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スルト  作者: オーレリア解放同盟
最終章 独り復讐劇
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#64 交渉-大和皇国 後編-

「・・・・寿命があと数カ月か・・・・」

腕を組みながら座り込み瞑目を始める高須。

俺は悪魔化魔法について話した。

「そういうことなんだ。だから頼む!!俺がいる間に帝国を叩きのめしたいんだ!!俺が全力を出せば確実に倒せると思うけど、後2カ月でどうにかなる話じゃない!!」


「確かにな・・・・いくら強くてもMETに限界が来ることも考えられるからな・・・しかし、なぜそこまでして帝国を叩きつぶしたいんだ?」


「・・・・」

龍斗は深く息を吸って口を開けた。

「・・・・俺達がいた星地球。その世界で平和を乱すのは何だった?」


「・・・・」


「自分達の利益を考えて人々を混乱に乱す奴ら・・・北朝鮮、中国、漁夫の利を狙うロシア・・・・日本国内ならヤクザに代わっていり浸るようになった中国マフィアとか・・・この世界では何だと思う?」

自分達のいた世界で例を上げこの世界でのそれを答えさせる龍斗。

「・・・それが帝国と言いたいのか?」


「ご名答。それ以外にない。そして帝国がこの世界において最も不要分子であることも違いない。それ以上でもそれ以下でもない」


「・・・・それをつぶして俺に何かいい事でも?」

・・・あるわけないだろ?

「考えてみろ。お前らに得は多分あまりない。強いて言えば領土が増えるくらいだ」


「成程な。お前が帝国をつぶしたいということは解ったがお前をなにがここまで動かした?」


「・・・・ここに以前来た時にいた獣人族とヴァルキューレ。そして皇族兄妹を知っているよな?」


「ああ」


「兄の方は父親・・・・皇帝陛下が狙撃されて皇帝となった。殺した犯人は帝国のスパイだと思われる。そして皇帝になったアルバートは父の仇をとるため、国民も戦争を望みオーレリシア大陸全土を覆う大戦争となった」


「その話はこちらでも聞いていた」

解っている。というような顔つきで俺の話を淡々と聞く高須。

「戦争開戦から1カ月と数週間後・・・・首都ウィーンペストは核兵器に見舞われた」


「・・・・どうやって核兵器を爆破させたか・・・なぜそうなったのか俺には解らん」

一瞬高須と大鷹の背中が震えたように見えたが気のせいだろうか?

「そしてアルバート皇帝は俺達がいるプシェムィシル地区にすべてを託すかのように大量の資材と武器弾薬を積んだ輸送船と共に大艦隊を派遣してきた。妹のローラを連れて・・・」


「・・・・それからどうした?」


「俺は察したよ。彼がまだ諦めていないということを・・・・俺は彼の遺志をついでプシェムィシル地区に建国を宣言した。建国宣言1カ月後ぐらいに帝国による宣戦布告なき戦争が始まった。陸上での戦闘が主だったが陸上戦力差にして1対10以上」


「1対10・・・・」

震えるどころか口が開いたままになっている大鷹を放っておいて俺は話を続ける。

「それに対して俺達が取った策は夜襲。敵に気付かれにくくなる魔法を唱えて敵から古代兵器を盗み戦争を優位に進めると言う策。その際に・・・・あの獣人族の娘は解るよな?」


「ああ・・・両手に花の一人だろ?」

ここは冗談をいう場ではない!!

「・・・冗談だ」


「話を続ける。あいつは以前帝国兵に襲われ怪我していたんだ。それなのに無理についていくって言って・・・それで俺は行くなと言ったが・・・言うこと聞かず。仕方なく連れて行ったんだが・・・」


「死んだのか?」


「・・・・・・」


「わかった・・・」

俺は黙り込んだ。それだけで理解ができたらしい。無言の返事。東洋らしい卑怯な手だがこの場で卑怯もくそもない。

「正確に言うと夜襲は成功したんだ。ちゃんと古代兵器を大量に盗んで戻ったんだ。だけど・・・最後の最後で隠れていた兵士にドキュン・・・・俺の目の前だ。俺が・・・・あの時制止させていれば・・・・死ななかったんだ」


「・・・・それで話は終わりか?それだけには見えないが・・」


「ああ。これで終わりじゃねえ。完全にぶち切れていた俺は、悪魔化魔法を唱えた。イリーナの方はヴァルキューレ化した。そして・・・」


「残りの帝国兵を無残にも塵に帰したと・・」

俺が言わなくとも高須が結果を言ってしまった。

「そういうことだ」


「それがお前を動かしたのか?」


「これは前置き」


「前置きながっ!!」


「・・・・獣人族・・・エアリィが死んだ時に彼女が言い残した言葉・・・このプシェムィシルだけでも戦争から遠ざけて・・・平和な国に・・・自分が死ぬって解っているのにあいつはそう言ったんだ!!」

俺の手は無意識のうちに強く握られていた。

自分でもいつグーにしたか解らない。

「・・・・そんな事があったのか・・・」

負い目で俺を見るな!!

「・・・・・さらに追い打ちをかけるように敵軍の指揮官・・・そいつは帝国に滅ぼされたキエフ=ソフィア王国の側近で・・・イリーナの・・・その国の皇女であるイリーナの教育係だって言うんだ。もう一度祖国を再興させるためなら帝国にでも手を貸す。そんな男だった。ぼろぼろになったイリーナを助けるため戦ったのだろう。死ぬ間際に言った言葉がエアリィの言葉と一緒だったんだ」


「一緒?」

大鷹が俺に質問をする。そのまんまだ。

「イリーナの笑顔が絶えない・・・・平和な国を・・・・作ってくれ」


「・・・・」

もう言う言葉がないようなのか黙ってしまった3人。

「この戦争・・・俺がこの世界にさえ来なければなかったことだ。だから俺は責任をとる。せめてこの世界の不要分子を排除するために!!」

高須はしばらく間を開けて、立ち上がった。

「・・・・成程な。いいだろう!!この世界に一人といない大親友の頼みだ。その話に乗ってやろう!!」


「隊長!!」


「高須!!何トチ狂って・・・」

高須の目は本気だった。皇太子妃様がトチ狂ってとか言ったが・・・この目は本気だ。

「この戦争に参加すれば俺達は領土が手に入る。それだけで理由はだめだろうか?」


「・・・・勝手にせい。わしはしらぬ」


「皇太子妃様・・・だそうだ?」


「・・・・・ありがとう。なら・・・・この日に間に合わせてほしい」


「・・・・やよい・・・・無理ではないがかなり急だな」


「それは解っている。しかし、どうしてもこの日に反攻作戦を展開したいんだ」


「反攻作戦?」


「ああ。いままで帝国にひどい目にあってきたやつらがこの日に一斉蜂起をするんだ。セールス・トルキスタン王朝レジスタンス。キエフ=ソフィア王国残党。プトレマイオス共和国も反攻作戦に出るそうだ」


「・・・・成程。ならこちらはムガル連邦を出そうじゃないか。奴らも使って帝国を全面包囲してやろうじゃないか」


「高須・・・・」


「見せてやろうじゃないか俺とお前の」


「実力をな!!」

“バシン”と拳とこぶしが触れ合う音がした。

高須泰宜の右手と九鬼龍斗の左手。二人の友情を語る音。

「・・・・男という生命体はようわからん」


「あれは男でもわかりませんよ・・・」

皇太子妃の言葉とは別に男である大鷹すら呆れている。

この二人が異常なのだろう。


帝国崩壊まであと二カ月。


反攻作戦開始まであと一週間。


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