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スルト  作者: オーレリア解放同盟
最終章 独り復讐劇
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#66 亡き人への咆哮

「今日が貴様らの命日だ!!」

そう言うと龍斗はルーシア征教教祖・・・臨時皇帝の周りを護衛する衛兵たちを瞬時に片付けていく。そのタイム僅か3秒。10人強の兵士が3秒で倒された。

「・・・・貴様、何をした?」

かつてあれだけ余裕をこいていたジークフリートの目に余裕が消えた。

本気モードに入っている。

「・・・・別に・・・・何をしたと言われれば殺したかな?」

一方前回までは必死こいても勝てなかった龍斗の目には余裕という言葉しかなかった。

しかし、彼の心は復讐の二文字しかなかった。

「・・・・離れてください。ここは俺が」


「俺が?」

瞬時にジークフリートの背後に立つ龍斗。ジークフリートはそれが目で追えなかった。

「い、いつの間に?」


「ついさっき?というわけで死ね!!」


「くっ!!」

龍斗が忌々しい右手をジークフリートの心臓部めがけて突き刺す。ジークフリートは間一髪で防ぐ。だが、

「な、なんだ?」

ジークフリートのおなじみ装備バスターソードは真っ黒の粒子になり部分的に消えていた。

「あっ!!言い忘れてたけど、俺の身体を纏っている粒子に触れたら消えるから」


「どういう意味だ?」


「そのまんま・・・っさ!!」


「うっ!!」

瞬時に間を詰めた龍斗はジークフリートの首を掴む。

「身長が低くてもお前を持ち上げるなんざ・・・朝飯前なんだよ」

身長差20cm以上。それなのに小さい方が大きい方を持ち上げている。

「そのまんま消えろ!!」


「うがあああああああああ!!あ、熱い、いや痛い!!」


「苦しめ!!苦しめ!!苦しんで苦しんで死ねえぇぇぇぇ!!」

あの娘も苦しんで死んだんだ。あのおばさんも・・・みんなみんな苦しんだんだ!!

おれたちはなにもしていないのに、平和だけを望んでいたのに!!

しだいに黒い粒子を纏って死んでいくジークフリート。

そして、消えていくジークフリートを眺める龍斗。

「あばよ・・・俺もしばらくしたらそっちへ向かうから先に行ってろ。そして・・・」

龍斗は最後に後ろを向く。そこに立つのは

「ひっ・・・・た、助けてくれ・・・命だけは・・・」


「命だけは・・・・俺がかつてジークフリートから聞いた話ではこの戦争・・・・・ルーシア征教が主導になって進んでいたらしいな」


「ち、ちがう!!全てお前がいま消した男が!!」


「嘘ついてんじゃねえよ。お前らだろ?こいつも含めた」

今は亡きジークフリートの服に指をさす。

「俺達が何をしたんだろうな・・・俺が何をしたんだろうな・・・俺何もしてねえのに命は狙われる、戦争は起こる、大切な人は失われていく・・・あの人が、あの男が、あの娘が・・・何をしたって言うんだ!!」

俺の頭の中に浮かんでいく帝国の犠牲者。戦争の犠牲者というのが正確だろう。

皇帝陛下・・・アルバート皇帝・・・その前には戦争とは直接関係ないけど由利菜と、由利菜の親父さん。戦争を起こそうとしなければ俺は大和皇国へ行かなかったわけだ。俺が来たから、俺が由利菜と接触したからあの二人は・・・・

そして、今でも思い出すだけで涙が出そうになる。流す涙などからしたつもりなのだが・・・

「エアリィ・・・」


「・・・・・・・・」

しばらく立ち止まって固まった龍斗。何が起こったか解らない臨時皇帝は懐の拳銃に手を差し伸べる。

「・・・・取りあえず死ねええ!!」

“バァン”と乾いた音が皇室中に響く。

龍斗めがけて放たれた銃弾は直進して進む。

「そ、そんな・・・」


「・・・・・」

放たれた拳銃は龍斗の周りを覆う粒子に触れて消滅した。

「こんなもんで俺を殺せると思ったか?」


「ひっ!!」

腰が抜けて立てなくなった臨時皇帝ことルーシア征教教祖に近付く龍斗。

「この戦争の犠牲者のすべての恨みだと想え!!」


「ひっ!!」

グシャアアアアアアアア

ベチャ・・・・・ビチャ

床に下垂れ落ちる赤い液体。そこらじゅうに飛び散ったしわしわの細長い物。

骨。指。爪。目。残りかすはあるものの元が何だったのか解らなくなったルーシア征教教祖の前に龍斗はたつ。

「ふふ、ふふふ、ふふ、ふはははははははは!!」

そして笑い叫ぶ。

「うをををおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

さらに雄たけびをあげる。今は亡き人たちへ送る咆哮。

「やったぞ!!エアリィ!!皇帝陛下!!アルバート皇帝!!そしてあの時のおばあさん!!」

あの人は俺の事を英雄と言った。

俺が招いた戦争と知らずに。だが、その復讐は取れた。

「みんな見たか!!戦争の根源を消し去った!!やったぞ、やったぞ!!俺は、こいつらを全員殺したんだ!!ふははははははは・・・・はは・・・ははは・・・・は・・」

龍斗の笑い声は途中から途切れた。

「やったぞ・・・・エアリィ・・・・俺・・・お前の仇、取ったぞ。みんなの仇も取ったぞ・・・う、うううう、うううううう・・・」



その日



俺は久しぶりに大泣きした。朱に染まった部屋で。血まみれになった体で・・・



俺はこれから大量殺人という称号を背負って3カ月生きていくのだろう。



いや、9か月前のあれからだ。エアリィが死んでから・・・・おれは



大量殺戮者だ




そしてその日・・・帝国政府が滅んだ日でもあった。

帝国崩壊まであと一カ月と少し。


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