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#6 バルバロッサ海賊団人質事件-後編-

「報復するぞ!!」

とは言ったものの、この状況どうするか・・・計画が総崩れだぜ・・・・・・・

何故って?それは・・・







――――数分前

南京錠を破壊した俺は、監禁室を出て、周りを確認してから出た。敵にも見つからないように。しかし、俺が監禁室から出てしばらくしてからのことだった。しばらくと言っても30秒程度。俺は船内の物に隠れていた。ゲームで言うとメタルギアで段ボールに入って隠れている感じ。隠れている物の形をいえば長い木箱。誰も見つからずにハイレディン・なんちゃらがいる部屋へ行きたかったのだが、途中で名前も知らないクルーが来たせいでここに隠れざるを経なかった。そしてそのクルーは監禁室を確認しに来たんだ。そしたら、近くにあった糸電話と同じ原理の物で

「ハイレディン様!!スルトが監禁室から脱獄しました!!」


「なにぃ!!お前ら至急スルトを捕えろ。全力で命じる!!スルトを捕獲しろ!!」


「はっ!!」

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

ということなのだ。

「スルトはいたか?」


「いやいない。」


「南京錠をどうやって破壊したんだ?」


「解らん」


「ったく」

・・・・何でおれが隠れている箱の周りでこいつらは話すんだよ!!とっとと出てけ!!

「ん?なんかお前言ったか?」


「いや、別に」


「そうか。気のせいか」


「それよりも、この木箱・・・こんなところにあったか?」


「あったんじゃね?それか落っこちてきたとか・・・」


「まあ、此処に置いてあると邪魔だから運ぶか」

・・・おいおいおいおいおいおいおいおい。ちょ―――――と待てい!!俺が中にいるんだぞ!!聞いているのかおい!!

「おい?一人で持てるのか?」


「大丈夫。これぐらいの木箱、簡単に・・・・」

無理に決まってんだろ!!これでも16の時で身長176の体重70kgオーバーだったんだから。それにこの木箱。俺以外にもいろいろな物が入っているから。プラス10キロと考えていいだろうに。

「んんんん。・・・よいしょっと。何とか持てたぜ。・・・この箱こんなに重かったか?」

一般人では80kg持つのは厳しいだろ!!・・・と言っても一応海賊だし・・・METで強化されているんだっけな。

「・・・おっとと・・・・・」

ドン。・・・痛ええええけど、我慢我慢。此処でしゃべってしまったらおしまいだ。そぉ~と持ってけよ。そぉ~と・・・

「うわあああああ」

そう叫んだ船員は俺を木箱に入ったまま落としやがった。

「いてえええええ!!」

しまった!!・・・こいつ!!・・・お前のせいでしゃべっちまったじゃねえか。こうなったら最後の手だ。その最終手段の行動をとる。俺は手に手榴弾を握る。・・・別に自決ではない。

「この箱・・・今しゃべったよな?・・・この箱どこで手に入れたんだ?」


「さあ?開けてみればわかるんじゃねえ。」


「じゃあ、“いっせーのーで”で開けようぜ」


「ああ」


「いーせーのーで」

今だ!!俺は開けた瞬間にスタングレネードを外に投げた。5人とも全員スタングレネードを食らって目と耳の両方が使えなくなっている。

「くそっ・・・何がどうなってっぐえ!!」

「前が見えん。ちくしょっうぐ!!」

目と耳が使えずにふらふら歩いているゾンビみたいなクルー達を容赦なく9mm機関拳銃の銃身で強打する。

「ふぅ。お前らにスタングレネードなんてもったいなくて使えねえが、命の方が大事だ。」

5人のクルーを紐で縛って、監禁室にほおりこんだ。



こいつら・・・たしか、南プシェムィシル村を砲撃したよな?・・・ってことは何処かに大砲がある筈。大砲があるということは傍に砲弾がある筈。あの爆発音ならシャンバラで使われている砲弾はただの鉄の弾ではなく、中に爆薬が詰め込まれている一種の榴弾の可能性がある。そこにC4を仕掛ければ大爆発が起きて、この船は沈むだろう。よし、先程叩きのめしたやつらに聞くとするか。

