表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
濡れ衣  作者: Shiena
21/26

【21話】

旅館に着くと送っておいた大きな荷物がごろごろしていた。


それぞれに分け与えられた部屋まで重い足を引っ張って進む。


部屋の装飾はこじんまりとしていた。京都名物の八ツ橋がテ−ブルの上にずらりと並び、


風情のあるかけじくがその後ろに凛々しく垂れていた。


奈良公園を出て、私達2年生は京都に移った。だからこの旅館も京都にある。


部屋をノックする音が聞こえた。


「どうぞぉ」


誰かが言った。


「失礼します。あと10分程で夕食となりますので、大きい荷物のほう、そちらの隅のほう


に移動させてください。座布団はそちらのかけじくの下にありますんで、お好みで使って


ください。」


その男の人は必死に標準語を使おうとしていたが、私達からみればだいぶなまっていた。


「すごくない?!今のなまってたよ。」


「あれって京都弁??あれ?違うっけ??」


「ってか夕飯早くない??まだ6時30分過ぎたばっかだよね」


皆うなずきながらも運ばれてきた夕食をとりあえず食べた。旅館の夕食ははっきり言って


すごくまずかった。お腹が空いていないことが、このときばかりは助かった。


夕食を食べ終わると私達はお風呂に行った。私達のクラスが一番最初だったからだ。


お風呂から出るともう時計の針は7時をまわっていた。消灯時間は10時。これから漆器加


飾の体験をする。私は八景形の小箱を選んだ。そしてそのふたの部分に大きくて真っ赤な


椿の花をえがいた。蜀紅しょっこうと言う種類の椿だった。美術の先生はすごく褒め


てくれた。プロであるおじいさんも「こりゃたいしたもんだ」と微笑んだ。そう言えば、


最初はこの漆器加飾をするために修学旅行に行こうって決めたんだったな・・・・・・・


体験時間は1時間と短く、ほとんどの人達が未完成のまま終わった。その中で完璧に終わ


った人数は凄く少なかったから、私は嬉しかった。なぜなら、私は完璧に終えることが出


来たから。


体験が終わると皆おのおの分け与えられた部屋に戻って行った。私も同じ部屋の友達と一


緒に部屋まで歩いた。部屋に入ると布団が畳み一面に敷かれていた。何人かは布団の上に


ダイブした。残りの人はおかしくて笑いとも言えないような感じで笑っていた。


「おーい、消灯だぞぉー」


通路で先生が声を張り上げている。でも私達は寝る気なんてさらさらない。修学旅行の夜


と言えば、ぶっちゃけ話が定番でしょ?


「ねぇねぇ、何話す?」


「しっ!!聞こえるよ、ここ壁薄いもん」


「じゃぁとりあえず誰かが誰かに聞きたいことをぶっちゃけない?聞かれた人はその質問

に絶対答えなきゃなんないの」


皆首を縦に振って同意した。


「じゃぁまずG子ね。G子の好きな人はだぁ〜れだ?」


「えぇ〜困るんだけど」


「いやダメだから、ほらはよ言え?」


皆くすくす笑いながら誰かが話すのを聞いていた。


そして私の番が来た。


「じゃぁ、カコに聞くね?あの事件のことなんだけ、カコってHちゃんと仲良いでしょ。

だからちょっと聞きたいことがあって・・・・・・」


Hちゃんとは、私のことを疑っている人のひとりだ。ハルカ側の味方。または騙されて


いると言ってもいいかもしれない。


「うん、おっけぇ。言ってみ?」


「ハルカとタクヤって結局なんで別れたの??」


「なんかね、メ−ルとかしててもハルカが事件のことについてばぁ−っと言ったりだとか

暗い感じの内容ばっかになってったから、タクヤが愛想つかしてふったみたい。」


???


じゃぁなんであんなに一生懸命ハルカのために私のこと責めてるんだろう?変なの。


「じゃさ、Hちゃんってまだ私のこと犯人と思ってる?いつも普通に話してくれるから、

どうなのかな?って思って・・・・・」


「あぁ!Hちゃんはもうトキのこと犯人と思ってないよ。って言うかハルカのこと犯人

って思ってるみたい。自作自演なんじゃないかって。トキの意見と同じこと言ってるみ

たいだよ」


そうだったんだ。まだずっと疑われ続けていると思っていた私は、心からほっとして、


危うく泣きそうになった。






やっと・・・・・・・・・解決に向かい始めるのかもしれない


読んでくださった方、ありがとうございます。

次話もよんでくださいね。



感謝をこめて Shiena

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