【15話】
その日の夜遅く、お父さんは帰ってきた。
私はソファ−で寝ていた。
いや、寝たふりをしていた。
しばらくお父さんとお母さんは一緒に遅い夕飯を食べていた。
少し経ったころ、お母さんが唐突にことの事情を話し始めた。
お父さんは軽くあいづちをうちながら聞いていた。
お母さんは今までにあったことをお父さんにわかりやすく伝えようと事細かに話した。
私の脳裏に今までの辛いこと、前の楽しかった頃のことがよぎった。知らず知らずのうち
に私の頬を冷たい水が滴っていた。どうしようもなく悲しくてしょうがなかった。
前の頃に戻りたくて、でもそれが叶うことのない現実に無意味さをみていた。
私は、てっきりお父さんは怒鳴り散らすと思っていた。でもその考えとはうらはらに不気
味なほどに冷静だった。そしてお母さんがひととおり話し終えるとお父さんは私の側に来
てこう言った。
【心配しないで、ゆっくり寝なさい。あとはお父さんにまかせて。】
私は寝たふりをしているのも忘れてうなずいて返事をした。
そしてその後私は本当に寝た。この先どうなるかもわからないけれど、とりあえずきざし
は見えたんだと思った。
そして今は翌日の夜だ。
お母さんとお父さんは、今まさに学校へ出掛けようとしていた。
「それじゃ、行ってくるからね。遅くなるようだったら先に寝てるのよ。」
お母さんは私にそう言い聞かせて家を出た。
そして、時間というものは退屈で長いものだと知った。
その日、結局両親が帰ってきたのは真夜中の1時だった。
眠い目をこすって何か会話をしたような気もするが、全く記憶がなかった。
私は、そのまま眠ってしまっていた。
読んでくださった方、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
感謝をこめて Shiena