「おいっ!!起きろ!!お前に聞きたいことがある」


「はっはい!!何でしょうか!!」


「この船のどこに大砲がある?」


「監禁室の入る手前の左のドアを奥に行って、右に曲がったところです」


「よし。いい子だ。もし嘘だったら・・・・ガチで殺すぞ!!」


「はい!!」

俺はそう聞いてから奴が言った通りの道を走って行った



そして、海賊は思う

「・・・ガチってどういう意味?」







―――――砲列甲板

艦内に砲を設置し、船体側面にあけた砲門から射撃を行う甲板を砲列甲板という。多分俺が今いるところは砲列甲板と呼ばれるところだろう。船の側面に位置して、無駄に横に長い。

「ここか・・・大砲が8門。周りにいる海賊16人。1門に二人か。まああんま人を殺したくはないけど・・・安らかに眠れ!!」

俺はそう言いベレッタを手に持ち発砲した。

「きっ貴様はスルト!!何故に!!」


「艦内放送が聞こえなかったのか?ハイレディンが怒っていたぞ」


俺は口だけでなくちゃんと手を動かして発砲していた。バァンという音が俺の耳に焼き付いて行く。それと同時にクルー達の身体からあふれ出ていく血液も俺の目に心に脳みそに焼き付いて行く。


「うっ!!」

「かはっ!!」

「おっ覚えていろよ!!」


「俺が死ぬころになったら思い出すよ。・・・さてと、掛かった時間は2分。まあ上出来だろう。日頃銃の射撃訓練をしていたおかげか?」

そんなことを一人で言いながら俺はC4爆弾の設置にかかる。C4もしくは、コンポジション4と呼ばれる爆弾はプラスチック爆弾の一種で粘土のように形を変えられるのが特徴だ。

「これをここに張り付けて・・・確か陸自の施設科がやってた気がする」

そして貼り付け終わったら、C4に雷管を設置した。

「よし、これが爆発して他のところにも飛び火すれば完全にこちら側が進水してこの船は沈没するだろう・・・そうすれば・・・」

ハイレディンとか言う奴をたたきつぶせる。・・・俺はしばらくたって歩き出した。

「グッバイ・・・バルバロッサ海賊団!!」

そう言い放たれた時、九鬼龍斗が乗船する海賊船の右側は大爆発が起きた。



「ううう!!なんだこの揺れは!!」

ハイレディンが叫ぶ。周りの海賊たちは動揺を隠せない。そんな中指令室に入ってきたのは、ハイレディンすら名前も知らないクルーだった。

「報告します。本船バルバロッサ号は右側の砲列甲板の謎の爆発により浸水。右傾し始めたため、沈むと見られます」


「何ぃ!!なら、あの悪魔はどこ行った?」


「はっ!!それが今行方不明でありぐっ!!」

突如ハイレディンに報告していた名前も知られていないクルーの頭を何かが貫いた。そしてそのクルーは歴史にも人々の心にも残らず死んで行くのであった。クルーがいたところの後ろには何かを手に持ったままのあの忌まわしき悪魔の存在があった。手に持たれている何かからは煙が出ている。

「よう、ハ・イ・レ・ディ・ン・さ・ま。お探しのスルトでございます」

俺は銃を構えたままハイレディンに挨拶をした。

「この船はどうやら沈むらしいな。なんでか解るか?・・・・・・・返事がないな。お前らが言う古代兵器で右側の砲列甲板の大砲の弾すべて吹っ飛ばしてやったぜ。これで・・・おっと」

本格的に右傾斜が激しくなってきた。そろそろ脱出しないと・・・

「ふっふっふざけるなあああああ!!」

ハイレディンが完全にぶちぎれた。ひとこと言わせておけば完全にぶちぎれているのは俺の方なんだが・・・まあ、ここはクールに・・・理性より感情の方が上回ったら終わりだからな。

