれでしかたないけどよかったのかなって思った。」
そこでまた涙がこみ上げてきた。私は深呼吸をして呼吸をととのえ、再び話し始めた。
「そしたら、今度はメ−ルだって言ったでしょ。
もう本当に”なんでなの?”って思った。
メ−ルの嫌がらせが始まったことは私12月5日の3・4時間目にハルカ本人から聞いた
のね。
で・・・・その後私が犯人ってことになってるって聞かされて、もう・・・・
それで目の前が真暗で。気分も沈んだりして、ここ何日も暗い態度しかとれなくて。
それで・・・・・」
またうっとうしい涙が溢れ出てくる。
「それで・・・・・・・
も、ごめんね。A子もなんでこんな急に変になったわけ?とか思ってたよね。
ごめんね。本当に、ごめんね。」
A子は事実を知った。そして今まで自分が私に対してとった態度を必死で謝った。
電話も最後のほうになると会話は少なくなり、”ふたり”で大声を上げて泣いていた。
”ふたり”で・・・・・・
私は独りではなくなった。
勇気を出したことで、味方が出来た。
憂鬱な気分が少し晴れ、暖かな光が見えた気がした。
その日の夕飯は、すごくおいしかった。
読んで下さっている方、ありがとうございます。
これからも書き続けていきますので、よろしく
お願いします。
感謝をこめて Shiena