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スルト  作者: オーレリア解放同盟
最終章 独り復讐劇
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#62 交渉-セールス・トルキスタン王朝レジスタンス-

―――――連邦が崩壊して一カ月

「ごくごくごく」

九鬼龍斗はガンガンに照らす太陽に暑さを覚え、誰も歩いていない砂漠を歩いている。

ポートランド皇国ではもうきさらぎ・・・地球で言う2月でもう少しで春だというのに・・・・

「ぷはぁ~」

なのに、この暑さ・・・・唯一の救いはからっとしていることだ。日本みたいにジメジメしていたらたまったものではない。

背中に背負ってある樽からつながっているチューブを口につけ咽喉を鳴らしながら水を飲む。

「地図で言うとここはセールストルキスタン王朝のど真ん中だな・・・」

腰のウエストポートから地図を取り出す。

俺がわざわざここまで来たのには理由がある。

セールストルキスタン王朝残党軍。いわゆるレジスタンスだ。

「たしか・・・エンフィールドが逃がしたアルト・テギンが設立者だと聞いたが・・・」




アルト・テギン――――若くしてセールス・トルキスタン王朝の右腕に上り詰め、王朝が帝国に敗北した後はジークフリートに祖国再興を誘われたが、九鬼龍斗襲撃事件の際に捕虜になって警軍にとらえられた。その後行方をくらました・・・




「まさか・・・一人でゲリラ組織を作るとは・・・」

大したものだ・・・一人暑い中を歩きながら感心する。

「おっと、この辺だったか?」

だいぶ前にプトレマイオス共和国の港で武器の密売を見た。

ポートランド=ソフィア製と書かれた軽量化されたガトリングガン。姿形はアサルトライフルなので・・・というより設計者が俺なので“アサルトガトリングライフル”と名付けた。この時代で錬金術をしない限り自動小銃なんて作れないだろうから、構造はガトリングガンと変わらない。

武器の密売を行っている運び屋の人間に聞き出したところこの辺で売買をよく行っているらしい。

「んん?」

ふと歩いているときょろきょろしながらアサルトガトリングライフルを構えている男を発見する。

「おーい」


「ん?」


「こっちだ」


「だ、誰だ貴様!!」


「おいおい、それの設計者の俺にそんな物騒な物向けるなよな」


「設計者?よくわからん事を・・・さては帝国のスパイだな?」


「違うわ!!アルト・テギンってやついるだろ?そいつと顔を合わせてくれ」


「テギン様に?・・・・取りあえず手を上に上げろ」


「はいはい・・・」

そこまで俺を疑っているのか・・・

仮にも俺は髪の毛が黒だからオーレリシア人に間違えることはないだろうに・・・

どちらかというとお前らムスペル人に間違えられるだろう。

「ついてこい」

そう言って連れてかれたのは砂漠の地下。成程・・・これなら帝国も場所を掴めないはずだな。

「・・・・案外涼しいな」


「地下だからな。もし貴様が帝国のスパイだったらぶち殺すからな」


「はいはい。例のアルト・テギンに話を通せばわかるぞ」


「テギン様!!」


「なんだ?」

俺に銃を向けている下っ端警備兵が扉越しで呼ぶと忙しそうな返事が返ってきた。

「テギン様に会いたいという男がいますが?」


「名は何と言うんだ?」


「リュート・クキだ。貴様がプシェムィシルで殺し損ねて、お前達が使っているアサルトガトリングライフルの設計者でポートランド=ソフィア王国の実質の指導者だ。まあ元だけど・・・」


「リュート・クキ・・・成程。面白い奴を連れてきたな。中に入れろ」


「はっ!!もう手を下していいぞ」


「そうかい」

そう言うと俺は扉を開けてアルト・テギンと初めて対面する。

「直接顔を合わしたことはないが名前だけは聞いている」


「そうかい」


「で、会いに来たというには要件があるんだろうな?」


「ああ」


「なんだ?言ってみろ。これでも殺し合いをした仲だ。何でも言え」

少し深呼吸をして俺は口を開く。

「今月・・・ポートランド皇国をほぼ全面占領した帝国軍は全面撤退した」


「ほう・・・何故?」


「俺が指揮系統をなくし地方で孤立して戦っていたポートランド残党部隊を支援して帝国軍を蹂躙したからだ」


「ふ・・ふふふ・・・ふはははっは。貴様面白いこと言うな?」


「ここで実証しようか?」

そう言うと俺は右手だけ悪魔化させる。

「・・・変わった魔法だな」


「悪魔化魔法・・・寿命のほとんどを失う代わりに得られる力。銃弾すら効かず人間など体をまとっている粒子に触れた瞬間消え去る」


「成程・・・・それを使って蹂躙したと・・」


「ああ。東の脅威を取り除いてからサルデーニャとプトレマイオス共和国は連邦を占領した」


「・・・・で、俺達になにしろと?」


「ロストフ半島でゲリラ活動が活発化している」


「ロストフ半島・・・キエフ=ソフィアの跡地か・・・成程。ポートランド=ソフィア王国なんて出来たからだな。ソフィアの皇女様が生きていたなんて知れ渡ったらそれこそソフィアの有志どもは暴れ出すだろう」

いいとこ付いてくる。さすがだな。俺はよくこの若さでと思ったが・・・・なるほど。

なかなかいい目をしている。別に視力がいいというわけではないが・・・

「貴様らにも1カ月後暴れてもらう」


「どういうことだ?」


「こういうことだ」

俺は懐から大量の現金と俺の名前が書かれた紙を出す。

「なんだこれ?」


「俺の名前と文が書かれた紙だ。ポートランド=ソフィア王国との交渉に使え。最終手段では俺が武器をこいつらに売れと言ったとかでもいい。後この金で大量に武器を買え」


「・・・・何がしたいんだ?」

俺の顔を睨みつけるアルト・テギン。

「帝国をつぶしたいだけだ。ただそれだけ・・・貴様らも祖国再興したいんだろ?お前らと俺の目的は違えどすることは一緒さ。俺は帝国に復讐したい。お前らは祖国再興。そのために必要な事」


「帝国をつぶすことか・・・他に何か策はあるんだろうな?」


「東の島国だ」


「・・・・大和皇国か?」


「おお、それだ。正解。唯一帝国を打ち負かした現史上最強の国家だ。あの国のトップが俺の親友でというより戦友で、帝国に侵攻してもらう」


「・・・・そう簡単にうまくいくのか?」


「無理だったらオーレリシアの中央同盟国と俺自身が参戦する。それで文句ないだろう?ソフィアの有志達にも話をつけた。武器を大量に支援する事にしたからな。どうだ?ここまでうまい話は無いだろう?」


「ああ。その話乗った!!」

椅子から勢いよく立ちあがったアルト・テギンは俺が差し出した右手と握手をする。

「契約成立だ。そうだな・・・報酬はこの樽に水を入れてくれ」

俺は背中から樽を下ろし空になったのを見せつける。

「・・・・・い、いいだろう」

アルト・テギンの顔はひきつっていた。


帝国崩壊まで後4カ月。


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