「おりゃあああああああ!!」

先程見たことがある、上から棍棒を振り上げるという単調な攻撃は簡単すぎて軽くよけられる。METによって身体強化されているこの俺にその程度の速度ならゆっくりに見える。

「そんな攻撃じゃあ、俺の相手は務まらない!!」

俺は隙を見て奴の腹に一蹴り。そこからの軸足をハイレディンの顔面に向かって回し蹴り。

「ぐおおおお!!」

そして決めての右手にベレッタから持ち替えた9mm機関拳銃の銃身での強打。

「ぐふっ!!・・・かっ・・は・・・」

バタンという鈍い音が床に響き渡った。・・・こいつは重要参考人だ。回収してギルドに引き渡そう。俺はそう考えてハイレディンを引きずった。船内に脱出用の小舟があったため、それを海に投げてそれに飛び降りた。・・・・・幸いなことにこの船はまだそう遠くへ入っておらず、浅瀬までいかなくとも、ぱっと見水深4mぐらい。そう考えると、あの船の喫水浅いな。







―――――南プシェムィシル村東港

「バルバロッサ海賊団の船が・・・」

ジン・エンフィールド中隊長はバルバロッサ号の姿を見て唖然としていた。

「爆発したと思ったら炎上して・・・・傾いている。あいつは・・・大丈夫なの?」

イリーナは膝を落として船がものすごく遠くにあるように見ていた。

「あれだけの爆発はシャンバラの現存する兵器単体では無理に等しい。せめて大量の火薬か魔法を使えば別じゃが・・・彼は古代兵器を持っていたのか?」

アーノルド大佐は首をかしげて船を見ていた。

「私の所為なのに・・・私を助けたばっかりに・・・」

自分に責任を感じているイリーナを慰める言葉はアーノルド大佐には思いつかず、ただイリーナの半泣き声だけが響いていた。その涙は九鬼龍斗がいなくなったというのも含まれていたのだろうが、ほとんどは自分の所為でたくさんの人を巻き込み、一人の人間を死に追いやったというのが大きいだろう。うつむいて下を見ているイリーナとは違い、アーノルド大佐は沈みゆく船を見ていた。また沈んでいく船から這い上がってきた人物も彼は見ていた

「泣くなイリーナ。・・・・頭をあげい!!」

アーノルド大佐の言葉の言われた通りに頭をあげて前を見た。

「・・・・う・・・・そ?」

そこには燃えて朽ち果てていく船から這い上がってきたこの世界でスルトと呼ばれる人。そしてイリーナの命の恩人。

「?・・・・生きてたの?」

イリーナは色々な意味で唖然する。

「勝手に俺を殺すな」


「どうして?」


「貸一つ。今回も俺はお前を助けたからな。礼を貰わないとな」

俺はそう言ってGJする。

「・・・ばか」

イリーナは顔を赤くして言った。

「ん?何か言ったか?」


「別に。・・・・それより、右手の奴は?」


「あ?こいつがバルバロッサ海賊団の船長ハイレディン・バルバロッサ・・・・おい、聞こえるか?・・・俺がお前たちみたいなのにひょこひょこと付いてくると思ったか?・・・そりゃあ大間違いだぜ!!まあ、これにて、バルバロッサ海賊団は絶滅」

俺はこいつの前で大笑いしてやった。それに反応するようにハイレディンも口を開いた

「ふっ、さすがスルト。オーレリシア大陸を制圧するだけはある。頭もなかなかきれて、ずるがしこい。一万年前からその卑怯な考えは消えてないな」

「そうか・・・卑怯ね・・・・ふ~ん。」

俺はハイレディンのいちいちいやらしく突っかかるような話を聞いて我慢していたが、さすがに腹の虫が収まらなかった

「・・・ギルドメンバー一人に復讐するのに人質70人も取って交渉する方がもっと卑怯なんじゃないのか!!」

ハイレディンはしばらく黙った。しかし、再び口を開き、

「ついでに言っておこう。俺達はルーシア征教隷下のバルバロッサ海賊団だ。俺達を倒しても似たような奴らはたくさんいる。特にルーシア征教はこのポートランド皇国の東の東オーレリシア帝国には信者がうじゃうじゃといる。これで倒した気になるなよ、ギルド公社!!そして、ポートランド皇国。ルーシア征教を禁教として狩るお前達はいつか報いを受けよう!!」


