【23話】
一日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
帰りの会が終わったクラスからそれぞれ部活に行ったり、そのまま下校したりする生徒達
がどっと教室から溢れ出す。私はさっさと制服に着替えると、
「ごめん、Sちゃん。今日用事あるからちょっと先帰らせてね」
そう言い残すと走って乗降口にむかった。少しでも長く家で過ごして緊張感を和らげてお
きたい。怖くないわけがない。怖くてしかたがなかった。もう傷つきたくない。そんな想
いが胸を満杯にする。でも行かなければならない。ちゃんと真実を知ることがどれほど大
切なことかは自分がよくわかっていた。だからその覚悟の準備の時間がたっぷり必要だっ
たのだ。
「ただいま」
[おかえりなさい]
家にはお母さんがいた。
「ちょっと考えたいから部活、休んできた」
[そう。じゃぁ私は前のお店に行ってるから、ゆっくり考えるといいわ]
「わかった」
私は温かいこたつに身体をもぐりこませ、目を瞑った。そして頭の中で質問する内容を
整理していた。でもいつの間にか眠ってしまっていた。目を覚ましたのはお母さんの呼
ぶ声でだった。
[トキ、時間だよ。そろそろ行かないと。]
急いで時計に目をやると、針は5時50分を指していた。
「うん、今準備する」
制服のしわを直して、リップクリ−ムと目薬をコ−トのポケットに放り込む。
「お母さん、行こ」
そして私はお母さんの運転する車に乗り込んだ。車を10分走らせたところに学校はある。
学校にはあっという間に到着した。
「じゃぁ、行ってくる」
[トキ、大丈夫だからね。]
「うん、大丈夫。じゃぁ行ってくるね」
[頑張って]
お母さんに勇気付けられて、ゆったりとした歩調で職員玄関に向かう。ドアの前に立つと
インタ−フォンを押して鍵を開けてもらった。校舎内に入るとすぐに鈴木先生が出てきて
『待ってたのよ』
「ハルカは来てますか」
『えぇ、さっき来たわ。もう小会議室に行って待ってる』
私は黙ったままうなずくと先生の後を歩いた。
コンコン
先生が部屋のドアをノックする。応答はなかったが、先生はかまわず入っていった。
私はそのまま廊下で立っていた。ドアの隙間から先生が顔を出し、手招きをして入るよう
にとジェスチャ−で表した。静かな足取りで部屋に足を踏み入れた。
そこに、ハルカがいた。
読んでくださった方ありがとうございます。
次話も是非読んでください。
感謝をこめて Shiena