#5 バルバロッサ海賊団人質事件-中編-
「待ちなさい!!・・・・」
イリーナが放った言葉は九鬼龍斗には届かなかった。
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――――南プシェムィシル村東港
「もうすぐ日没だぞ、ギルド公社!!とっとと容疑者を出せ。さもないとこいつら殺すぞ!!」
「ひぃ・・・お命だけは・・・」
「助けてくれえ」
「何とかしてくれえ警軍!!」
「どうしますか隊長?」
「どうしようもないだろう」
警軍南プシェムィシル地方南プシェムィシル村支部の中隊長ジン・エンフィールドは迷っていた。そんな時、盾を構えて包囲している警軍の中を無理やり通過しようとしている人間が見えた。
「君、何をしているんだ?」
ジン・エンフィールドは自分たちよりも後ろに戻そうとして警軍の後ろにやろうとしたが・・・出来なかった。
(なんて力だ・・・)
「通してください。」
「駄目だ。民間人を巻き込むわけにはいかない。」
「何も策が出てない人たちよりは良いと思いますが・・・」
俺は正直な意見を彼らにつき放った。当り前である。人質が70人もいて何も身動きができない状況より、500Auを渡して人質を解放した方が状況的にはましである。
「・・・・」
ジン・エンフィールドはフードをかぶった子どもと思われる人物に何もできなかった。
そして、こんな現状に置かれている人質に対して、こんな現状を起こしているバルバロッサ海賊団に対して・・・・そして、自分自身にも・・・何もできなかった。
「ん?何だ貴様は?そんな汚いフードをかぶりやがって!!これ以上近寄ると殺すぞ!!」
ハイレディンはフードをかぶった人間にそう言い放つ。彼がスルトと知らずに・・・
「いいのか?」
「あ?」
「東オーレリシア帝国ではスルトを500Auという莫大な金額を懸賞金としてかけているぞ。欲しくないか?」
「何を言っている貴様!!まずは貴様から殺してやろうか!!」
ハイレディンハ大きな棍棒を俺に振り落とした。俺は受け止めず素直によけた。
「これを見てもまだそれを言うか!!」
そう言ってフードを身体から外した。その姿は見慣れない格好をした15か16程度の青年だ。
「黒髪茶眼・・・肌が黄色・・・見慣れない服装・・・まさか・・」
「イリーナ君・・・彼は・・・」
アーノルド大佐は先程聞き忘れた質問をする。本当は解っている。しかし、末裔であるムスペル人は見たことがあるが、本物は見たことがなくあいまいだったのだ。
「はい。彼はスルトです。完全に異世界からきた、かつてのスルトの末裔であるムスペル人とは全くの別物・・・オリジナルです・・・・」
「そうだ。俺はスルトだ。俺を東オーレリシア帝国に売れ。そうすれば500Auもの莫大な財産が入ってくるぞ。・・・ただし・・・・一つ条件がある」
物欲しそうな目で俺を見てくる。強欲深いな・・・
「なんだ?」
「人質を解放しろ!!」
「な~にぃ!!」
ハイレディンがきれているという様子は層の薄汚いよくにまみれた顔面を見ればすぐわかる。再び棍棒を振り上げて俺をたたきつぶそうとした。しかし、それは彼の側近に阻止された。
「ハイレディン様」
「あ?」
「此処はやつの言う通りにしましょう。役に立たない人質70人よりも、500Auのスルト一人の方が物になります。」
「たしかに。よし、いいだろう。お前ら!!スルトを船に入れろ!!」
「了解・・・おらぁ!!とっとと歩け!!悪魔が!!」
ハイレディンの部下達は俺に対し罵声を浴びせる。しかし、俺は動かない。
「俺は言ったはずだ。人質を解放してからだ。人質を解放しないなら俺は動かない」
「なにぃ!!ぶっ殺すぞ!!」
バルバロッサ海賊団のクル―たちが俺に対し再び言い放つ。それに対し俺は正統派の意見を言う。彼らの目的を話しに出して。
「いいのか?500Auが使い物ならなくなるぞ?」
「解放してやれ」
ハイレディンは人質解放令を出した。さすが、話が解る。俺は人質が解放されたのを確認すると船に入った。・・・まあ、此処までは俺にしては上出来だな。さて・・・これからどうするか・・・そんなことを考えながら船に入った。
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イリーナは走った。船は既に錨を上げている。彼の姿は見えない。
「リュゥゥゥゥゥゥトォォォォォ!!」
イリーナは叫んだ。もう出港手前の船を見て
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――――バルバロッサ海賊団海賊船
・・・なんか聞こえた気がする。気のせいだろうか。まあいい。それにしてもよかった。C-2で色々持ってきておいて。俺は今船の監禁室に入っている。此処から出るためにはかぎを壊すか、飯を取りに来るやつをたたきつぶして、船の占拠か破壊だな。・・・装備の確認・・・
「9mm機関拳銃とベレッタ一丁。弾薬は9mmパラベルム弾が102発。銃剣。まあこれはナイフ代わりだな。それにMK3A2攻撃手榴弾2個、焼夷手榴弾2個、スタングレネード1個。後はC4爆弾。どうせならスタングレネードを多く持ってくるべきだった。まあいい。これだけあればなんとかなるだろう」
そして装備を服の中に隠して、ナイフを手に取り
「・・・・おりゃあ!!」
カキンという音を響かせて、南京錠を破壊した。
「!!・・・・・銃剣ってこんなに強かったっけ?それとも南京錠が柔らかいだけか?」
・・・・まあいい。さてと、こちらも
「報復するぞ!!」