【24話】
部屋に入ると1つの机と3つの椅子があった。机をはさんで向かい合うようにして椅子が
2つ。少し外れたところに椅子が1つ。椅子の向かい側にはハルカが座っていた。私も静
かに椅子に腰をおろす。10分くらい、誰も何も話さなかった。しばらく経つと鈴木先生が
口を開いた。
『えぇっとね、今日こうやって学校に来てもらったのはハルカさんがトキさんにきちんと
謝りたいって申し出てくれたからなの』
私はそのまま下を向いていた。
先生は言い終わると黙り込んだ。謝るはずのハルカもなかなか話し出さない。
5分経った。
ハルカが口を開いた。
”トキは、今どう思ってる?”
この言葉にはかっとなった。
「どう思ってるか?むかついてるに決まってんじゃん。しかもなんであんたから質問して
んの?先に話しなさいよ」
”話すって??”
そういうとハルカの目は先生へと向けられた。だから先生の影に隠れるって言ったのに・・
「とぼけないでくんない?なんでこんなことやったのか、だよ」
ハルカの話す一言一言がすごくむかついた。
”そうだったね。なんでって言うか、皆に注目されたかったからやった”
「ふぅん。楽しかっただろうね、警察まで巻き込んで。しかも手紙の頃’死ね’って書い
てあったよね。自分でやってるとか、まじひくし。きもい」
一息に言うとハルカは黙りこくった。
「っていうか、なんで私だったの?」
少しずつ視界がぼやけてきた。
”なんかぁ、手紙のころにトキなんじゃないかっていう話が捜してた皆の中で出てて、そ
れで皆を信じ込ませるためにも一番名前が濃かったトキの名前使ったの”
「何それ?誰でもよかったってことじゃん。最低だよ。」
”なんかそのときは自分のことしか見えてなくて、周りのこととか全然気にしてる暇なか
った”
「あっそ。ハルカはいいよね、思ったとおり皆に注目されてさ、満足だったでしょ」
”ううん、皆一生懸命捜してくれたけど・・・あたしのこと本気で心配してるとは思って
なかったし”
「は?何変なこと言ってんの?どこまでうぬぼれてんだよ」
この期に及んで何をいうかと思ったら・・・・・・・・ここまでひどいとは思わなかった。
”この3ヶ月間ずっとどんな気持ちだった?”
「嫌だったに決まってんじゃん。学校行くのだってめちゃくちゃ嫌だったよ。教室行けば
あんた笑ってるし、犯人だってわかってた私にとってそれがどれだけ辛かったかあんたに
わかる?わかんないでしょ。今だってそうじゃん。未だに謝らない。悪いって思ってる雰
囲気が全然ない。もうなんなの?私は今でもまだ悪者なんだよ!あんた学校来ないからわ
かんないでしょ」
半ば叫びながら言っていた。溢れ出す涙は頬を伝い、厚く着込んできたコ−トの袖にぽた
ぽたと零れ落ちた。しばらく誰も話そうとはしなかった。10分くらい経っただろうか。
向かい側の席から蚊の鳴くように小さくて細い音が聞こえた。聞き取れずに黙っていると
ハルカはもう一度呟いた。
”すみませんでした”
今度はちゃんと聞き取れた。でも返す言葉が見つからなかった。だって、そのときのハル
カの顔は前のあの陽気だったときの顔そのものだったから。
ハルカは私が聞き取れなかったのだと思い、もう一度言い直そうとした。私は首を横に振
ってそれをさえぎった。
「もういい・・・・・・先生、今日の話し合い終わらせてください」
『いいの?』
「いいです、後日もう一回設けてください」
そういうと私は小会議室を急いで出た。少し行ったところに図書室がある。私は図書室の
ドアの前に座り込み、顔を深くうずめた。
2、3分経って学年主任の山田先生が来た。そして私の肩を軽く叩いて、「ちょっと話そ
うか」と言った。私達はそのまま図書室の中に入っていった。持ってきた腕時計に目をや
ると、すでに9時を過ぎていた。
<どうだ、ハルカさんと話てみて>
「よくわかりません。私はちゃんと謝ってもらったとは思ってないです」
<そうか・・・・>
先生が一息置く。
<それでな、来週は他の男子たちと話し合いをしようと思ってるんだけども、どうだ?>
「大丈夫です」
<そうか。わかった。それと、今回のことに関してどう思うか?>
私はしばらく考えてしまった。どうと聞かれてしまうと上手い言葉が見つからない。矛盾
した答えしか頭に浮かんでこなかった。頭をひねってみたけど、結局それしか今の気持ち
は言い表せないと思い、正直に言うことにした。
「そう、ですね・・・・なんか矛盾してしまうんですけど・・・・・・・・
こういう事件があったことは、忘れて欲しくないんです。
でも、私を犯人と疑ったことは、忘れて欲しいです。
本当に矛盾してるんですけど、これが私に出来る精一杯の説明です」
変な説明だと思った。
でもしょうがなかった。
先生は小さくうなずくと、「今日はもう遅いから」と職員室に電話をかけにいった。
しばらくするとお母さんが職員玄関のところに現れ、先生方に頭をさげると私を連れて
下まで降りた。
更新が遅れてしまいました。すみません。
読んでくださった方、ありがとうございました。
次話も読んでくださいね。
感謝をこめて Shiena