「話なら後で聞こう。・・・・ご協力ありがとうございました」

ジン・エンフィールド中隊長は頭を下げて俺に礼を言ってハイレディンを掴んで立ち去って行った。しかし、お礼は彼からだけではなかった。

「本当にありがとうございました。何とお礼を言えばいいか」

「あなたは神話のスルトではありません。オーディン様のようなスルトです。この恩は一生忘れません」

「お兄ちゃん握手して~」

「私も」


「俺は別に・・・」


「誇りなさいよ。少しは」

イリーナの言葉に続いて

「そうじゃ。君はこの村の英雄じゃよ」

俺はアーノルド大佐に言われた後周りを見渡すと俺を囲む村人の輪。此処まで感謝されたのは人生で初だった。

「・・・・お礼は・・・・この村の仲間にしてください」

・・・・しばらく沈黙したが、そんな沈黙はすぐに消え去った。

「大歓迎じゃよ。それに元々ギルドメンバーに加入するつもりじゃろ。ひとりでバルバロッサ海賊団をつぶすとは、なかなかの戦力じゃ。ギルドにこれだけの戦力が増えるのは大歓迎じゃよ。」

アーノルド大佐がそう言ったのはなぜだ?ルーシア征教がそんなに脅威だからなのだろうか?それとも何か別の脅威でもあるのだろうか?そんなことを考えていたら不意に、

「どうしたの?何か浮かない顔しているけど・・・・早く手続きしちゃいましょう」


「何の?」


「ギルドメンバー加入の手続きに決まってるじゃないの?あんたもしかして天然?」


「ああ、そうだったな。では、これでひとまず失礼させていただきます。お疲れさまでした」


「本当に今日はありがとうございました。イリーナちゃんもいい男見つけたね」

なかなか恥ずかしいこと平気で言う村人だなあと俺は思いながら手を振った。

「ちっ違います・・・かっ彼は・・あの・・その・・・」


「あのイリーナ?」

俺は顔を真っ赤にしているイリーナに話しかけた。

「はっはい!!」


「いや、そこまで驚かなくても・・・それと先程の件だけど・・・」


「先程の件って?」


「貸一つだよ。・・・・そうだな・・・・俺が故郷に帰れるまでの間の宿代は無料ってのはどうだ?」


「リュート・・・ちょっと待つんだよ!!・・・・それっていわゆる・・・・」


「いわゆる?なんだ」


「いわゆる・・・いわゆる・・・い・・わ・ゆ・・る・・・」


「同棲じゃな」


「ア、アーノルド大佐!!」

何今頃あせっているんだ?俺はお前の家に一晩泊っただろうが・・・ルーシア征教過激派から助けたってことの貸しで宿代タダってことで。

「イリーナ・・・何言っているんだ?昨夜一晩一緒に寝たじゃないか。今更恥ずかしがって、変わった娘だな」

そんなことを言われたイリーナは今までに見たことのない真っ赤な顔をして俺に睨みつけた。

「リュ、リュートの・・・・・・馬鹿!!!!!!!!」

俺はイリーナにおもいっきり吹っ飛ばされた。これだけの力があるのに何故ルーシア征教に負けたんだ?

「かはっ!!」


「すまん。すまん。わしもちとイリーナ君の反応がつい面白くてからかいすぎたわい」


「いってええ~・・・命の恩人に対してこれとは・・・・」

こんな些細な会話をしながらギルド支部に行って、手続きを終えた。


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