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濡れ衣  作者: Shiena
23/26

【23話】

一日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。


帰りの会が終わったクラスからそれぞれ部活に行ったり、そのまま下校したりする生徒達


がどっと教室から溢れ出す。私はさっさと制服に着替えると、


「ごめん、Sちゃん。今日用事あるからちょっと先帰らせてね」


そう言い残すと走って乗降口にむかった。少しでも長く家で過ごして緊張感を和らげてお


きたい。怖くないわけがない。怖くてしかたがなかった。もう傷つきたくない。そんな想


いが胸を満杯にする。でも行かなければならない。ちゃんと真実を知ることがどれほど大


切なことかは自分がよくわかっていた。だからその覚悟の準備の時間がたっぷり必要だっ


たのだ。


「ただいま」


[おかえりなさい]


家にはお母さんがいた。


「ちょっと考えたいから部活、休んできた」


[そう。じゃぁ私は前のお店に行ってるから、ゆっくり考えるといいわ]


「わかった」


私は温かいこたつに身体をもぐりこませ、目を瞑った。そして頭の中で質問する内容を


整理していた。でもいつの間にか眠ってしまっていた。目を覚ましたのはお母さんの呼


ぶ声でだった。


[トキ、時間だよ。そろそろ行かないと。]


急いで時計に目をやると、針は5時50分を指していた。


「うん、今準備する」


制服のしわを直して、リップクリ−ムと目薬をコ−トのポケットに放り込む。


「お母さん、行こ」


そして私はお母さんの運転する車に乗り込んだ。車を10分走らせたところに学校はある。


学校にはあっという間に到着した。


「じゃぁ、行ってくる」


[トキ、大丈夫だからね。]


「うん、大丈夫。じゃぁ行ってくるね」


[頑張って]


お母さんに勇気付けられて、ゆったりとした歩調で職員玄関に向かう。ドアの前に立つと


インタ−フォンを押して鍵を開けてもらった。校舎内に入るとすぐに鈴木先生が出てきて


『待ってたのよ』


「ハルカは来てますか」


『えぇ、さっき来たわ。もう小会議室に行って待ってる』


私は黙ったままうなずくと先生の後を歩いた。


コンコン


先生が部屋のドアをノックする。応答はなかったが、先生はかまわず入っていった。


私はそのまま廊下で立っていた。ドアの隙間から先生が顔を出し、手招きをして入るよう


にとジェスチャ−で表した。静かな足取りで部屋に足を踏み入れた。




そこに、ハルカがいた。


読んでくださった方ありがとうございます。

次話も是非読んでください。



感謝をこめて  Shiena

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