表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

わけもわからず運動しだすとこうなる

作者: 九十川努男

 私は運動をしたくない。

 というのも、運動できるほどの体ではないからである。

 まず腹が出ている。どのくらい出ているかというと、椅子に座った時に腹がたるんで、椅子の裏から一周して頭に乗っかるくらい。

 何故太ったのか、未だに思いだせない。幼いころ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ポテト、ピザ、ピザ、ピザ、ハンバーガーという何とも健康的でバランスの取れた食生活を送っていたものだから、原因不明だ。

 最近は、ピザ、ポテト、ハンバーガーに加え、コーラをよく飲むようになった。やせたいという願望はないが、さすがに頭に腹が乗っている状態は不便なので骨が溶けると噂の炭酸飲料を飲んでみている。

 ――舌が溶けた。 

 もとい、しびれただけだが。

舌の機能を失ってしまうと、ピザを食べられなくなるので炭酸はやめた。

 やせる方法を調べるために、グー●ルで検索することにした。キーワードは『ドミ●ピザ・新メニュー』。これでやせるスポーツの名前が出てくる――こなかった。

 私は疑問に思う。何故ピザでやせれないのか。

 私は試行錯誤した。ピザを食べながらできるスポーツはないのかと。そして行きついた答えが――


 ――フリスビーである。

 そうだ、フリスビーをすればいいじゃないか。ピザで。

「ちょっと待ちなされそこの巨人!」

 振り返るとなんとなんと、そこにはシルクハットをかぶった紳士が空中でボディビルディングをしているではありませんか。一体私に何の文句があるというのでしょう。

「ピザじゃねえ。ピッツァだ……」

 なんだ思ったよりワイルドじゃないか。

 紳士は高速回転し、台風十二号とともに姿を消した。瞬間最高風速は25キロピッツァ毎時。台風もピンキリである。

 そうかピッツァか。ならいいだろう。しかしトッピングがしたい。諸君よ、そうは思わんか?……そう、思わないのね。

「緊急地震速報です! 台風十三号が、西に北上しています!」

 ――どういうこった。



 結局トッピングはしないわけだが、どうするか。というか私はフリスビーのやり方をしらない。一説によると、フリスビーの板はチャンピオンベルトに装着できないらしい。

「それー」

 背後にはガキがいた。おもむろにものを投げている。

「何をやっている、少年よ」

「野球! そしてそのおなかに、どストライーク!」

 腹に硬球がめり込まなかった。受け止めて縫い目をほどいた。いつの間に器用になった私の腹。

「いいかい、巨人! ものはこうやって投げるんだ!」

 ガキはボールを投げた。――ジャイロボールだと……こいつ、できる。

 私は少年の真似をしてフリスビーを放る。

 ――フリスビーは地面にめり込み、そのまま新世界を作った。少年は唖然とした。そして抵抗。いややめてくれ。

「なら! それ!」 

 少年はトマトを取り出した。――なぜ。

「これで、トッピングするんだ」

「ありがとう少年」

 しかし、私のフリスビーはマグマに食べられている。

 マグマとトマトって同じ系統の色だよね。


「フリスビーはだめか」

 トマトを眺めつつ呟いてみる。素人でもできるようなこと――

 さっきグーグルで調べてもまともな結果が出なかったから、ヤ●ーで検索してみることにする。ワードは『やせる・スポーツ』。


 結果はマラソンがいいという結論だ。マラソンってなんだろう。もしかして短い距離を思いっきり走る競技だろうか。

 確か知り合いに走ることが不得意だとかいう奴がいたので聞いてみることにする。

「大山西海畠山、どうやったら早く走れると思う?」

「うーん、とりあえず顔を左右に思いっきり振って走るといいんじゃないかな。あとは足と手を一緒に出す。そうするとカッコいいと思うよ」

 私にとって大山西海畠山は親友なので、彼を信じて走ってみる。大山西海畠山にタイムを計ってもらい、五十メートルを走ってみることにする。私はマラソンをマスターすることができるのだろうか。

 しかし走るのが面倒になったので、先ほどほらったトマトで醤油を作ってみた。駄目だった。


 気を取り直していざ五十メートル。

 顔は左右に、手足は一緒に出す! 風邪を感じる。風邪をひいたようだ。どうでもいいや。

「すごいぜ、十八秒だ!」

 大山西海畠山は喜んでいた。ということは私は、マラソンマスターになったのだろうか。


 予備知識がないというのはいいものだ。それを純粋な形で楽しめるのだから。

 短い距離を全力でダッシュする競技、マラソン。私はそれを極めた。その事実だけが、今の私を鼓舞している。

 私は家に帰り、ダンベルを持ち、ダンベルを置き、ピザを持ち、口の中に入れた。また、私はポテトを持ち、口の中に入れた。

 今日の私は素晴らしい。大変満足している。今日マラソンをしたから、これでやせることができるはず。ピザが美味しい。トマトも美味しい。ふふふ、全ての歯車がかみ合った瞬間である――



 一ヶ月後、私の腹は体の周りを一周していた。おかしい。一度マラソンをすればやせると聞いていたのだが。私は大山西海畠山を一生恨むことにした。


「台風情報です、台風十二号は北西に南下しています。近畿地方から長州藩に向かって移動していますので、現地のリポーターの方はご注意ください!」



 完 お粗末さまでした


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